2010年度前期推薦論題会員投票のお知らせ



会員各位
日本ディベート協会(JDA)論題検討委員会は,2010年前期の推薦論題の候補として,次の四つの論題案を選びました。

A) 日本国は原則全ての職種において外国人労働者を認めるべきである。

現在日本政府は,就労を目的とした外国人の入国・滞在を,原則として,技能・専門職種以外では認めておりません。本論題案では,外国人労働者が,「単純労働」を含む原則全ての職種においても就労できるように日本国で認め,労働市場の門戸を開くことの是非を議論することになります。
予想される肯定側議論としては,現在急速に進んでいる少子高齢化社会における労働力不足の解消や, 外国人労働者の雇用条件の改善,個人間での人間関係を通じた国際協調などを挙げることが出来ます。否定側としては,外国人労働者の急増に伴う治安の悪化の危険性,日本人雇用に対する悪影響,外国人労働者受け入れに伴う行政的・社会的コストの増大,などを論じることができます。また,近年議論が活発に行われている現在20万人を超えるといわれる「不法就労外国人」やその子供の処遇,外国人労働者の具体的な受け入れ方法も含め幅広い議論が期待できます。
なお,本論題案は,2005年前期の推薦論題と基本的に同じですが,文言により問題が生じる可能性が討議され,論題検討委員会での審議の結果,文言に若干の変更を施しました。また,外国人労働者に対する労働環境や社会保障が是正されているなど,外国人労働者に対する政策は刻々と動いており,過去の資料に優位性を示すことは十分に可能です。
このグローバル化の潮流の下,東アジアとの関係を模索している現在の日本社会に関して,行く末を考える一つのきっかけとなる論題になると言えます。



B) 東アジアの国々は共通通貨を採用すべきである。

現在東アジア域内では,国際貿易が年々拡大し,域内関税の引き下げも進み,経済相互依存が高まっています。しかし,その取引の多くがドルによって決済されているため,経済危機が起きた場合米ドル相場の変動に翻弄され,東アジア諸国に経済危機が再び起こるという脆弱性も高まっています。この現状から,東アジアでもユーロのような共通通貨を導入し,脆弱性を防ぐべきであるとの考えが生まれています。また,共通通貨を導入することで,域内国間全ての利害をふまえた対外的行動を促すメカニズムが働くため,経済のみならず政治的調整も円滑化される可能性もあります。一方,東アジアで共通通貨を導入すると,通貨圏内各国の事情を基にした柔軟な通貨対策が取れなくなるという議論や,通貨圏外の国々との政治的調整が難しくなるという議論もあります。
なお,本論題案は,2004年前期の推薦論題と基本的に同じですが,文言により問題が生じる可能性が討議され,論題検討委員会での審議の結果,文言に若干の変更を施しました。また,経済面での繋がりを中心にアジアとの関係性は刻々と変化しており,過去の資料に優位性を示すことは十分に可能であると考えられます。
本論題は東アジア域内との関係性,世界との関係性を経済面・政治面から論じることができ,論題として妥当であると言えます。


C) 日本国政府は炭素税を導入すべきである。

現在,日本において国レベルでは炭素税は導入されていません。過去に炭素税の導入は検討されてきましたが,産業界の反対,原油価格の高騰などによって,導入が見送られてきました。しかし,異常気象の原因が地球温暖化にあると叫ばれる中,各国の環境問題に対する意識は高まりつつあり,京都議定書から脱退を宣言していた米国も独自の環境対策を始めています。炭素税の導入の是非を問う本論題では,地球温暖化の問題にとどまらず,日本企業の経営の在り方,環境対策の先進国・後進国との関係,日本のエネルギー政策の問題など多彩な論点について議論することができます。肯定側としては,地球規模の地球温暖化問題,日本国内の環境の保全や自然エネルギー資源による失業の解消について論じることが可能です。一方,否定側としては,国内産業の海外移転による国内産業の空洞化や海外での環境汚染,また原子力へのエネルギー政策のシフトの問題について論じることが可能です。どの分野の議論においても肯定・否定側のどちらからも議論することができ,バランスの良い論題であると考えられます。また,過去に採用された論題ではありますが,世界各国の環境政策は刻々と動いており,過去の資料に優位性を示すことは十分に可能であると考えられます。国際社会の流れに乗り遅れないように,我が国が環境政策でどう舵を切っていくかについてディベートすることは十分意義があると考えられ,論題候補とし妥当であると言えます。


[2009年後期よりの継続]
D) 日本国は日米安全保障条約を破棄すべきである。

近年,在日米軍による犯罪や思いやり予算による財政の圧迫など,在日米軍の負の影響がクローズアップされる機会が増えています。しかし一方で,北朝鮮の核開発や中国の台頭など,アジア地域における安全保障も問題になっています。日米安全保障条約の破棄の是非を問う本論題では,在日米軍の問題にとどまらず,日本の防衛政策の在り方,日本と米国の関係,アジアの安全保障の問題など,様々な観点から議論することが可能となるでしょう。肯定側は,在日米軍による犯罪の減少,思いやり予算削減による財政負担の改善,日本の軍縮によるアジア全体の軍縮などを論じることができます。また否定側は,日米関係の悪化による経済制裁,自衛隊増強による財政負担の増加,米軍撤退を機としたアジアの軍拡などを議論できます。どの分野の議論も肯否双方から論じることが可能で,バランスが良い論題であると考えられます。懸念事項として,過去に採用された論題であることからその時の資料が使える可能性があります。しかし,過去に論題として採用されてから10年以上も年月が経過していることで,過去の資料の有用性は限られており,また近年の傾向をリサーチし直すことで過去の資料に対して優位性を示すことは十分に可能であると考えられます。それ以上に,現在大きな社会問題となっているアジア地域の安全保障に関してディベートすることは十分意義があると考えられ,論題候補として妥当であると言えます。(前期論題推薦文より転載)


論題についてのご意見募集・投票に関する質問について

開票・発表は,2月13日(日)午後2時00分より行なう予定です。その際,推薦論題に文言上の微修正を加える可能性があることを予めご了承ください。
なお会員の皆様には,ご投票だけでなく,論題文案についてのアドバイスや問題提起なども頂ければ幸いです。投票用紙の備考欄にご記入頂くか,JDA-ML までメールでご意見をお寄せ頂ければ幸いです(投票方法等に関するご質問も,そちらでよろしくお願いします)。
論題は,多くの人が関わる公共財であり,なるべく多くの会員の方々の投票や知恵を結集して,良い論題を発表できればと考えております。是非ご協力お願い申し上げます。


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電子メールでの投票は受け付けておりません。投票は,必ず郵送された正規の投票用紙の郵送もしくはファックスでよろしくお願いします。


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