2005年度前期推薦論題会員投票のお知らせ



 

会員各位

日本ディベート協会(J.D.A.)論題検討委員会は,2005年前期の推薦論題の候補として,関係各位のご協力の下,次の三つの論題案を選びましたことを取り急ぎご報告させて頂きます。

会員の皆さまには後日事務局から投票用紙が届きますので,締切である2/4(金)までにファックス・郵便で指定された宛先に投票をお願いします。

A)日本政府は代理出産もしくは着床前診断を認める法令を制定すべきである

(英文試訳Resolved: That the Japanese government should establish a legal system that permits surrogate birth and/or preimplantation genetic diagnosis. )


代理出産とは, 妻に子宮が無いなどの理由で子供を産めない夫婦が, 第三者に出産してもらうことを言います。代理出産は, 現在, 日本産科婦人科学会の自主規制により行われていませんが, 世界に目を向ければ, 決して珍しいことではありません。しかし, 倫理上の問題や代理母の身体的・精神的負担などの理由から, 代理出産に対する批判もなされています。着床前診断とは, 着床前または妊娠前に受精卵の遺伝的組成を分析し, 遺伝子の異常がない場合, その受精卵は移植され, 異常が発見された場合は破棄されます。これによって, 例えば重度の遺伝性疾患をもつ子どもの妊娠を避けることが可能になります。代理出産同様、日本産科婦人科学会は, 現在, 着床前診断の実施を厳しく制限しています。着床前診断に対しては、命の選別につながる, 優生思想を助長する, 着床前診断が乱用されるなどの反対意見も根強く, 実際, 米独仏などでは法規制がなされています。代理出産と着床前診断は, ともに大きな利点がある反面, 深刻な問題を引き起こす危険性があるため, 多くの国で長年議論されており, 日本でも近年これらの生殖医療に対する関心が高まっています。JDA推薦論題では数年振りの生殖医療関連のトピックであり, 生命倫理, 個人の権利, 子どもの福祉, 国家の介 入の是非など深いレベルでの議論が行いうると思います。

B)日本政府は入管法を改正し,原則として全ての職種で外国人労働者の雇用を認めるべきである

(英文試訳 Resolved: That the Japanese government should amend the immigration laws to allow the employment of migrant workers in all or most workplaces.)


現在日本政府は,就労を目的とした外国人の入国・滞在を,原則として,技能・専門職種以外では認めておりません。本論題案では,外国人労働者が,いわゆる「単純労働」を含む原則全ての職種においても就労できるよう,労働市場の門戸を開くことの是非を議論することになります。予想される肯定側議論としては,今後急速に進む少子高齢化社会における労働力不足の解消や,社会保障費用の軽減, 外国人労働者の雇用条件の改善などを挙げることが出来ます。他方,否定側としては,外国人労働者受け入れに伴う行政的・社会的コストの増大,治安の悪化の危険性,日本人雇用に対する悪影響などを論じることができるでしょう。また,現在25万人を超えるといわれる「不法就労外国人(超過滞在外国人労働者)」の処遇や,外国人労働者の具体的な受け入れ方法(目標数値など)も議論の射程に入ることでしょう。いずれにせよ,世界的なグローバル化の潮流の下,日本社会の行く末を考える一つのきっかけとなる論題になることでしょう。なお、本論題案は、2004年後期の論題候補と基本的に同じですが、論題検討委員会での審議の結果、文言に若干の変更を施しました。

C) 国際連合は以下の一カ国以上に対して、国連憲章に基づく制裁を行うべきである。
朝鮮民主主義人民共和国、イラン・イスラム共和国、シリア・アラブ共和国

(英文試訳 Resolved: That the United Nations should impose sanctions under the Charter against one or more of the following countries: the Democratic People's Republic of Korea, the Islamic Republic of Iran, and Syrian Arab Republic.)


国連安全保障理事会は,「平和に対する脅威、平和の破壊、または侵略行為」(国連憲章第39条)を根拠とした制裁措置を取る権限を有しており, 湾岸危機のイラクやユーゴ内戦の新ユーゴ(セルビア、モンテネグロ両共和国)など, 実際に制裁が行われた事例もあります。本論題案では, 米国に「テロ支援国家」と指定されている北朝鮮, イラン, シリアの3国に対して,国連が経済的・軍事的制裁を行うことの是非を議論することになります。肯定側としては, テロや核の脅威の軽減, 民衆の圧政からの解 放, 極東や中東地域での安全と平和の確保などを論じることができるでしょう。一方, 否定側は,国連による制裁の効果や正当性に疑問を呈したり, 制裁による民衆の窮乏化, 圧政の強化, 地域の不安定化など, 制裁がもたらす悪影響について論じうるでしょう。
 さらに, 常任理事国入りを目指す日本の役割や制裁措置が日本にもたらす影響, そして具体的な制裁措置のあり方も議論の射程に入ることでしょう。いずれにしろ, 冷戦後の世界, とりわけ米国主導の「テロとの戦い」がすすむ中で、武力行使を含む強制措置を取りうる唯一の国際機関である国連の安全保障上の役割を考える格好の論題といえます。

会員の皆様は,同封の投票用紙に必要事項をご記入の上,推薦論題としてふさわしいもの全てに○をつけ,下記,師岡宛に2月4日(金)必着でお送り下さい。最終的な推薦論題は,下記の票計算方法に従い決定します。

<省略>


 投票の時点で会費を未納の会員は,投票権がありませんので,投票前に必ずお払い込みになったうえで投票してください。なお電子メールでの投票は受け付けません。投票は,必ず郵送かファックスでよろしくお願いします。(注意:送付先はJDA事務局ではありません!)


投票方法

1. 3つの候補のうち,前期の推薦論題としてふさわしいものにマルをつけてください。マルは複数つけて頂いて構いません。

2. 複数票 (N 票)を持っている団体会員は,マルを付けた候補それぞれに,N 票を投じたものと同じ勘定になります(例えば二つの候補にマルを付けたからといって,それぞれに N/2 票ずつ投じることになるわけではありません)。

3. 投票の結果,最も多くの投票のあった案を推薦論題とします。


集計方法の詳細

JDA論題検討委員会は,推薦論題の最終決定を会員投票の形で行っております。その際,推薦論題使用の現況に鑑み,団体会員,特に大会を主催する団体会員の意見をより重視する形で決定します(ただし集計は全て論題検討委員の方で行いますので,会員の皆様は,複雑な手順を辿る必要はありません)。採決は,以下の規則に従って決定します。

1. 1月26日までに会員としての申込みの手続きを済ませている個人会員ならびに団体会員は,投票権を持つ。

2. 団体会員は,基本票として 5票持つ。ただし団体会員のうち,前期に大会を主催し,JDA推薦論題をその大会で使用する予定がある場合は,次のように大会規模に応じて上乗せした票を持つ。(大会規模に関しては自己申告に従います)

その大会の昨年度の参加校数が
25校以上 計20票
10校以上25校未満 計15票
10校未満 計10票
不明,または今年度新設 計10票

3. 個人会員は,団体会員の票数の総計(棄権票も含む)を,投票権を持つ総個人会員数(棄権者も含む)で割った票数を持つ。(小数点2位以下切り捨て)


論題についてのご意見募集・投票に関する質問について

開票・発表は,2月5日(土)午後2時00分より上智大学(東京・四谷)SJハウスにて行なう予定です。その際,推薦論題に文言上の微修正を加える可能性があることを予めご了承下さい。なお会員の皆様には,御投票だけでなく,論題文案についてのアドバイスや問題提起なども頂ければ幸いです。投票用紙の備考欄にご記入頂くか,委員長の師岡(jmorooka@mbg.nifty.com)か,JDA-ML までメールで御意見をお寄せ頂ければ幸いです(投票方法等に関する御質問も,そちらでよろしくお願いします)。開票の際に,日本語推薦論題に基づき,おおむね同じエリアを持つ英語推薦論題の文言も決定・発表します。今回は,「試訳」として一ページ目に英文を掲載しましたが,こちらの方はあくまで参考のための試訳であり正式には発表時に決定します。試訳の文法・用語上の問題などがありましたら,是非上記メーリング・リストまでアドバイスをいただければと思います。論題は,多くの人が関わる公共財であり,なるべく多くの会員の方々の投票や知恵を結集して,良い論題を発表できればと考えております。是非ご協力お願い申し上げます。


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