2008年度後期推薦論題
会員投票のお知らせ


<投票用紙は、JDA会員あて別途郵送されます。>


会員各位

日本ディベート協会(J.D.A.)論題検討委員会は,2008年後期の推薦論題の候補と
して,次の三つの論題案を選びました。

A) 日本政府は核燃料の再処理を放棄すべきである。

(英語試訳:Resolved: That the Japanese government should ban { nuclear fuel reprocessing /reprocessing of nuclear fuel / reprocessing of nuclear fuel waste.



 近年、石油価格高騰など原料・資源問題が急速に進み、世界問題として深刻化しています。日本も強く影響を受けており、化石燃料依存を軽減するための打開策として使用済み燃料を再利用する、核燃料再処理(サイクル/リサイクル)の実用化が推進されています。青森県の六ヶ所村に施設があり、本格稼動に向けたテストが2008年5月に終了する予定でしたが、同時期に事故が発生し先延ばしとなった為、現在再度注目されております。
 
 核燃料の再処理とは、原子炉から出た使用済み燃料から、未反応のウランや、ウランから生成されたプルトニウムなどを抽出する処理のことをいいます。再処理には、燃料を効率的に利用できることや使用済み燃料の量を減らせるといった利点があります。その一方で、事故や放射能漏れなどの危険性や、抽出したプルトニウムによる核武装の可能性なども指摘されています。従って、肯定側、否定側の議論として下記のものが予想されます。

予想されるメリット:
・ 施設運転事故や放射能漏れなどを未然に防ぐ
・ 核武装の可能性をなくす
・ 人的エラーの回避
・ 水質汚染の回避 

予想されるデメリット:
・ 核燃料リサイクルの崩壊に由来する弊害(ウランが枯渇した場合のエネルギー
 不足など)→更に環境問題や経済問題にも発展しうる。
・ 核武装の可能性が消えることからの問題
・ 従業員の失業
・ 原発を停止

バランスとしては、賛成・反対ともに文献資料が多数あるとともに、原子力発電や核武装などとも密接な関係があり、多面的(環境問題、外交問題、経済問題etc.)なディベートが可能です。

懸念事項:
 2007年度では否定側に若干不利ではないか、という指摘が出ていました。「核燃料リサイクルの崩壊」がデメリットとして機能するためにはプランを採らない場合に核燃料サイクルが実現することが前提ですが、未来のことなので不確実な要因があるからです。しかし、肯定側もサイクルが実現することが前提になければ大きなメリットが出せないので、特別否定側だけに不利という訳ではないと判断しました。したがって肯定側と否定側のバランスには問題はないと思われます


参考として、核燃料サイクルは2種類あります。a)プルサーマル主体の核燃料サイクル。青森県の六ヶ所村に施設があり、実現可能性は高いもののプルトニウムの供給量によって効果は制限されます。b)高速増殖炉(FBR)主体の核燃料サイクル。実現可能性は低いもののプルトニウムを増やすことができるシステムであり、供給量には左右されません。施設は現在「もんじゅ」が福井県にありますが、1995年の運転開始前点検中に事故が発覚しました。現在も確認試験中ですが2008年9月には終了し、発電経験の獲得及びナトリウム取り扱い技術の確立等を目指して運転を開始する予定です。本格始動は全ての試験終了した後の2050年とも言われていますので、現在はa)のプルサーマルを中心として計画が進んでいます。

B)「日本政府は保険診療と保険外診療の併用を原則認めるべきである。」

(英語試訳: :Resolved: That the Japanese government should basically allow the joint provision of treatments covered by the National Health Insurance and of treatments uncovered by the insurance.)


 この論題は「混合診療」を表したものです。日本の公的医療保険制度では、保険が適用される診療を限定しており、保険適用外の診療(自由診療)と同時に受ける混合診療は、原則として認められていません。保険内の診療に自由診療が加わった場合は保険内の診療も保険適用外とされ、本来であれば保険適用内の診療も全医療費を患者が負担しなくてはなりません。混合診療の解禁により、この全額負担が軽減される一方、保険外診療の選択肢が増えることにより結局負担は増加するとの主張もあります。また、国内外から診療、薬剤、医療機器、サービスや個人保険に至るまで営利的な参入が促進されることから、様々な利点や弊害がもたらされると考えられています。現在全面解禁を強く求める規制改革会議と抵抗する厚生労働省が争議していること、また裁判で混合診療の法的根拠が争われていることなどから、旬な話題と言うことができます。今の日本は高齢化社会への変化に伴う医療費の増大が不可避の状態であり、保険制度の見直しを含む医療制度の変革は不可欠となっています。世界一の高齢化社会日本の将来を医療面から問う格好の論題であることは間違いありません。なお、「混合診療」に当たる英語の定型表現がないため、試訳をthe joint provision of treatments covered by the National Health Insurance and of treatments uncovered by such insuranceとしています。そのため日本語文献に見られる「混合診療」と論題の文言との間に微妙な差異が生まれる可能性があります。

C)「日本国政府は現行の都道府県を廃止し、原則全ての権限を持つ地方自治体を設置すべきである。」

(英語試訳: :Resolved: That Japan should delegate all or most of its authority to the local autonomies established as the substitute for the current prefectures.)


 この論題は、いわゆる道州制を表したものです。広域化・多様化する行政課題に地方自治体が主体となり対応できる様に、明治以来の都道府県の区割りを再編し、地方自治体に権限を与える事の是非を問う論題です。これにより、国と地方の役割分担を見直すことができるでしょう。

  道州制を文言に表す過程で、設置すべき地方自治体の数と持つべき権限を指定しない文言を考えました。なぜなら、道州制の本質は国と地方自治体の役割分担と行政区画を再定義することであり、肯定側にその余地を与えるのが妥当と考えたからです。また、指定によって、いわゆる除外カウンタープランが議論の中心になることを避けようと考えたからです。これにより両者とも幅広い調査や分析を基に行政の果たすべき役割をより深く論じることができるでしょう。肯定側は、二重行政によるコスト削減、地域の特色を生かした行政サービス、行政の役割の明確化による政策立案能力の向上、東京一極集中の解消などを論じることができます。否定側は、地域の文化やアイデンティティの消失、道州間の財政力格差の調整の困難化、政策決定主体が離れることによる行政サービスの低下などを論じることができます。本論題は、21世紀の日本のあるべき姿や、行政と市民との関係性について考える格好の論題と言えます。

[2008年前期よりの継続]

D) 「日本政府はカジノを合法化すべきである」

(英文試訳:Resolved: That the Japanese government should legalize casino business and gambling.



 現在、120カ国以上においてカジノが合法化されており、G8では日本のみがカジノ非合法国となっています。世界には2000以上のカジノが存在し、その場所もオセアニアからアフリカまで世界中にあると言っても良い状況です。そのような中、日本でも2000年の東京都知事石原慎太郎氏の「お台場カジノ構想」以降カジノ合法化への機運が高まっており、カジノ合法化を検討する議員連盟等も設立されています。また地方自治体もカジノの誘致に積極的であり、カジノによる地方復興が期待されています。想定される議論ですが、肯定側は世界的な観光客争奪戦に勝つことにより得られる経済効果、カジノの集客効果による貧しい地方自治体の財政の健全化や雇用創出効果、その利益が闇組織に流れているとされている違法カジノの追放などを論じることができ、一方否定側はカジノと暴力団が癒着することによるカジノ利益の闇組織の資金源化、ギャンブル依存症患者及びそれに伴う犯罪や自己破産の増加、青少年への悪影響等を論じることができます。本論題案は観光産業や娯楽というこれまで論題として扱われることが少なかった側面に目を向け、その面から日本の位置やあるべき姿を追求するのに適している論題であると言えます。


注意

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昨年同様、今年もJDAは日本語論題のみを作成し、英語論題に関しては概ね同じエリアを持つ試訳を作成するに留めます。こちらの方はあくまで参考のための試訳であり、英語の文言は英語論題を使用する各団体に一任致します。ただし開票日に英語論題作成のための場所として議論の場をご提供しますので、ぜひご参加ください。

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JDA会員の皆様には投票一週間前に,投票用紙が送付されますので,必要事項にご記入の上,郵送及びファックスを8月1日(金)必着でお送り下さい。

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