1999年度後期推薦プロポジションの会員投票のお知らせ

 


JDA 会員各位:

日本ディベート協会プロポジション委員会委員長の小野 剛です。推薦プロポジションの候補案が出そろいましたので、まずはご報告します。投票権を持つ会員の方には追って郵送により投票用紙が届きます。電子メールによる投票は認めておりませんので、注意してください。

来たるシーズンが実り多いものになることを願って        小野 剛


 

日本ディベート協会

プロポジション委員会委員長

小野 剛

 

 

 日本ディベート協会(JDA)プロポジション委員会は,1999年後期の推薦プロポジションの候補として,次の三つのプロポジション案を選びました。

 

1. Resolved:That the Japanesegovernment should regulate mass media reporting of crimes to protectthe privacy of individuals.

 

日本政府は、個人のプライバシー保護のために、犯罪報道を規制すべきである。

 

2. Resolved:That Japan shouldincrease direct political participation of the people through theintroduction of a comprehensive system of national referendum and/orthe direct election of the Prime Minister.

 

日本は,包括的な住民投票制度又は首相公選制度の導入により,国民の政治参加を促すべきである。

 

3. Resolved:That the Japanesegovernment should make a law that substantially increases a patient'sparticipation in making informed decisions concerning his or hermedical treatment.

 

日本政府は,患者が自己の治療方針の決定に関与できる医療環境を法的に整備すべきである。

 

会員の皆様は,同封の投票用紙にお答えの上,小野宛に7月16日(金)必着でお送り下さい。最終的な推薦プロポジションは,これら三つの案の中から下記の方法に従い7月17日に決定・発表することになります。(若干の用語上の変更はありえます。)

 

なお、1998年度の会費を未納の会員は,投票前にお払い込みください。また、日本語推薦論題(プロポジション)は, 英語推薦プロポジションの翻訳ではなく,おおむね同じエリアを持つ別のプロポジションです。ご注意下さい。

 

 

投票用紙の郵送先

<略>

投票に関する質問

 

投票方法等に関する御質問等ございましたら,委員長の小野(03--3448--9524)か,JDA-MLまで御願いします。(なお投票自体は,電子メールでは受け付けておりませんので御注意ください。)

 

 

投票方法

<略>

 


各プロポジション案の背景

 

第一案 犯罪報道とプライバシー

 

新年にはいってもマスコミをにぎわせている砒素入りカレー事件、また14歳の少年が小学生を殺害し犯行声明を出した酒鬼薔薇事件などは、犯罪報道と個人のプライバシーの問題を改めて浮き彫りにしました。特に酒鬼薔薇事件では、少年の顔写真を公開したり、また検事の調書が不明瞭な経緯で公表されたことに対して非難の声があがりました。また、東京電力OLが殺害された事件においては、事件そのものではなく被害者の女性のプライバシーが雑誌やTVのワイドショーで商品化されていったことに不快の念を抱いた方もいたことと思います。

本命題は、このような風潮を背景にして、政府がマスコミの犯罪報道に対して規制を行うことの是非を問うものです。肯定側は、個人のプライバシー保護を利益として主張できるでしょう。また否定側は、マスコミに対する威嚇効果により必要な報道がなされなくなること、また言論の自由の侵害などを弊害として指摘することができるでしょう。また、プライバシーそのものの線引きをどこで行うか、ということも議論になるでしょう。

 

第二案 民主主義

 

現代の日本政府は,代議制に基づく間接的民主主義によって運営されています。しかし原発の是非,沖縄の基地問題など,国民的な関心の集中する事例では,間接的な参加方法だけではなく,国民の意見を政策に直接反映させる制度を導入したほうがよい,という議論がでてきました。

このプロポ案は,重要な議題に関して国民投票を行う制度の導入(レファレンダム制)と,日本の首相を国民の投票によって選ぶ首相公選制の二つを具体的な政策オプションとして用意し,直接民主制度と間接民主制度のどちらが望ましいかという,政治思想史でも重要な問題を取り上げます。

予想される肯定側の論点は,より良い政策決定,国民の政治意識の向上などが柱となるでしょう。首相公選制に関しては,政治的リーダーシップの発揮,任期を区切ることによる政権の安定化なども主張できるでしょう。否定側の論点としては,一貫性のない意思決定,代議制の崩壊などがあげられます。首相公選制は単なる人気投票に終わる,という議論も可能でしょう。また,直接投票による国民的熱狂は,ファシズムの契機となるなど負の側面を持つという議論もできるでしょう。

 

第三案 医者と患者の関係

 

医者と患者の関係は,古くて新しい問題です。現状において,患者が医者から十分な説明を聞き,納得した上で治療を受けているケースはそれほど多くないでしょう。患者が,医者の専門性を信頼して,治療方針の選択を委ねていることが大半です。しかし,このような医者/患者関係が,医療過誤や不必要な治療の温床となっている面も否定できません。医療サービスを受ける側にも,より積極的な関与が求められているといえます。

このプロポ案は,これらの問題に対して立法的な解決を行うことの是非を問うものです。予想される肯定側の論点は,ニーズに沿ったよりよい医療サービスの提供,不必要な治療の低減,患者の側の意識向上などがあげられるでしょう。また,また,立法による解決の利点として,確実な実行性,医事裁判に与える影響などがあげられるでしょう。

否定側の論点としては,医者に今まで以上の責任を負わせることで,医者が必要な治療においても消極的になる可能性,患者の反対による必要な治療プロセスの阻害,コストの増大などがあげられるでしょう。また,素人である患者がはたして医者と同等の立場で医学上の決断に加わることが現実的かどうか,また医者側が実際にどこまで協力的になるか,ということも論点になるでしょう。


さいごに

 

プロポジション候補案を作成するにあたってご協力頂いた個人、団体の皆様に感謝します。推薦プロポジションの最終決定を会員投票に委ねることによって,より多くの声をプロポジションに反映させるという,この制度の趣旨が生かされるよう,是非とも御協力お願いします。

 

JDAプロポジション委員会

小野 剛(委員長) 鈴木 健 瀬能 和彦 青沼 智 臼井 直人

矢野 善郎 飯田 浩隆 安井 省侍郎

 



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