ディベート関係書籍案内

[松本 茂]

 このページでは、当協会の理事執筆による書籍、また、当協会理事の推薦によるディベート関係書籍を掲載しています。



鈴木 健(JDA理事)・大井恭子・竹前文夫編
 『クリティカル・シンキングと教育-日本の教育を再構築する』  世界思想社


教育基本法の改定をめぐり、戦後の民主主義教育の役割、成果が、問い直されている現在、本書が出版された意義はたいへん大きいものと思われる。ぜひ、教育者のみならず、ビジネスに関わる方々、あるいは教育のありかたに疑問を感じているすべての方に読んでいただきたい本である。そこには、日常の思考を破り、気がつかなかった思考の範囲の可能性を広げるための術が様々な視点から、わかりやすく説明されている。著者は錚錚たる、各分野の専門家である。

 大学英語教育でのクリティカル・シンキング紹介の草分け的存在である竹前文夫氏、日本最高のディベートの権威・松本茂氏、英語教育で常に新しい視点を発信し、デイリー読売のリンガフランカのコラムでもおなじみの鈴木健氏、そして、英文ライティング指導者として名高い大井恭子氏、NHKの基礎英語講師であった富田祐一氏、また日本語教育専門家の林さと子氏である。理論、歴史(第1部)と実践編(第2部)の両面から、クリティカル・シンキングとは?という質問に、各章、各分野で、それぞれの著者が詳しく、ていねいに定義づけ、読者の「思考の旅の誘い役」をつとめてくれる。

 ディベートから異文化理解までも含めたクリティカル・シンキングの範囲の広さと柔軟な思考法に、「目からうろこ」の連続である。本書を通読したあと、教育とはかくあるべきという「方法としてのクリティカル・シンキング」のみならず、「態度としてのクリティカル・シンキング」(鈴木、p.8)を大いに学ばせてもらった、貴重な一書である。

 [花岡 民子] (はなおか たみこ JACET会員)





西部直樹(JDA会員)著
 『誰でもできるディベート入門講座』(ぱる出版)1400円


本書は、第1章 ディベートとは何か、第2章 議論の基本構造、第3章 議論を展開する技術、第4章 議論を深める技術、第5章 ディベートの練習方法、第6章 ディベート 事例と解説、第7章 議論を鍛える問題集、の7章で構成されている。

「ビジネス・コミュニケーションを活性化させる技術」という副題がついているが、ビジネスパーソンに限らず、ディベートをはじめて学ぼうという方にディベートの基礎を図や表を多く使い、わかりやすく解説している。第7章には論理的思考や議論構造の基本を確認するための問題を収録してあるのが特徴。



安藤香織(JDA非会員)・田所真生子(JDA会員)編
 『実践! アカデミック・ディベート』(ナカニシヤ出版)1800円


本書は、第1部 ディベートの理解、第2部 ディベートの実践、第3部 ディベートを活かす、の3部で構成されている。

「1章ごとにプラクティスを取り入れ、易しい課題からむずかしい課題へと進んでいけるようにした」と書いてあるように、ディベートを準備の段階から試合まで、どのように進めてよいかがわかりやすく説明されている。大学などのディベート講座のテキストとして適している。なお、コラムを担当された著者の一人の友末優子さんはJDA会員である。



松本 茂(JDA専務理事)著
 『日本語ディベートの技法』(七宝出版)1400円


本書は、第1章 ディベートとは何か、第2章 ディベートの時代、第3章 リサーチの方法、第4章 議論構築の技法、第5章 わかりやすいプレゼンテーションの技法、第6章 ディベートの実際、の6章で構成されている。

この本は、基本的にはディベートに興味があるがまだやったことがないという初学レベルの方々と、少しはやってはみたがディベートの面白さや準備の仕方がまだよくわからないという初級レベルの方々のためのものである。ただし、「第2章 ディベートの時代」では、ディベートの教育的価値などにも言及しており、学校の教員、研修のプラニング担当者や担当講師にはぜひ読んでいただきたい。



西部直樹著(JDA会員)

『はじめてのディベート』(あさ出版)1500円

 

著者の西部氏は,JDA会員であるとともに,全国教室ディベート連盟(NADE)常任理事でもある。 本書は「基礎知識編,実践編(1),実践編(2),技術編,再現編,活用編」という構成になっている。

著者は企業や官庁等でのディベート研修に長い間携わってきただけに,ディベートを実際に行ったことがない人が疑問に抱くと思われることを丁寧に説明してあり,「かゆい所に手が届く本」に仕上がっている。再現編では「日本は酒をすべて対面販売にすべし」の論題のもとに行われたミニ・ディベートを再録してある。巻末には拡大コピーして使える「試合用キット」までついているので,初心者には有り難い。

また,ディベート研修プログラム作成上の注意点,判定の下し方や講評の手順についての記述もあるので,初心者のみならず,ディベート研修の社内講師をまかされた人,ディベート大会での審判を引き受けた方にもぜひ読んでいただきたい一冊である。


藤川大祐著(JDA会員)

『ディベートで学校はよみがえる−知的ゲームによる教育改革−』

(学事出版)1600円

 

JDA会員で、全国教室ディベート連盟理事・東海支部長である著者自らが「教室ディベート初の理論書」と銘打つ自信作である。教育学を専門とする著者が、生徒たちの行き場のない過剰なエネルギーを、知的闘いの場としてのディベートで燃焼させることを提唱している。

現在の学校教育における授業形態の問題点を鋭く分析し、どのようなディベートの論題がよいかなど、実際にディベートを導入する際に押さえておくべき視点を数多く提示している。学校教育に携わっている者だけけでなく、一般の方々にも読んでいただきたい一冊である。


近藤 聡著(非会員)

『反駁ゲームが楽しいディベート授業』

(学事出版)本体1700円

 

 著者の近藤氏は全国教室ディベート連盟の常任理事で、都立高校の国語科教諭である。

 ディベートの意義はわかるが、実際に40名の生徒を前にしてどのようにディベートを教えたらよいか悩んでいる教員も多いことであろう。

 この本では8時間という授業時間内にディベートの醍醐味である反駁をどのようにして教えたらよいかというヒントが詰まっている。生徒の発言、反応、質問なども詳しく書かれている。

 マイクロディベート(3・3ディベート)と呼ばれる1人制のディベートを授業の到達点にすえ、人に頼らず自分の意見を言える・反駁ができることを学習目標としていることが面白い。

 また、第4章では定期テスト(筆記問題)の例が提示され、さらに生徒の解答を分析している。また同章では、「サリン−オウム事件」のテレビ討論番組での草野仁キャスタ−と上祐史浩氏のやり取りを生徒に分析させた例が提示されていて、大変興味深い。「シリーズ教室ディベート」の第8巻として刊行されたこともあり、高校の国語教育になぜディベートが必要か、といった大きな問題には答えてくれていない。このことが物足りなく感じる人もいるだろうが、どのように教えればよいのか、ということに現場教員の興味・関心が移行していることを鑑みれば、ポイントが絞られている本と言える。

 


全国教室ディベート連盟編

『第2回ディベート甲子園−中学/高校決勝戦・全記録』

(学事出版)1238円

 本の構成は二部建てになっており、第1部は決勝戦の完全トランスクリプトが掲載されている。論題は、中学の部が「日本は選挙の棄権に罰則を設けるべし」、高校の部が「日本は首都機能を移転すべし」。特筆すべきことは、両チームの顧問教員が、各スピ−チごとに戦略意図や感想などを書いていることであり、この部分が大変興味深く読める。

 第2部は「'97ディベート甲子園・決勝までの道」と題し、両部門の決勝進出4チ−ムの顧問が、メンバ−集めから決勝戦に至るまでの苦労話を書いている。メンバ−が集まらず出場を断念しようかというところから全国大会優勝までの軌跡がわかり面白い。ディベートへの参加者の減少に悩んでいるESSディベート・セクション・チ−フにも大いに参考になるであろう。

 なお、決勝戦のビデオは別会社から発売されている。

ビデオ『ディベート甲子園'97 高校決勝』 3000円
ビデオ『ディベート甲子園'97 中学決勝』 3000円
問合せ先:メディアクリエイト 電話 03-5228-6395


中嶋洋一(非会員)

『英語のディベート授業 30の技』

(明治図書)1850円  

学生に英語ディベートは無理だとお考えの方は、ぜひこの本を読んでいただ きたい。著者は富山県 波市出町中学校教諭。普通の中学校でも英語ディベート が行なえることを実証している本です。生徒に考えさせることが、飛躍的に英語 の力を伸ばすことにつながることがわかります。


Michael H. Lubetsky(非会員)

MAKE YOUR POINT: Debate for EFL Students (Harcourt Brace Japan)

相模女子大学高等部で教鞭をとっていた著者が、日本の高校生および大学1〜 2年生くらいを対象に書き下ろしたテキストです。語句や表現の学習とディベー トの概念を平行して学習できるようになっています。ディベートを活用して英語 を教えたいと思っている教員にはぜひほしい1冊でしょう。


 松本茂(JDA専務理事)
「頭を鍛えるディベート入門--発想と表現の技法」 
講談社ブルーバックス 860円
 
松本茂 1955年東京生まれ。マサチューセッツ大学アマスト校大学院修士課程修了(コミュニケーション教育学専攻)。学生時代は英語ディベートで活躍し、東京選手権2年連続優勝、全国大会2回優勝、日米交歓ディベート全米ツアー日本代表。マサチューセッツ大学ディベート・コーチ、明海大学助教授、神田外語大学助教授、NHKテレビ英会話講師などを歴任。現在 は東海大学教授。また、日本ディベート協会専務理事、日本コミュニケーション学会理事、文部科学省英語教育指導者講座講師、全国教室ディベート連盟常任理事なども務める。
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