2005年度後期推薦論題
会員投票のお知らせ


<投票用紙は、JDA会員あて別途郵送されます。>

会員各位


日本ディベート協会(J.D.A.)論題検討委員会は,2005年後期の推薦論題の候補として,次の三つの論題案を選びました。

A)日本政府は代理出産もしくは着床前診断を認める法令を制定すべきである
(英文試訳Resolved: That the Japanese government should legalize surrogate birth and/or preimplantation genetic diagnosis. )


代理出産とは, 妻に子宮が無いなどの理由で子供を産めない夫婦が, 第三者に出産してもらうことを言います。代理出産は, 現在, 日本産科婦人科学会の自主規制により行われていませんが, 世界に目を向ければ, 決して珍しいことではありません。しかし, 倫理上の問題や代理母の身体的・精神的負担などの理由から, 代理出産に対する批判もなされています。着床前診断とは, 着床前または妊娠前に受精卵の遺伝的組成を分析し, 遺伝子の異常がない場合, その受精卵は移植され, 異常が発見された場合は破棄されます。これによって, 例えば重度の遺伝性疾患をもつ子どもの妊娠を避けることが可能になります。代理出産同様, 日本産科婦人科学会は, 現在, 着床前診断の実施を厳しく制限しています。

着床前診断に対しては、命の選別につながる, 優生思想を助長する, 着床前診断が乱用されるなどの反対意見も根強く, 実際, 米独仏などでは法規制がなされています。代理出産と着床前診断は, ともに大きな利点がある反面, 深刻な問題を引き起こす危険性があるため, 多くの国で長年議論されており, 日本でも近年これらの生殖医療に対する関心が高まっています。JDA推薦論題では数年振りの生殖医療関連のトピックであり, 生命倫理, 個人の権利, 子どもの福祉, 国家の介入の是非など深いレベルでの議論が行いうると思います。


B) 日本政府は弾道ミサイル防衛システムの導入及び開発を一切放棄すべきである。
(英語試訳 Resolved: That the Japanese government should abandon any and all attempts to develop and/or acquire a ballistic missile defense system.)


日本政府は,弾道ミサイル防衛システムの整備を2003年12月に閣議決定し, 早ければ2006年末の配備を目指しています。現在, システム導入の準備が着々と進められていますが, 弾道ミサイル防衛計画には, 国内外で多くの懸念や反対意見が出されています。肯定側は, 弾道ミサイル防衛システムの実用性に疑問を呈したり,システムの導入が周辺諸国に及ぼす軍事的悪影響を論じうるでしょう。また, 集団的自衛権の行使などの憲法上の問題や弾道ミサイル防衛計画に費やされる膨大な国防費も争点にできるでしょう。一方, 否定側は, 弾道ミサイル防衛システムの放棄による日本の防衛力の低下や他国からの先制攻撃の誘発, アジア地域におけるミサイル軍拡の危険性の増大, そして弾道ミサイル攻撃による被害の深刻性などを論じることができるでしょう。また,弾道ミサイル防衛の共同開発研究を進める米国との深刻な関係悪化も引き起こしかねません。本論題は, 重大な局面を迎えている弾道ミサイル防衛計画の是非を議論すると同時に, 対米追従の外交政策や周辺諸国の軍事的脅威, そして戦後60年を迎えた「平和国家」日本の今後を考える格好な論題であると言えます。


C) 国際連合は以下の一カ国以上に対して、国連憲章に基づく制裁を行うべきである。朝鮮民主主義人民共和国、イラン・イスラム共和国、シリア・アラブ共和国

(英文試訳 Resolved: That the United Nations should impose sanctions under the Charter against one or more of the following countries: the Democratic People's Republic of Korea, the Islamic Republic of Iran, and Syrian Arab Republic.)


国連安全保障理事会は,「平和に対する脅威、平和の破壊、または侵略行為」(国連憲章第39条)を根拠とした制裁措置を取る権限を有しており, 湾岸危機のイラクやユーゴ内戦の新ユーゴ(セルビア、モンテネグロ両共和国)など,実際に制裁が行われた事例もあります。本論題案では, 米国に「テロ支援国家」と指定されている北朝鮮, イラン, シリアの3国に対して,国連が経済的・軍事的制裁を行うことの是非を議論することになります。肯定側は, テロや核の脅威の軽減, 民衆の圧政からの解放, 極東や中東地域での安全と平和の確保などを論じることができるでしょう。一方, 否定側は, 国連による制裁の効果や正当性に疑問を呈したり, 制裁による民衆の窮乏化, 圧政の強化, 地域の不安定化など, 制裁がもたらす悪影響について論じうるでしょう。さらに, 常任理事国入りを目指す日本の役割や制裁措置が日本にもたらす影響, そして具体的な制裁措置のあり方も議論の射程に入ることでしょう。いずれにしろ, 冷戦後の世界, とりわけ米国主導の「テロとの戦い」がすすむ中, 武力行使を含む強制措置を取りうる唯一の国際機関である国連の安全保障上の役割を問い直す絶好の論題といえます。

会員の皆様は,同封の投票用紙に必要事項をご記入の上,推薦論題としてふさわしいもの全てに○をつけ,下記,師岡宛に7月29日(金)必着でお送り下さい。最終的な推薦論題は,下記の票計算方法に従い決定します。


 <投票先は、会員あてに郵送される投票用紙に明記されています。また、電子メールによる投票は認めておりません。>

 投票の時点で会費を未納の会員は,投票権がありませんので,投票前に必ずお払い込みになったうえで投票してください。なお電子メールでの投票は受け付けません。投票は,必ず郵送かファックスでよろしくお願いします。(注意:送付先はJDA事務局ではありません!)


投票方法

1. 3つの候補のうち,後期の推薦論題としてふさわしいものにマルをつけてください。マルは複数つけて頂いて構いません。

2. 複数票 (N 票)を持っている団体会員は,マルを付けた候補それぞれに,N 票を投じたものと同じ勘定になります(例えば二つの候補にマルを付けたからといって,それぞれに N/2 票ずつ投じることになるわけではありません)。

3.投票の結果,最も多くの投票のあった案を推薦論題とします。


集計方法の詳細

JDA論題検討委員会は,推薦論題の最終決定を会員投票の形で行っております。その際,推薦論題使用の現況に鑑み,団体会員,特に大会を主催する団体会員の意見をより重視する形で決定します(ただし集計は全て論題検討委員の方で行いますので,会員の皆様は,複雑な手順を辿る必要はありません)。採決は,以下の規則に従って決定します。

1. 7月20日までに会員としての申込みの手続きを済ませている個人会員ならびに団体会員は,投票権を持つ。

2. 団体会員は,基本票として 5票持つ。ただし団体会員のうち,後期に大会を主催し,JDA推薦論題をその大会で使用する予定がある場合は,次のように大会規模に応じて上乗せした票を持つ。(大会規模に関しては自己申告に従います)

その大会の昨年度の参加校数が
25校以上 計20票
10校以上25校未満 計15票
10校未満 計10票
不明,または今年度新設 計10票

3. 個人会員は,団体会員の票数の総計(棄権票も含む)を,投票権を持つ総個人会員数(棄権者も含む)で割った票数を持つ。(小数点2位以下切り捨て)


論題についてのご意見募集・投票に関する質問について

開票・発表は,7月30日(土)午後2時00分より上智大学(東京・四谷)SJハウスにて行なう予定です。その際,推薦論題に文言上の微修正を加える可能性があることを予めご了承下さい。なお会員の皆様には,御投票だけでなく,論題文案についてのアドバイスや問題提起なども頂ければ幸いです。投票用紙の備考欄にご記入頂くか,委員長の師岡か,JDA-ML までメールで御意見をお寄せ頂ければ幸いです(投票方法等に関する御質問も,そちらでよろしくお願いします)

開票の際に,日本語推薦論題に基づき,おおむね同じエリアを持つ英語推薦論題の文言も決定・発表します。今回は,「試訳」として一ページ目に英文を掲載しましたが,こちらの方はあくまで参考のための試訳であり, 正式には発表時に決定します。試訳の文法・用語上の問題などがありましたら,是非上記メーリング・リストまでアドバイスをいただければと思います。論題は,多くの人が関わる公共財であり,なるべく多くの会員の方々の投票や知恵を結集して,良い論題を発表できればと考えております。是非ご協力お願い申し上げます。


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