JDA 会員各位:日本ディベート協会プロポジション委員会委員長の小野 剛です。推薦プロポジションの候補案が出そろいましたので、まずはご報告します。投票権を持つ会員の方には追って郵送により投票用紙が届きます。電子メールによる投票は認めておりませんので、注意してください。
来たるシーズンが実り多いものになることを願って 小野 剛
日本ディベート協会(JDA)プロポジション委員会は,1998年前期の推薦プロポジションの候補として,次の三つのプロポジション案を選びました。 1. Resolved: That all or most East and Southeast Asian nations should establish free trade among themselves.
2. Resolved: That Japan should increase direct political participation of the people through the introduction of a comprehensive system of referendum and/or the direct election of the Prime Minister.
3. Resolved: That the Japanese government should significantly expand the scope of admissible evidence in criminal court.
会員の皆様は,同封の投票用紙にお答えの上,小野宛に2月6日(金)必着でお送り下さい。最終的な推薦プロポジションは,これら三つの案の中から下記の方法に従い2月7日に決定・発表することになります。(プロポジション案に,若干の用語上の変更を加えることはありえます。) 推薦プロポジションの最終決定を会員投票に委ねることによって,より多くの声をプロポジションに反映させるという,この制度の趣旨が生かされるよう,是非とも御協力お願いします。 1. 投票用紙の郵送先 略 投票方法等に関する御質問等ございましたら,jda-ml@csl.sony.co.jp まで御願いします。 なお投票自体は,電子メールでは受け付けておりませんので御注意ください! 2. 投票方法------------ 3つの候補のうち,前期のプロポジションとして最もふさわしいものを選んで投票して下さい。(なお複数票持っている団体会員も,票を分散させることは出来ません。紛らわしいと判断される場合,全て無効票となります。)投票の結果,最も多くの投票のあったプロポジション案を推薦プロポジションとします。 3. 集計方法の詳細------------------ JDAプロポジション委員会は,推薦プロポジションの最終決定を会員投票の形で行っております。その際の採否は,団体会員,特に大会を主催する団体会員の意見をより重視する形で決定します。これは,例年推薦プロポジションが大学英語サークルを中心として用いられるためです。(ただし集計は全てプロポジション委員の方で行いますので,会員の皆様は複雑な手順を辿る必要はありません。) 採決は,以下の規則に従って決定します。 1. 1月15日に会員として承認されている,個人会員ならびに団体会員は,投票権を持つ。 2. 団体会員で大会を主催する団体会員のうち,昨年度の主催大会の参加校が, a) 50校を越える場合は, 20票 b) 30校を越える場合は, 15票 c) 10校を越える場合は, 10票を持つ。 d) それ以外の団体会員は, 5票を持つ。 3. 個人会員は,団体会員の票数の総計(棄権票も含む)を,投票権を持つ総個人会員数(棄権者も含む)で割った票数を持つ。(小数点2位以下切り捨て) 一例として,ある投票では, 参加校50を越える団体 1 参加校30を越える団体 2 参加校10を越える団体 2 それ以外の団体 13 個人会員 85 よって個人会員の票数の割当は, ( 20x1 + 15x2 + 10x2 + 5x13 ) / 85 = 1.5票 1人1.5票 4. 団体会員,個人会員とも,複数のマルを付けてはならない。複数の票を持っていたとしても,それは一まとまりとして取り扱われる。そうでない場合(票を分割して別の組み合わせを書く等)は,無効とする。 5. 各会員の票が確定後,最も多く得票したプロポジション案を推薦プロポジションとする。 4. 各プロポジション案の背景--------------------------- 1. Resolved: That all or most East and Southeast Asian nations should establish free trade among themselves. 「21世紀はアジアの時代である」とまで言われたほどに経済的躍進の目覚しい同地域でしたが,タイや韓国の経済危機などが示すように,昨今その繁栄にも陰りが見えてきました。はたして次世紀はアジアのものとなるのか,また,その為にはアジア諸国はどうすれば良いのか。 この論題では,東アジアおよび東南アジア諸国の通商を,欧州のEUや北米のNAFTAなどのように,自由化・緊密化させるべきか否かを議論します。 肯定側としては,アジア域内での貿易の活性化にともなう,アジア諸国間の経済的・非経済的交流の促進などが論じられるでしょう。また,その波及効果として,アジア地域での政局安定,紛争阻止,あるいは世界経済の活性化なども論じられるかもしれません。 否定側としては,欧州や米国で成立したような自由貿易が,アジアでどこまで実現しうるのかという実効性の問題に関する議論や,あるいは不利益として,いわゆるブロック経済化の問題,例えば経済圏ごとの保護主義的な閉鎖化にともなう世界経済への悪影響,ないしはその政治的な波及効果などを論じることもできるでしょう。 2. Resolved: That Japan should increase direct political participation of the people through the introduction of a comprehensive system of referendum and/or the direct election of the Prime Minister. 現代の日本政府は,代議制に基づく間接的民主主義によって運営されています。しかし原発の是非,沖縄の基地問題など,国民的な関心の集中する事例では,間接的な参加方法だけではなく,国民の意見を政策に直接反映させる制度を導入したほうがよい,という議論がでてきました。 各地方自治体レベルでは,既に住民投票条例などを制定し,住民投票を行ったケースもありますが,しかし国政レベルでの検討が必要となる議題に関しては,憲法に憲法改正の際の国民投票の規定が定められているのみで,直接的民主主義を実現する制度は事実上ありません。 このプロポ案は,重要な議題に関して国民投票を行う制度の導入(レファレンダム制)と,日本の首相を国民の投票によって選ぶ首相公選制の二つを具体的な政策オプションとして用意し,直接民主制度と間接民主制度のどちらが望ましいかという,政治思想史でも重要な問題を取り上げます。 予想される肯定側の論点は,より良い政策決定,国民の政治意識の向上などが柱となるでしょう。首相公選制に関しては,政治的リーダーシップの発揮,任期を区切ることによる政権の安定化なども主張できるでしょう。 否定側の論点としては,一貫性のない意思決定,代議制の崩壊などがあげられます。首相公選制は単なる人気投票に終わる,という議論も可能でしょう。 また,直接投票による国民的熱狂は,ファシズムの契機となるなど負の側面を持つという議論もできるでしょう。 3. Resolved: That the Japanese government should significantly expand the scope of admissible evidence in criminal court. オウム教団や神戸小学生殺人事件の例を挙げるまでもなく,広域化・凶悪化した犯罪がマスコミをにぎわせることがこの数年の間多くありました。また,青少年への浸透が問題になっている麻薬・覚醒剤の使用,暴力団などの組織犯罪,銃犯罪の増加などが,人々の治安を脅かすものとして深刻に受け止められています。 この命題は,昨今の犯罪状況に対して警察・公安の捜査手段を拡充することの是非を議論することを目的とするものです。 典型的な肯定側のプランとしては,おとり捜査や盗聴など,日本の現行の刑事訴訟の手続きでは違法と見なされる可能性のある捜査手段により警察が収集した証拠を,新たに法廷で採用できるようにするものがあげられるでしょう。 肯定側は,こうしたプランによる犯罪の摘発・防止を利点として論じることになるでしょう。各種の犯罪に対してどのような捜査が有効であるか,外国の事例などを参照して調べていけば,より優れた議論になると思われます。逆に否定側としては,人権(プライバシー等)の侵害,行き過ぎた捜査による冤罪の危険性などを論じることになるでしょう。 以上