JDA 会員各位:日本ディベート協会プロポジション委員会委員長の小野 剛です。推薦プロポジションの候補案が出そろいましたので、まずはご報告します。投票権を持つ会員の方には追って郵送により投票用紙が届きます。電子メールによる投票は認めておりませんので、注意してください。
来たるシーズンが実り多いものになることを願って 小野 剛
日本ディベート協会 プロポジション委員会委員長 小野 剛日本ディベート協会(JDA)プロポジション委員会は,1999年前期の推薦プロポジションの候補として,次の四つのプロポジション案を選びました。
1. Resolved:That theJapanese government should restrict mass media reporting of crimesthat infringes the privacy of individuals.
日本政府は、プライバシーを侵害する犯罪報道を規制すべきである。
2. Resolved:That theJapanese government should take non-threatening diplomatic measuresto promote amicable relations with North Korea.
日本政府は、北朝鮮に対し、より友好的な外交政策をとるべきである。
3. Resolved:That Japanshould increase direct political participation of the people throughthe introduction of a comprehensive system of referendum and/or thedirect election of the Prime Minister.
日本は,包括的な住民投票制度又は首相公選制度の導入により,国民の政治参加を促すべきである。
4. Resolved:That theJapanese government should make a law that substantially increases apatient's participation in making informed decisions concerning hisor her medical treatment.
日本政府は,患者が自己の治療方針の決定に関与できる医療環境を法的に整備すべきである。
会員の皆様は,同封の投票用紙にお答えの上,小野宛に1月25日(月)必着でお送り下さい。最終的な推薦プロポジションは,これら四つの案の中から下記の方法に従い1月25日に決定・発表することになります。(若干の用語上の変更はありえます。)
なお、1998年度の会費を未納の会員は,投票前にお払い込みください。また、日本語推薦論題(プロポジション)は, 英語推薦プロポジションの翻訳ではなく,おおむね同じエリアを持つ別のプロポジションです。ご注意下さい。
投票用紙の郵送先
(省略)
投票に関する質問
投票方法等に関する御質問等ございましたら,委員長の小野か,JDA-MLまで御願いします。(なお投票自体は,電子メールでは受け付けておりませんので御注意ください。)
投票方法
投票方法に変更が加わりました。ご注意ください。
1.4つの候補のうち,後期のプロポジションとしてふさわしいものを選んでマルをつけてください。マルをつける候補を複数,選んでも構いません。
2. なお複数票 (N票)を持っている団体会員は,マルを付けた候補それぞれに,N票を投じたものと同じ勘定になります。二つの候補にマルを付けたからといって,それぞれにN/2 票づつ投じることになるわけではありません。
3.投票の結果,最も多くの投票のあったプロポジション案を推薦プロポジションとします。
集計方法の詳細
JDAプロポジション委員会は,推薦プロポジションの最終決定を会員投票の形で行っております。その際の採否は,団体会員,特に大会を主催する団体会員の意見をより重視する形で決定します。これは,例年推薦プロポジションが大学英語サークルを中心として用いられるためです。(ただし集計は全てプロポジション委員の方で行いますので,会員の皆様は複雑な手順を辿る必要はありません。)
採決は,以下の規則に従って決定します。
1.1月9日に会員として承認されている,個人会員ならびに団体会員は,投票権を持つ。
2. 団体会員は,基本票として5票持つ。ただし団体会員のうち,春期に大会を主催し,この推薦プロポジションをその大会で使用する予定がある場合は,次のように大会規模に応じて上乗せした票を持つ。(大会規模に関しては自己申告に従います)
その大会の昨年度の参加校数が
25校以上 計20票
10校以上25校未満 計15票
10校未満 計10票
不明、または今年度新設 計10票
3.個人会員は,団体会員の票数の総計(棄権票も含む)を,投票権を持つ総個人会員数(棄権者も含む)で割った票数を持つ。(小数点2位以下切り捨て)
参考:一例として,ある投票時における団体会員の分類が
昨年度の春季大会の参加校数
25校以上 1団体
10校以上25校未満 1団体
10校未満 2団体
不明、または今年度新設 4団体
春季に大会を持たない団体 9団体
であり、個人会員の会員数が100人だった場合を考える。個人会員の票の割り当ては、(20 x 1 + 15 x 1 + 10 x 2+ 10 x 4 + 5 x 9) / 100 = 1.55よって一人あたり 1.5票となる。
4.各会員の票が確定後,最も多く得票したプロポジション案を推薦プロポジションとする。
各プロポ案の背景
第一案 犯罪報道とプライバシー
新年にはいってもマスコミをにぎわせている砒素入りカレー事件、また14歳の少年が小学生を殺害し犯行声明を出した酒鬼薔薇事件などは、犯罪報道と個人のプライバシーの問題を改めて浮き彫りにしました。特に酒鬼薔薇事件では、少年の顔写真を公開したり、また検事の調書が不明瞭な経緯で公表されたことに対して非難の声があがりました。また、東京電気OLが殺害された事件においては、事件そのものではなく被害者の女性のプライバシーが雑誌やTVのワイドショーで商品化されていったことに不快の念を抱いた方もいたことと思います。
本命題は、このような風潮を背景にして、政府がマスコミの犯罪報道に対して規制を行うことの是非を問うものです。肯定側は、個人のプライバシー保護を利益として主張できるでしょう。また否定側は、マスコミに対する威嚇効果により必要な報道がなされなくなること、また言論の自由の侵害などを弊害として指摘することができるでしょう。また、プライバシーそのものの線引きをどこで行うか、ということも議論になるでしょう。
第二案 北朝鮮との外交
亡命者の続出、食糧危機、内部の権力闘争、そして出口の見えない経済不振など、北朝鮮をめぐるニュースは暗いものばかりであり、崩壊の危機に面した北朝鮮が自暴自棄になって隣国を攻撃するかもしれない、という懸念は常に日本に付きまとっています。そんなおり、テポドンの威嚇発射は日本に衝撃を与えました。この事件を期に、TMDや偵察衛星を開発・装備して有事にそなえるべし、という論調も力を持ってきました。
しかし、やみくもに危機意識を煽り立てて対抗的な軍事力増大を行うことは、逆に相手への挑発となる危険もあります。また、東アジア情勢に不安定要因を持ち込むことにもなりかねません。
本命題は、このような状況において、北朝鮮に対して融和的な外交政策をとることの是非を問うものです。政策としては、援助や技術提携の申込、国交関係の樹立などがあげられるでしょう。想定される利益としては、北朝鮮との戦争のリスク低減、アジア地域の安定への貢献、また直接支援による北朝鮮の民衆の救済などが上げられるでしょう。想定される弊害としては、援助した物資が軍事増強に使われてしまうこと、またアメリカや韓国との関係悪化などがはいるでしょう。さらに、本当に北朝鮮側が友好的な外交に応じるのか、という解決性を論点として出すこともできるでしょう。
第三案 民主主義
現代の日本政府は,代議制に基づく間接的民主主義によって運営されています。しかし原発の是非,沖縄の基地問題など,国民的な関心の集中する事例では,間接的な参加方法だけではなく,国民の意見を政策に直接反映させる制度を導入したほうがよい,という議論がでてきました。
このプロポ案は,重要な議題に関して国民投票を行う制度の導入(レファレンダム制)と,日本の首相を国民の投票によって選ぶ首相公選制の二つを具体的な政策オプションとして用意し,直接民主制度と間接民主制度のどちらが望ましいかという,政治思想史でも重要な問題を取り上げます。
予想される肯定側の論点は,より良い政策決定,国民の政治意識の向上などが柱となるでしょう。首相公選制に関しては,政治的リーダーシップの発揮,任期を区切ることによる政権の安定化なども主張できるでしょう。否定側の論点としては,一貫性のない意思決定,代議制の崩壊などがあげられます。首相公選制は単なる人気投票に終わる,という議論も可能でしょう。また,直接投票による国民的熱狂は,ファシズムの契機となるなど負の側面を持つという議論もできるでしょう。
第四案 医者と患者の関係
医者と患者の関係は,古くて新しい問題です。現状において,患者が医者から十分な説明を聞き,納得した上で治療を受けているケースはそれほど多くないでしょう。患者が,医者の専門性を信頼して,治療方針の選択を委ねていることが大半です。しかし,このような医者/患者関係が,医療過誤や不必要な治療の温床となっている面も否定できません。医療サービスを受ける側にも,より積極的な関与が求められているといえます。
このプロポ案は,これらの問題に対して立法的な解決を行うことの是非を問うものです。予想される肯定側の論点は,ニーズに沿ったよりよい医療サービスの提供,不必要な治療の低減,患者の側の意識向上などがあげられるでしょう。また,また,立法による解決の利点として,確実な実行性,医事裁判に与える影響などがあげられるでしょう。
否定側の論点としては,医者に今まで以上の責任を負わせることで,医者が必要な治療においても消極的になる可能性,患者の反対による必要な治療プロセスの阻害,コストの増大などがあげられるでしょう。また,素人である患者がはたして医者と同等の立場で医学上の決断に加わることが現実的かどうか,また医者側が実際にどこまで協力的になるか,ということも論点になるでしょう。
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さいごに
プロポジション候補案を作成するにあたってご協力頂いた個人、団体の皆様に感謝します。推薦プロポジションの最終決定を会員投票に委ねることによって,より多くの声をプロポジションに反映させるという,この制度の趣旨が生かされるよう,是非とも御協力お願いします。
JDAプロポジション委員会
小野 剛(委員長) 鈴木 健 瀬能 和彦 青沼 智 臼井 直人
矢野 善郎 飯田 浩隆 安井 省侍郎