小野 剛@JDAプロポ委員長です。
98年度後期の、推薦命題が決まりました。先に ML上にて発表させて頂きます。
JDA 会員の方には、後ほど郵送にて決定をお知らせいたします。
決定された推薦プロポジションは、以下のとおりです。
英語推薦プロポジション
Resolved:That theJapanese government should significantly reduce the progressivenessin the rates of direct taxes imposed on individuals.
日本語推薦プロポジション
日本政府は、個人に課される直接税の累進性を大幅に緩和すべきである。
英語推薦プロポジションには、ワーディングの変更が一箇所ありました。(ease->reduce)
日本語推薦プロポジションには変更はありません。
なお、日本語推薦プロポジションは、英語推薦プロポジションの翻訳ではなく、おおむね同じエリアを持つ別のプロポジションです。ご注意下さい。
プロポジションの背景
日本に限らず、世界中ほとんどの国で、所得税、住民税、相続税などの個人所得に課される直接税の税率には累進性があります。これは、税金を用い、所得の再分配を行うことを目的とした制度であるといえます。
しかしながら、この制度下では、所得が増えても手取りの所得がなかなか増えない、高額所得者になると所得のほとんどを国庫に納めなければならない、などにより、勤労意欲を損なうことが指摘されています。
このため、アメリカでは所得税の累進の段階を減らし、最高税率を引き下げる改正が行われた結果、高い所得をめざした起業家が多数現れ、情報・通信分野を中心とした今日のアメリカの好景気を支えているともいわれています。
さらに、低額所得者であっても、高額所得者であっても、受ける公共サービスに差はないため、低額所得者が優遇されているという議論があり、税制面の不備が指摘されているところです。
この論題は、このような問題をはらむ個人に課される直接税の累進性のありかたを議論することを目的としています。
肯定側としては、累進性の緩和により、勤労意欲の増大、起業家の増加、他の先進諸国への人材の流出が止まることなどにより、新産業の送出、雇用・消費の増大をもたらし、日本の景気を大きく刺激する、といった景気への刺激がメリットとしてあげられるでしょう。さらに、同じ公共サービスを受けているにも関わらず、収入が異なるというだけで国庫に納める税額が大きく異なるという公平性の問題も議論できるでしょう。
否定側としては、累進性を弱めることは、高額所得者を優遇し、低額所得者の負担を増額することになるため、弱者保護という政府の基本的立場から認められない、といった政府のありかたにかかわる議論や、税収の減少による財政の悪化による経済的影響、将来世代への借金の付け回しの非合理性等が議論できるでしょう。
採決は,以下の規則に従って決定しました。
1.7月17日に会員として承認されている,個人会員ならびに団体会員は,投票権を持つ。
2.団体会員で大会を主催する団体会員のうち,昨年度の主催大会の参加校
が,
a) 50校を越える場合は, 20票
b) 30校を越える場合は, 15票
c) 10校を越える場合は, 10票を持つ。
d) それ以外の団体会員は, 5票を持つ。
3.個人会員は,団体会員の票数の総計(棄権票も含む)を,投票権を持つ総個人会員数(棄権者も含む)で割った票数を持つ。(小数点2位以下切り捨て)
4.団体会員,個人会員とも,複数のマルを付けてはならない。複数の票を持っていたとしても,それは一まとまりとして取り扱われる。そうでない場合(票を分割して別の組み合わせを書く等)は,無効とする。
5.各会員の票が確定後,最も多く得票したプロポジション案を推薦プロポジションとする。
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投票結果です。
参加校50を越える団体 0
参加校30を越える団体 2
参加校10を越える団体 3
それ以外の団体 18 (含む棄権票)
個人会員 107
個人票は、
(20x0 + 15x2 + 10x3 + 5x18) / 107 = 1.401.. = 1.4票
一人あたり 1.4 票となる。
第一案
直接税
第二案
民主主義
第三案
医療改革
得票数 ポイント 得票数 ポイント 得票 ポイント 個人 16
22.4
12
16.8
5
7.0
参加校50団体
0
0
0
0
0
0
参加校30団体
1
15
0
0
1
15
参加校10団体
1
10
1
10
1
10
それ以外団体
3
15
2
10
4
20
計
62.4
36.8
52.0
投票された JDA 会員の皆様、本当にありがとうございました。
またリサーチに協力頂いた各団体の代表者の方々、どうもありがとうございました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
今期のプロポ委員会では、大学 ESSのディベートに限らず、社会人の団体や日本語ディベート団体での使用にも耐え得る論題を目指して、多角的に検討を進めてまいりました。プロポ委員一同、この推薦命題が多くのディベート大会で活用されることを願っています。
JDA プロポ委員
小野 剛(委員長)
鈴木 健 瀬能 和彦 青沼 智 臼井 直人 矢野 善郎 飯田 浩隆 安井省侍郎