2008年度前期推薦論題会員投票のお知らせ



会員各位

日本ディベート協会(J.D.A.)論題検討委員会は,2008年前期の推薦論題の候補として,次の
四つの論題案を選びました。


A) 日本国政府は現行の都道府県を廃止し、原則全ての権限を持つ地方自治体を設置すべきである。

(英語試訳: Resolved: That the Japanese government should abolish the prefectures and establish local governments that have all or most authority.)
 
この論題は、いわゆる道州制を表したものです。広域化・多様化する行政課題に地方自治体が主体となり対応できる様に、明治以来の都道府県の区割りを再編し、地方自治体に権限を与える事の是非を問う論題です。これにより、国と地方の役割分担を見直すことができるでしょう。

  道州制を文言に表す過程で、設置すべき地方自治体の数と持つべき権限を指定しない文言を考えました。なぜなら、道州制の本質は国と地方自治体の役割分担と行政区画を再定義することであり、肯定側にその余地を与えるのが妥当と考えたからです。また、指定によって、いわゆる除外カウンタープランが議論の中心になることを避けようと考えたからです。これにより両者とも幅広い調査や分析を基に行政の果たすべき役割をより深く論じることができるでしょう。

 肯定側は、二重行政によるコスト削減、地域の特色を生かした行政サービス、行政の役割を明確化による政策立案能力の向上、東京一極集中の解消などを論じることができます。否定側は、地域の文化やアイデンティティの消失、道州間の財政力格差の調整の困難化、政策決定主体が離れることによる行政サービスの低下などを論じることができます。本論題は、21世紀の日本のあるべき姿や、行政と市民との関係性について考える格好の論題と言えます。

8)「日本政府は保険診療と保険外診療の併用を原則認めるべきである。」

(英語試訳:1) Resolved: That the Japanese government should basically allow the joint provision of medical treatments covered by public health insurance and those uncovered.
2) Resolved: That the Japanese government should allow all or most joint provision of health insurance treatments and treatments uncovered by the insurance.)
 
  この論題は「混合診療」を表したものです。日本の公的医療保険制度では、保険が適用される診療を限定しており、保険適用外の診療(自由診療)と同時に受ける混合診療は、原則として認められていません。保険内の診療に自由診療が加わった場合は保険内の診療も保険適用外とされ、本来であれば保険適用内の診療も全医療費を患者が負担しなくてはなりません。混合診療の解禁により、この全額負担が軽減される一方、保険外診療の選択肢が増えることにより結局負担は増加するとの主張もあります。

また、診療、薬剤、医療機器、サービスや個人保険に至るまで営利的な参入が促進されることから、様々な利点や弊害がもたらされると考えられています。現在全面解禁を強く求める規制改革会議と抵抗する厚生労働省が争議していること、また裁判で混合診療の法的根拠が争われていることなどから、旬な話題と言うことができます。今の日本は高齢化社会への変化に伴う医療費の増大が不可避の状態であり、保険制度の見直しを含む医療制度の変革は不可欠となっています。世界一の高齢化社会日本の将来を医療面から問う格好の論題であることは間違いあり
ません。

  なお、「混合診療」に当たる英語の定型表現がないため、「医療行為の混在」という面から試訳を作成しています。そのため日本語文献に見られる「混合診療」と論題の文言との間に微妙な差異が生まれる可能性があります。

C) 日本政府はカジノを合法化すべきである

(英文試訳:Resolved: That the Japanese government should legalize all or most gambling.)
 
  現在、120カ国以上においてカジノが合法化されており、G8では日本のみがカジノ非合法国となっています。世界には2000以上のカジノが存在し、その場所もオセアニアからアフリカまで世界中にあると言っても良い状況です。そのような中、日本でも2000年の東京都知事石原慎太郎氏の「お台場カジノ構想」以降カジノ合法化への機運が高まっており、カジノ合法化を検討する議員連盟等も設立されています。また地方自治体もカジノの誘致に積極的であり、カジノによる地方復興が期待されています。想定される議論としては、肯定側は世界的な観光客争奪戦に勝つことにより得られる経済効果、カジノの集客効果による貧しい地方自治体の財政の健全化や雇用創出効果、その利益が闇組織に流れているとされている違法カジノの追放などを論じることができ、一方否定側はカジノと暴力団が癒着することによるカジノ利益の闇組織の資金源化、ギャンブル依存症患者及びそれに伴う犯罪や自己破産の増加、青少年への悪影響等を論じることができます。本論題案は観光産業や娯楽というこれまで論題として扱われることが少なかった側面に目を向け、その面から日本の位置やあるべき姿を追求するのに適している論題であると言えます。

 なお、英語ワーディングでcasinoという語を用いずにgamblingという面から論題エリアを規定しているのは、英語のcasinoという語が一般的な意味でのカジノを指さないと判断されたためです。gamblingの数え方に恣意性が入る余地が残っていますが、論題委員会内の話し合いではそれほど大きな問題ではないという結論になったことを付記しておきます。


[2007年後期よりの継続]

D) 日本は死刑を廃止すべきである。

(英語試訳:Resolved: That Japan should abandon the death penalty.)
 
 現在、死刑に関する世界の動きは死刑に反対する方向に向かっており、死刑を廃止している国と死刑執行を事実上停止している国の数は死刑を存置・適用している国を大きく上回っています。特に欧州連合(EU)では死刑廃止をその加盟の条件に盛り込んでおり、さらに、死刑廃止を世界に働きかけています。これに対して日本では2006年末に一年余ぶりに死刑が執行され、また裁判員制度の導入に伴い、死刑に対する関心が高まっています。

 肯定側は、死刑廃止により無実の人々が生命を奪われる危険性を回避することができるということをメリットとして論じることや、死刑囚の人権について論じることにより、生命という基本的人権についての議論が深まることが予想されます。一方、否定側は死刑の存在が犯罪の発生を抑止するという議論を用いて、死刑廃止によって犯罪の発生件数が増えてしまうということをデメリットとして論じることや、被害者やその家族の感情を考え、死刑が必要なのではないかと論ずることにより被害者やその家族に関する人権についての議論が深まること、あるいは被害者の家族による加害者への復讐を防ぐことができないということをデメリットとして論じることが予想されます。昨今の凶悪犯罪の増加や被害者家族の保護をどのようにディベートの試合に取り入れるのかも見所の一つになるでしょう。


注意
----
JDA会員の皆様には近日中に,投票用紙が送付されますので,必要事項にご記入の上,郵送は伊藤宛、ファックスは久保宛に2月10日(日)必着でお送り下さい。

--------
電子メールでの投票は受け付けておりません。投票は,必ず郵送された正規の投
票用紙の
郵送もしくはファックスでよろしくお願いします。


Go to Top Page

(注)このページに掲載されている情報の著作権はJDAにあります。無断での複製、転載を禁じます。