2010年度後期推薦論題
会員投票のお知らせ


<投票用紙は、JDA会員あて別途郵送されます。>


A) 日本国は原則全ての職種において外国人労働者を認めるべきである。

現在日本政府は,就労を目的とした外国人の入国・滞在を,原則として,技能・専門職種以外では認めておりません。本論題案では,外国人労働者が,「単純労働」を含む原則全ての職種においても就労できるように日本国で認め,労働市場の門戸を開くことの是非を議論することになります。
予想される肯定側議論としては,現在急速に進んでいる少子高齢化社会における労働力不足の解消や, 外国人労働者の雇用条件の改善,個人間での人間関係を通じた国際協調などを挙げることが出来ます。否定側としては,外国人労働者の急増に伴う治安の悪化の危険性,日本人雇用に対する悪影響,外国人労働者受け入れに伴う行政的・社会的コストの増大,などを論じることができます。また,近年議論が活発に行われている現在20万人を超えるといわれる「不法就労外国人」やその子供の処遇,外国人労働者の具体的な受け入れ方法も含め幅広い議論が期待できます。
 なお,本論題案は,2005年前期の推薦論題と基本的に同じですが,文言により問題が生じる可能性が討議され,前期に行われた論題検討委員会での審議の結果,文言に若干の変更を施しました。また,外国人労働者に対する労働環境や社会保障が是正されているなど,外国人労働者に対する政策は刻々と動いており,過去の資料に優位性を示すことは十分に可能です。
 このグローバル化の潮流の下,東アジアとの関係を模索している現在の日本社会に関して,行く末を考える一つのきっかけとなる論題になると言えます。


B) 日本政府は代理出産もしくは着床前診断を認める法令を制定すべきである。

代理出産とは, 妻に子宮が無いなどの理由で子供を産めない夫婦が, 第三者に出産してもらうことを言います。代理出産は, 現在, 日本産科婦人科学会の自主規制により行われていませんが, 世界に目を向ければ, 決して珍しいことではありません。しかし, 倫理上の問題や代理母の身体的・精神的負担などの理由から, 代理出産に対する批判もなされています。着床前診断とは, 着床前または妊娠前に受精卵の遺伝的組成を分析し, 遺伝子の異常がない場合, その受精卵は移植され, 異常が発見された場合は破棄されます。これによって, 例えば重度の遺伝性疾患をもつ子どもの妊娠を避けることが可能になります。代理出産同様, 日本産科婦人科学会は, 現在, 着床前診断の実施を厳しく制限しています。
 着床前診断に対しては、命の選別につながる, 優生思想を助長する, 着床前診断が乱用されるなどの反対意見も根強く, 実際, 米独仏などでは法規制がなされています。代理出産と着床前診断は, ともに大きな利点がある反面, 深刻な問題を引き起こす危険性があるため, 多くの国で長年議論されており, 日本でも近年これらの生殖医療に対する関心が高まっています。JDA推薦論題では数年振りの生殖医療関連のトピックであり, 生命倫理, 個人の権利, 子どもの福祉, 国家の介入の是非など深いレベルでの議論が行いうると思います。


C) 日本国政府は道州制を導入すべきである。

現在、人口減少や高齢化、確立しつつあるグローバル市場を背景に広域な行政課題が増えてきています。複数の都道府県での環境規制や交通基盤整備、観光振興等の課題への取り組みが必要とされ、また都市への人口集中と地方の過疎化が同時に進行しており、今後も広帯域な行政課題は増加していくと考えられています。その中で、現状の中央集権的な役割分担では地方ごとに原因の異なる広範な行政的課題に対して必要な対策を十分に行えないだけでなく、重複的で無駄の多い行政になり、必要な費用を負担できないなど急速に変化する地域の問題に現状の都道府県や中央政府は対応することが出来ていない側面があります。このため、道州制により明治以来の都道府県の区割りを再編し、さらに地方自治体に権限を与えることで、国と地方の役割分担を見直そうという動きがあります。
 肯定側は、二重行政によるコスト削減、地域の特色を生かした行政サービス、行政の役割の明確化による政策立案能力の向上、東京一極集中の解消などを論じることができます。否定側は、地域の文化やアイデンティティの消失、道州間の財政力格差の調整の困難化、政策決定主体が離れることによる行政サービスの低下などを論じることができます。本論題は、21世紀の日本のあるべき姿や、行政と市民との関係性について考える格好の論題と言えます。


[20010年前期よりの継続]
D) 日本国政府は炭素税を導入すべきである。

現在,日本において国レベルでは炭素税は導入されていません。過去に炭素税の導入は検討されてきましたが,産業界の反対,原油価格の高騰などによって,導入が見送られてきました。しかし,異常気象の原因が地球温暖化にあると叫ばれる中,各国の環境問題に対する意識は高まりつつあり,京都議定書から脱退を宣言していた米国も独自の環境対策を始めています。炭素税の導入の是非を問う本論題では,地球温暖化の問題にとどまらず,日本企業の経営の在り方,環境対策の先進国・後進国との関係,日本のエネルギー政策の問題など多彩な論点について議論することができます。肯定側としては,地球規模の地球温暖化問題,日本国内の環境の保全や自然エネルギー資源による失業の解消について論じることが可能です。一方,否定側としては,国内産業の海外移転による国内産業の空洞化や海外での環境汚染,また原子力へのエネルギー政策のシフトの問題について論じることが可能です。どの分野の議論においても肯定・否定側のどちらからも議論することができ,バランスの良い論題であると考えられます。また,過去に採用された論題ではありますが,世界各国の環境政策は刻々と動いており,過去の資料に優位性を示すことは十分に可能であると考えられます。国際社会の流れに乗り遅れないように,我が国が環境政策でどう舵を切っていくかについてディベートすることは十分意義があると考えられ,論題候補とし妥当であると言えます。


注意
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JDA会員の皆様には投票約3日前に,投票用紙が送付されますので,必要事項にご記入の上,郵送及びファックスを8月7日(土)必着でお送り下さい。


申し訳ありませんが、論題投票方法の改革に時間がかかってしまったことにより今回は論題投票までの期日が投票用紙が届いてから約三日程度と限られております。ご注意下さい。FAXで出された方が確実に期日までに届くかと思います。

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