第6回J.D.A.春期ディベート大会(2000年)B部門決勝
速記録


「日本はすべての原子力発電を代替発電に切り替えるべきである」
アスパラドリンク vs. あひる鍋

編集:安藤 温敏(J.D.A.理事)

 
はじめに

本トランスクリプトは、2000年の第六回春季大会B部門決勝戦の記録である。論題は「日本はすべての原子力発電を代替発電に切り替えるべきである(切り替えは2020年までに行うこととする)」。2試合の予選を経て決勝戦に残ったのはアスパラドリンク(岐阜高校、五藤幹也氏、長良敏希氏、平野裕基氏)とあひる鍋(東海高校、金原洋一氏、辻貴宏氏、関真一郎氏)であった。決勝戦では、5人の審判の投票により、3-2で制したのは肯定側のアスパラドリンクであった。また、決勝戦の審査員(5名)の多数決によりベストディベーターとしてあひる鍋の関真一郎氏が選ばれた。

以下のトランスクリプトにおいては、ディベーターの話した内容を、明らかな間違いを除き、できるだけ忠実に再現している。また、試合において使用された証拠資料の検証は行っていないので、転用する際には、再度出典等調査の上、使用していただきたい。


肯定側立論
肯定側立論:五藤幹也 アスパラドリンク

定義をします。代替発電とは太陽光及び風力発電とします。
プランは5つです。
プラン1:2020年までに原子力発電所を順次撤廃します。
ブラン2:太陽光パネルと風力発電機の設置を進めます。
プラン3:その際かかる費用の半分を国が負担します。
プラン4:それに伴う費用は毎年原子力発電の研究と開発に使われるはずだった費用をあてます。
ブラン5:費用は初年度その四分の一を太陽光パネルの研究開発に当て,残りを設備投資に当てます。二年目からはすべて設備投資に当てます。
プランを導入した際に生じるメリットを1点述べます。

メリット 国民の安全確保
発生過程は3つです。

発生過程1 人災による事故が無くなるから
人災は必ず起こります。人は完全ではなく,よくミスを犯すというのは今までの歴史が証明してくれるところです。そして,どんなに優れた機械であろうとも,人が間違いを犯せば事故を起こしてしまうのです。資料を引用します。97年発行,元科学技術庁原子力局長村田浩著『著者に贈る原子力の話』より。引用開始。「事故というのは設備や装置が安全上いかに慎重に設計され製作されていても,それを取り扱う人間の側で間違いを犯せば,やはり,事故の発生は防ぎきれない。」引用終了。しかし,原子力発電所が無くなれば当然それに伴う人災も発生しません。よってメリットは発生します。
 発生過程2 地震による事故がなくなるから
ご存じのように日本は世界有数の地震大国であり,活断層のあるなしに関わらず全国いたるところで地震が発生してきました。しかし,そんな日本の原子力発電所は地震に非常に弱いのです。以下,そのことをA,Bに分けて立証します。

A 耐震設計が不十分
 日本の原発は起こり得るはずがないほど大規模な地震にも耐えられるように作られていると国は言ってきました。しかしこれが間違いであるということが先の阪神大震災で証明されてしまいました。原子炉が耐えられる最大の地震よりも遥かに大きな地震が起こったのです。資料中の数値を引用します。ちなみに,資料中のカインとは地震の破壊力を表す単位であり,ガルという単位よりも建物の耐震強度をより正確に表すことができます。97年発行茨城大学名誉教授藤井陽一郎編,『地震と原子力発電所』の中の表によりますと,敦賀2号機が耐えられるのは最大37カイン,もんじゅが22.8カイン,阪神大震災で岩盤上で観測されたデータは,南北方向55.1カイン,東西方向31カインでした。引用終了。一般に,揺れの大きさはベクトル和として計算できますから,計算しますと水平方向だけで63.2カインもの揺れが生じたこととなります。上下方向も考えると,耐えられる地震のなんと二倍強もの強さの地震が起こってしまっているのです。この様に,原子力発電所に地震が直撃した場合原子炉は耐えられないのです。

B 活断層の上に建てられている
活断層は地震を引き起こす原因となります。ただでさえ日本は大地震が多く,活断層のないところでも地震が起こったりするのに,活断層があれば地震が直撃する確立は飛躍的に高まってしまいます。先ほどの『地震と原子力発電所』より引用開始。「東京電力の設置許可申請書でも柏崎,刈羽原発の原子炉直下に…中略…断層が存在することが認められている。」引用終了。もう一つ資料を引用します。89年発行,原発問題に詳しいジャーナリスト広瀬隆著『原発が止まった日』より引用開始。「六ヶ所村の近傍には,陸域にも海域にも明瞭な活断層群があります。」引用終了。このように大変な危険な状態にあるのです。以上により,原子力発電所は地震に耐えることができないうえに,活断層の近くに設置されていて大変危険であると言うことがわかりました。
原子力発電所がなくなれば当然A,Bは解消され,メリットが発生します。

発生過程3 放射性廃棄物の増加が防止されるから
原子力発電所は大量の核廃棄物,すなわち原爆で言う死の灰を出しながら運転されています。そして,その死の灰は私たちの生活を脅かすことになるのです。資料を2つ引用します。先ほどの『原発が止まった日』より引用開始。「原発一基で広島原爆1000発分。今現在の規模で20年運転すれば,広島原爆の50万発分に匹敵する,想像を絶する死の灰が,日本国内だけで生まれてしまうのです。」引用終了。同じ資料のもう一箇所から引用します。なお,資料中のバリアとは,ドラム缶やコンクリートなどの人工バリアと,地層などの天然バリアのことです。引用開始。「実験データが出そろうにつれ,バリアの健全性に疑いがもたれるようになりました。…中略…放射性物質が地下水にとけ出すのは防ぎようがありません。…中略…推進派でさえ地下水汚染のおそれを認めないわけにはいかなくなりました。」引用終了。原発を止めれば当然核廃棄物はこれ以上増加していくことはなくなりメリットが発生します。
このメリットの重要性を2点述べます。

 重要性1 国民を核の危険から守る
 原子力発電所が事故を起こした場合,そのダメージははかりしれません。資料を引用します。93年発行,反原発新聞編集者西尾漠著『脱!プルトニウム社会』より引用開始。「もし大事故が起これば,最終的には,少なくとも数千人を上回る早期の死者,数十万人規模の被爆者をもたらし,その後も長寿命放射能による汚染の被害が続くであろう」引用終了。もう一つ資料を引用します。先ほどの『原発が止まった日』より引用開始。「どんなに浴びた線量が低くても,将来ガンになる危険は高くなる。」引用終了。このように,発電所が事故を起こしたときに出たり,核廃棄物から漏れたりする放射能は呼吸や食べ物を通じて私たちを蝕んでいきます。さらに放射能により遺伝子につけられた傷は子孫にまで悪影響を与えてしまうのです。この様な危険や恐怖から日本国民やその子孫を守るこのメリットは非常に重要です。

重要性2 子孫の負担を減らすことができる…[時間切れ]



質疑応答
否定側質疑

否定側:はい,それでは否定側質疑を始めます,よろしくお願いします。
肯定側:よろしくお願いします。
否:はい,まずメリット1の発生過程1点目の証拠資料についてですが,この村田さんというのは何者ですか?
肯:村田さん,ですから元科学技術庁の…
否:はい,分かりました,結構です。次にいきます。安全上いかに設計されていても,というような話がありましたよね。
肯:どこでしょうか?
否:メリット1の発生過程1です。
肯:あ,はい。
否:安全上しっかり設計されていたら普通は事故が起こらないと考えるのが普通ですよね。なのに何でそれでも事故が起こるということを,この人は根拠を挙げて言っていますか?
肯:えーとですね。
否:この人はただ人間のミスがつながると言うことは言っていますが,そのことに関する根拠はありませんよね?
肯:例えば,
否:はい。
肯:先の東海村の事故にもあるように…
否:はい。
肯:マニュアルは作成されていたにも関わらず…
否:はい。
肯:手のつけられない状況に…
否:はい,分かりました。これは設備ではなくてマニュアルとかそういうことに関することですね?
肯:いや,ですからそれも含めて…
否:はい,分かりました。
否:それじゃ,メリット1の発生過程2にいきます。まず,Aの耐震性とBの活断層についてですが,Bはあくまでも地震が起こるという立証なのでこれはAを補強するものとして考えてよいでしょうか?Bは地震が起こることの立証で,Aは実際に建物が壊れて放射能が漏れるという立証ですよね?ですから,これは1つということで,よろしいでしょうか?
肯:少々お待ちを。
否:まあ,いいです。結構です。はい,次,3点目廃棄物行きます。廃棄物なんですが,原発1基で1000万,何でしたっけ?原発1基で広島原発の1000発分漏れるだとか50万発生まれるのだとか言ってましたが,
肯:はい。
否:この放射性廃棄物が一体どれくらい,放射性廃棄物に関する直接の重要性は言われていませんでしたよね?重要性の中で述べられいたのは事故が起こったらこれだけの被害が起きるよということはおっしゃていましたが,廃棄物が漏れたらこれだけの深刻なことがおきるよということはメリットの重要性では述べていらっしゃいませんよね?
肯:(沈黙)
否:いらっしゃいませんよね?原発事故の重要性は述べていられますが,廃棄物の重要性は述べていませんよね?
肯:ですから,この重要性1の中で言ったのは,
否:はい。
肯:結局核廃棄物,ですよね。
否:はい。
肯:その場合の放射能が
否:はい。
肯:私たちを,呼吸や食べ物を通じて私たちを蝕み,
否:ん?
肯:ん?
否:それは原発事故じゃないんですか?
肯:あ。
否:原発事故の重要性は証明されていましたが,この廃棄物,核廃棄物の深刻性は,
肯:いや,ですから,この重要性の中でちゃんと核廃棄物から漏れたりする放射能は呼吸や食べ物を通じて私たちを…
否:あ,はい,分かりました。それはどのくらい深刻なものなのかっていうことは述べられていませんね?具体的にその広島原発50発分が何人に被害を与えて,どの位の被害を与えるのかということまでは,言及されていらっしゃりませんよね。
肯:ですから,広島原爆で被害をこうむった人が約10万人ですよね?
否:はい。
肯:ですからその,単純計算しなくても,
否:あ,はい,結構です。
肯:はい。
否:それじゃ,そうですね,何にしましょう?じゃ,発生過程の2に行きます。37カインだとか,22.8カインだとかおっしゃいましたが,これはあくまでも建物の耐震設計ですよね?これは原子炉の耐震設計ではありませんよね?建物が壊れるということは立論の中ではおっしゃっていましたが…[時間切れ]あ,じゃ,すみません。


否定側立論
否定側立論:金原洋一 あひる鍋

では始めます。定義は肯定側に従い,現状維持でプランは,デメリットは2点です。

デメリット1は停電,停電です。
 まず現状分析です。電力需要が伸びつづけている今,電力にはほとんど余裕がありません。『脱原子力社会の選択』東北大教授長谷川公一氏の文章より資料を引用します。引用開始。「94年8月,…中略…8電力会社は余力のほとんどない状態に陥った。特に東京電力は供給予備率2%という綱渡り状態だった。…中略…もう一度90年,94年のような猛暑に襲われれば電力需要が供給能力をオーバーしてしまう。」引用終了。こうやって試算によると現状のままでも将来に電力不足が起こります。97年発行『日本の原子力発電,ここが論点』GTルネッサンス編より資料を引用します。引用開始。「国の総合エネルギー調査会のエネルギー需要見通しによると今後も予想されるエネルギー需要に対して供給が追いつかない。」引用終了。よって電力供給は危機的な状況です。さらに現在危機的な状況なのです。
それでは発生過程に移ります。発生過程は1点です。

発生過程1点目は発電能力の不足,発電能力の不足です。
 97年で全て原発の出力は4100万キロワットで,資源エネルギー庁によれば,2010年ではこれが7050万キロワットになる予定で2020年にはさらに増えます。肯定側のプランだと7000万キロワット分を太陽光と風力でまかなわなければなりません。しかし,風力発電ではこれらをまかなうことは出来ません。『政治経済資料1999』東京法令出版編より証拠資料を引用します。引用開始。「風力発電は日本では,…中略…適地を最大に利用すれば,…中略…100万キロワットに達する計算」引用終了。加えて,太陽光発電でも無理です。太陽光に用いるソーラーパネルは主に建物の屋根に設置して用いることになりますが,日本の全ての屋根にこれを取り付けてもわずかな量しか発電できません。『二匹目のデンキウナギ』電力中央研究所編より証拠資料を引用します。引用開始。「長期的には一般家庭や工場,公共施設の屋根に設置する分散型システムが普及するものと考えられています。この場合全ての建物の屋根スペースから試算すると,…中略…全国で約700万キロワットの電力が得られる。」引用終了。以上のようにこれらの発電を全て最大限利用したとしても700万キロワットプラス100万キロワットで800万キロワット,原発の7000万キロワットに比べて総発電量の25%,日本の総発電量の25%に達するということで電力のほとんどない状況下においてきわめて深刻な停電につながってしまいます。よって電力が不足して,停電へとつながります。

発生過程2点目を述べます。発生過程2点目は電力供給の不安定化です。
 太陽光発電や風力発電は気象条件などに左右されるため安定性に問題があります。『講座現代エネルギー環境編』エネルギー教育委員会編より資料を引用します。引用開始。「間欠的なエネルギー源である自然エネルギーの電力供給は全て自然任せである。もし需要が必要なときに電気が供給されなければ,発電設備としての価値がなくなる。」引用終了。同資料によれば1年でどれだけの時間発電できたかを示す稼働率は太陽光が25%,風力発電が15%,原子力発電の80%に比べてきわめて不安定な電力供給であることが分かります。よって電力供給の不安定化は停電を多発させることになります。

深刻性に移ります。深刻性は2点で,1点目,産業の衰退です。
 電力供給が安定しないことは国にとって致命的で,仮に昼間に18時間の停電が発生すると,これは年間総労働時間の1%で,単純計算でGDPの1%,つまり5兆円もの損害になってしまいます。実際に停電がこの程度ですむはずがないため,毎年数十兆円規模の打撃になります。

深刻性2点目,国民健康への影響です。
 国民の健康への影響です。停電の発生は医療での治療を妨害し患者の健康を著しく損ねます。また夏の昼間の停電の多発により全てのクーラーが停止し,高齢者の熱射病,日射病が増えます。96年現在,65歳以上の一人暮らしをしている老人世帯数は236万世帯です。仮に日本の家庭の1%で停電が起きたとしたら,2万人もの老人が衰弱死の危険にさらされてしまいます。加えて冷蔵,冷凍設備も停止するため食品衛生上の信頼度も低下します。

では,デメリットの2点目です。デメリットの2点目は膨大なコスト,膨大なコストです。
 発生過程です。発生過程は1点。デメリット1,発生過程でも述べたように原発を廃止したらその7000万キロワット分の電力を太陽光,水力発電で補わなければなりませんが,その場合の1キロワットあたりの発電所建設費用は太陽光発電では,証拠資料を引用すると電力中央研究所編,『2匹目のデンキウナギ』によると120万円,1キロあたり約120万円です。よって7000万キロワット分の発電所を建設するには120万かける7000万,つまり84兆円です。84兆円の費用がかかってしまいます。

 次に深刻性に移ります。国家予算より多いこの膨大な建設費は電気料金を通じてそのまま国民の負担として降りかかってしまいます。電気料金や税金などを通じて国民の負担になってしまいます。これは産業界や国民生活に大きな大きな影響を及ぼし,非常な深刻なデメリットとなります。

では,ラベルを確認した後にまとめていきたいと思います。デメリット1は停電が発生する,停電が発生する。これによって起こる深刻性としては老人が衰弱死の危険にさらされるということや,冷蔵冷凍設備の停止,医療現場での適切な医療の妨害,後は産業の衰退ですね。以上で終わります,ありがとうございます。


質疑応答

肯定側質疑

肯:それではこれから肯定側の質疑を始めさせていただきます。よろしくお願いします。まずデメリット1の現状分析のほうで,
否:はい。
肯:供給が追いつかないと。
否:はい,供給が追いつきません。
肯:その中の著者名の中でGTルネッサンスと,
否:はい,グレートテクノルネッサンスの略でGTルネッサンスです。
肯:はい,この方は外人ですよね。
否:これはグループなんですね。グループで,
肯:海外のグループですよね。
否:だからそういう…
肯:日本国内に存在するグループなんですか?
否:詳しいことは分かりませんが,グループテクノルネッサンスという…
肯:そうすると,外国の話はあくまで外国の話で,日本の現状とはまた違った…
否:タイトルを確認してください。『日本の原子力ここが論点』です。日本のことです,これは明らかに…
肯:ありがとうございました。
否:グループテクノルネッサンスというのは国の原子力委員会のことで…
肯:いいですか?
否:はい。
肯:発生過程,デメリット1の発生過程の1で,
否:はい。
肯:エビデンスの中で7000万キロワットが増加すると。
否:はい,国の…
肯:そうですよね。
否:資源エネルギー庁によれば。はい。
肯:これはあくまでも仮定であり,またいつこの7000万キロワットに増大するんですか?
否:資源エネルギー庁によれば,2010年には…
肯:2010年ですね。
否:原発の出力は7050万キロワットです。
肯:はい,次,発生過程2,デメリット1の発生過程2で,自然エネルギーは供給が不安定だといいつつも,
否:はい。
肯:稼働率は合わせて25%。
否:原子力発電の25%。
肯:自然エネルギーですよ。
否:ごめんなさい,ごめんなさい。
肯:[不明]ですね。
否:25%というのはですね,
肯:ですね?イエスかノーで。
否:だから,太陽光発電が25%で,風力発電が15%で,
肯:つまりそれだけ,供給不安定といいつつも,エネルギーはかなり…
否:しかし原子力発電というのは80%なんですよ。だからそれに比べて25%というのはかなり低い数字であるということを言ったまでです。
肯:でも,ちゃんと供給はできると。
否:25%,稼働率は25%なので,
肯:供給は出来ますね。
否:供給できると思ってて出来なかったことがあって,それが停電につながると僕らはいったんです。
肯:どうもありがとうございます。つぎ,深刻性の2,国民に影響があると
否:はい。
肯:いうことで,仮定に18時間今,これは18時間停電したとすると,と仮定されましたよね。あくまで,本当に18時間も停電するんですか?
否:だから,発生過程で申しましたように,停電が電力供給の不安定化や…
肯:その論拠はどこにあるんですか?18時間も停電するという。
否:少なく見積もっても18時間なんですよ。
肯:どこからそれは出てきたんですか?
否:これは…
肯:資料ありますか?
否:資料は今手元には…
肯:ないですね。
否:今すぐには出せません。
肯:あと,深刻性2の中で,病院で緊急治療が行われなくなると…
否:はい。
肯:でも,今の病院のほとんどが,というか90何パーセントが自家発電設備を持ってますよね。
否:自家発電があったとしても,それに切り替わるまで多少の時間は考えられるわけですよ。
肯:すぐに切り替わるということですね。
否:それは肯定側が立証してください。
肯:次ですね,[時間切れ]
否:ありがとうございました。
肯:ありがとうございました。

否定側第一反駁

否定側第1反駁:辻貴宏 あひる鍋

はい,それでは否定側第一反駁を開始いたします。まず,メリット1の発生過程の1点目。肯定側は事故が起きれば放射能漏れが起こるような言い方をしていますがそれは正しくありません。なぜなら,日本の原発の安全基準は厳しく,仮に事故が起こったとしても放射能が外に漏れないようになっているのです。証拠資料を引用します。95年発行,三菱重工原子力事業本部編,『素顔の原子力発電』より。引用開始。「日本の原子炉では燃料集合体を厚さ20センチの鋼鉄製の圧力容器に入れ,原子炉全体を厚さ4センチに近い鋼鉄製の格納容器で覆い,さらにその周りを厚さ1メートルの鉄筋コンクリートの原子力建屋で建っています。したがってたとえ炉心が大きく損傷しても,チェルノブイリ原子炉のように放射能が環境にどんどん放出されあちこちに降り注ぐというようなことにはなりません。」引用終了。このように日本の原発の場合,百歩譲って事故が起こるとしても,放射能漏れが起こらないのです。よってメリットは発生しません。

続きまして2点目,先ほど肯定側は地震の発生によって建物が破壊され大規模な原子炉事故に発展するとおっしゃっていましたが,そのようなことはございません。なぜなら建物は破壊されるかもしれませんが,原子炉は入念な耐震設計によって地震のときは緊急停止できるようになっているのです。資料を引用します。95年発行,三菱重工原子力事業本部編,『素顔の原子力発電』より。引用開始。「関東大震災をも上回る,…中略…そのような地震がきても発電所の構造物や機器の振動状態は(断線)範囲内にあって地震が終われば元に戻るという安全上十分余裕のある耐震設計をしています。…中略…万一発電所の構造物や機器のある部分が(断線)範囲を超えて永久変形を生ずることがあっても,その機能は維持でき,制御棒が動かなくなったりしないで,確実に挿入されて原子炉が安全停止するように入念な耐震設計を行っています。またさらに,安全上重要な設備が設置される構造物には建築基準法が定める3倍の数値に対しても安全性が保たれるように設計しています。」引用終了。このように,地震が起きても原子力発電所は安全に運転を停止することが出来,放射能漏れを起こしません。ゆえにメリットは発生しません。肯定側がおっしゃっているのはあくまでも建物だということをご確認ください。

続きまして3点目。処分場でも廃棄物が漏れるというようなことをおっしゃっていましたが,その資料は何年のものか分かりませんが,私たちは99年発行の資料でそういうものをちゃんとできるという技術が確立していることを立証いたします。99年発行,理学博士,村主進の文章より引用開始。ガラス固化体[不明]のオーバーパックで放射能レベルが十分に低くなるまでの間,地下水とガラス固化体とが直接接触することを防ぐことが出来る。ベントナイトはオーバーパックの周囲にめぐらされた粘土質のものである。ベントナイトは地下水が染み込むと膨張して地下水の浸入を抑制する働きばかりでなく物質をよく吸着するので放射性物質が移動するのを抑制することが出来る。」引用終了。このように現在の技術で十分カバーできるものでありますのでメリットは発生しません。

続きまして4点目。このような廃棄物が漏れたとしても大した物ではありません。資料を引用します。ルポライター,広瀬隆著の文章です。引用開始。「一方,放射性廃棄物に関しては,…中略…放射性物質による公衆の被爆線量等量は石炭と余り変わらず,資源放射線量によるものの1%以下である。」引用終了。このように自然放射線量の1%。今普通に私たちの被爆している量の1%に過ぎないのです。ですからそれほど放射能が漏れたといっても大したことはありません。ですので,このメリットは発生しません。

続きまして5点目。以上4点の反駁により原子力発電所の運転によってトラブルなどが発生し放射能漏れ事故が起きて人々に被害をもたらす,あるいは放射能が色々なところで染み渡って私たちに被害をもたらす確立は非常に小さいのです。実際にどの程度の確率なのか資料を用いて説明します。Dマイヤーズ3世著,『米国の原子力発電論争』より引用します。引用開始。「重大事故が起こって十人以上が死亡する可能性は300万(原子炉)年に一度である。最も重大な事故,つまり10億(原子炉)年に一度の事故では3300人が死亡し,4万5000人に晩発性のガンを引き起こす。100の原子力発電所が大衆にもたらす死亡の危険は,ハリケーンや竜巻,あるいは隕石の落下に比べてさえ少ない。」引用終了。このように隕石の落下よりも安全なのです。隕石が落下するかもしれないから買い物に行くのは止めよう,という人がいるでしょうか?いませんよね。つまり,原子力が人々に及ぼすリスクとはその程度のものなのです。その程度のリスクで原子力発電所を廃止せよ,というのはあまりにも極論であります。

続きまして6点目,反駁したいと思います。メリット1の発生過程2についてです。先ほど肯定側は地震が起きればメルトダウンのようなものが起きるとおっしゃっていましたが…[時間切れ]すみません,これで終わります。


肯定側第一反駁
肯定側第1反駁:長良敏希 アスパラドリンク

はい,それでは肯定側第一反駁を開始いたします。それではデメリットに関する議論からいきましょう。デメリット1の発生過程1に関して,発電能力が不足してしまうと述べられていましたが,われわれのプランを実際に導入した場合どのようなくらい発電できるのか,われわれの試算をここで証明したいと思います。まず,風力発電について。風力発電は600キロワットの発電機の導入が可能です。これは否定側によると稼働率は15%,日本の朝日新聞によると日本の7分の1の5万平方キロメートルにその設置が可能ですので,それでそうするとその600キロワットのものは1平方キロメートルに10機置くことが可能です。そうすると,それで計算してみますと全部で4500万キロワット。次に太陽光で計算してみましょう。太陽光のほうは3キロワットのを導入して,稼働率は25%ですね。全国の4000万世帯にそれを導入すると計算しますと全部掛け算して,3000万キロワット,足して7500万キロワットが導入可能です。つまり,これはまったく発生いたしません。そもそも2010年の原子力の発電予想を出しているので現在では4100万でしたか,全然不足はまったくいたしません。これは停電が起こらないことがこれで立証できました。

次,発生過程の2に行きましょう。不安定化するということでしたね。不安定化するということでしたが全て自然任せだと。これについても今言ったことで明らかなように十分発電は可能です。またわれわれのプランがいわなくても常識として揚水発電やそういうのは作るわけですからその昼間に作った,太陽光で言えば,昼間に作った,余った電力を揚水発電などで保管しておけば停電などは起こることはありえません。よってこれも成立いたしません。

次,深刻性の1にいきましょう。産業の衰退ということで18時間起こればGDPに5兆円の損害を与える。さて18時間どこから出てきたんでしょう,まったく分かりませんね。どこから18時間って,まったくそもそも,まずそもそも停電いたしませんからこんなことは起こりませんし。そもそも18時間なんなのか分かりません。よってこれも成立いたしません。

深刻性の2点目,天候への妨害ということでしたが,そもそもこの病院は先ほど聞いたように緊急の発電装置があるのです。これも大丈夫です。

次,デメリット2にいきましょう。膨大なコストですね。膨大なコスト,太陽光について導入すると84兆円かかってしまう,これについて証拠資料を挙げて技術革新があれば大丈夫ということを証拠資料を挙げて説明したいと思います。『原子炉を眠らせ太陽を呼び覚ませ』森永晴彦,元ミュンヘン工科大教授,97年より引用開始。「今政府が5000億円の補助をしてくれれば,産業界は家庭用の太陽光発電を採算の取れるものに出来るのだそうである。」引用終了。採算の取れるものというのは1キロワットあたりの発電容量を作るのに22.5万円。原子力は31万円です。むしろ原子力より安いものが作れてしまうんです。これはわれわれのプランに即した4分の1のお金,つまり5000億円を設備開発に当てるんですからこれは十分発生いたします。よってこれもデメリット2も発生いたしません。

メリットの議論に移りましょう。メリットの1,発生過程1に対して,人災のところで,日本の原子炉はたくさん丈夫に作ったので大丈夫だということでしたが,これはスリーマイル島の例を見てみれば明らかです。スリーマイル島の原子炉というのは,すぐそばに軍の飛行場がありまして,特別丈夫に作ってありました。特別丈夫に作ってあったにも関わらず,起きてしまったんです。そのような技術過信というのは色々ありますが,そういうことを無視すれば,必ず人というのはミスを犯すものです。ミスを犯してしまった場合,バケツで撹拌するとかそういうことをしてしまうんです。予想不可能なんです,そんな,人間のミスというのは予想不可能でしかも必ず起きるもの。つまりこれは反駁としてまったく成立していません。次,地震のところですね。あ,やめましょう。

最後に反駁されていた300万年に1回だということでしたが,これについてはこの資料というのはそもそもその自然に事故って爆発する確率しか証明してません。地震による確率を立証したいと思います。茨城大学教授,藤井陽一郎編,『地震と原子力発電所』によりますと,これを日本の例に当てはめて計算しますと148年に1回原子炉がチェルノブイリ級の爆発を起こします。これはどういう計算をしたかというとアメリカの(サリー炉)という原子炉がありましてその原子炉を…[時間切れ]ありがとうございました。


否定側第二反駁
否定側第2反駁:関真一郎 あひる鍋

はい,これより否定側第2反駁を開始いたします。よろしくお願いいたします。まず,否定側立論に対して,そういう議論から言っていきたいと思います。

まず肯定側第一反駁で否定側の電力の不足に対して自分たちで計算をなされて7500万キロワットがまかなえるといっておられました。しかしこれはあくまでもあなた方の計算ですよね。私たちが出した資料っていうのは出典は,先ほどは言わなかったんですけども,この計算というのは新エネルギー産業技術総合開発機構という立派な国の機関が計算した結果こういう結果になったわけです。したがってあなた方の言っている計算とは信憑性が比べ物にならないわけで,しかもこの7500万というのはあなた方が最大限に国土を利用した場合そういう発電力になるんですよね。したがって実際にはこれほどの発電が出来るとは思えませんし,不可能といえます。

次に2点目の不安定化についてですけれども,揚水発電が出来ればオッケーと,そういうことを言われていましたけど,そもそも電力が余っていないわけですから揚水発電でためようが不可能です。

次に深刻性に移ります。まず産業の衰退についてはまったく反駁がありませんので通ったものといたします。次に健康への影響ですけれども,まず病院にはなんか自己発電機があるから大丈夫とか言っていましたけども,私たちが言っていた日射病について2万人のお年よりが危険にされされるとか,そういうことについてはまったく反駁がなされていませんでした。したがってこのデメリット1点目は丸々通ったものと考えます。

次,2点目。コストについてですけども,私たちが言っているのは新しく発電所を作らなければならないと。そのために84兆いるといっているわけで,現在の原子力と比較してどうこうとかそういう問題ではありません。この点をご確認ください。

続いて肯定側の議論に参りたいと思います。まずメリットですけれども,安全確保と,そういうことを言っておられましたけど,まず最初にあげられていたスリーマイル島の事故ですけども,これは放射能漏れは1ミリシーベルト以下。レントゲンが4ミリシーベルト。普段放射線の被曝を浴びますので,つまりレントゲンの4分の1の被曝量しかなかったんですね,スリーマイルって言うのは。したがってこれは深刻な事故の例としてはまったく考えられませんし,仮に深刻な事故の例としてそれを挙げられているのは,それだけ放射線災害はちっさいということが出来るでしょう。

続いて人災による事故ですけど,まずそもそも立論中でこれは事故の発生は防ぎきれないとか言っていましたけど,これは放射能が漏れるという段階まではまったく立証がなされていません。またこれも根拠のない発言でしたので私たちの原子炉の構造は非常に精密なものだという反駁でつぶれているものだと考えます。

次,2点目,地震による事故ですけども,私たちが言ったようにまず壊れるといっていたのは建築物のみが壊れるのであって炉心はもっと頑丈な設計をしているのです。資料でも挙げましたように,炉心は永久変形を生じたとしても放射線を外に漏らすことはなくこれらの災害を防ぐと,そういうふうに資料で言ってるわけですから,これも通りません。したがって発生過程2点目も消滅いたしました。

続いて発生過程3点目,放射性廃棄物についてですけども,まず証拠資料を挙げてやはりこれも地下水と接触するのを防ぐことが可能と。そういうことを挙げまして,それに対しての反駁がありませんでした。したがって,これも通ったものとみなします。

次に重要性についてですけども,まず放射性廃棄物についての重要性はありませんでした。次に核の事故の危険ですけど,私たちが証拠資料を挙げて説明したようにそれによる事故の危険性は隕石が降ってくる確率よりも小さいと。それほど小さいものだったわけです。したがってこのメリットは発生過程もなければ,重要性もないと。そういう非常に小さなものであるといえます。

それでは価値の比較に移りたいと思います。まずメリットの1点目,安全確保とデメリットの1点目について比較したいんですけども,これについて私たちのデメリットの優位性を4点挙げたいと思います。1点目,まず持続的にこのデメリットが発生するということです。2点目,全国民にこの被害が及ぶということです。3点目,死者が出ると,その死者の数というのもお年寄りが非常にたくさんの人数死ぬと。4点目,必ず起こる。確率はともかく,絶対に起こるということです。この4点によって…[時間切れ]私たちのデメリットのほうが優位であるといえます。


肯定側第二反駁

肯定側第2反駁:平野裕基 アスパラドリンク

それではこれから肯定側第2反駁を始めます。よろしくお願いします。まず否定側の立論から見てください。今までの議論総括していきたいと思います。

まずデメリット1,停電ですね。先ほど私たちは肯定側第一反駁でわれわれの計算を出しました。それに対して否定側第2反駁は,全て肯定側の計算であり新エネルギー産業機構が計算したほうが偉いんだとおっしゃっておられました。では資料を見てみましょう。風力発電,全ての手口を使って,…中略…600万キロワット。中略だけに何があったんでしょう。途中計算すっとんでますね。下の太陽光も一緒です。ここで考えてほしいのは,われわれの計算にどこか不備な点があったかということです。われわれの計算は否定側の与えられた数値を使って適切に計算したものであって,途中計算のないこんな新エネルギー産業機構などの試算よりも遥かに優れているといえます。そもそも否定側が与えた稼働率とかを使ってやったんですからこれは否定側も認めている数字なんですね。はい,次いきましょう。これによってデメリット1の発生過程は全然発生しません。数十年先までも7050万キロワットということで余裕がある電力が確保できます。メリットですね,電力の安定供給になっちゃいますから,これは。

発生過程2,電力の供給が不安定になる,波が出来るということで,要するにこの波を平らにするのが揚水発電とかであって,余ってないとだめという反駁がなされていましたが,われわれの言ったように余っているのですからこれはちゃんと安定します。

続いて深刻性1で,われわれが肯定側第一反駁で18時間の根拠がどこにも述べられていない,よってこのやつは何も立証していないと言ったところ,何も反駁がなかったのでこれはそのまま通ったものとみなして深刻性1は全然考えられません。深刻性2でお年寄りが日射病でパタパタ倒れていくということでしたが,これも電力があまり余っているのでお年よりたちはより楽にクーラーを使うことができ,お年よりたちはより健康になるためメリットが発生します。

デメリット2,膨大なコスト。これで私たちは資料を用いて技術革新があって,原子力より安くなるんだと言いました。それに対して否定側は現在と比較してどうこう言うんじゃなくて新たに作るということでした。われわれのプランをよく見てください。これから原発作るのに使っていくはずのお金をこっちに当てるといっているわけです。原発より安いんですから,その分差額分で逆にお金が余るわけですね。よってここでも利益が生じるというメリットが発生します。

続いて肯定側の議論に移っていきましょう。肯定側のメリット,発生過程1,ヒューマンエラーが起こる。これに対して安全基準が厳しく,例え炉心が融解してもチェルノブイリのように外見が吹っ飛ぶことはないということが資料で述べられていました。それに対してわれわれ肯定側第一もスリーマイル島では炉心融解したあと,下のほうまで解けていったじゃないか,外見が丈夫でも解けていくんだというような反駁をしてさらに技術の過信が起こったりしても,バケツで撹拌しているようでは外見がいくら丈夫でも駄目なんだという反駁をしました。それに対して否定側第2反駁で,放射能漏れはスリーマイル島事件ではほとんどなかったということでしたが,このバケツで撹拌する東海村の(理由)については何も述べられてません。そもそも六ヶ所村とかそういうとこの再処理施設というのは,外見を否定側が言うように,そう頑丈には作ってないわけですから,仮に原子炉でヒューマンエラーが発生しなかったとしても,再処理工場等でヒューマンエラーが発生し,人命が失われる羽目になってしまいます。

続いて発生過程2,地震による事故が無くなる。これは確率の計算ですね。確率勝負です。否定側が出した資料は米国なんちゃらかんちゃらの資料で300原子炉年に一回ですか,これは隕石の直撃ぐらいだと。それに対してわれわれは地震の数値を含めたものとして148年に1回起こるんだと。否定側の,地震を含んでいる,肯定側,地震を含んでいない。もとい,肯定側,地震を含んでいる。否定側,地震を含んでいない。地震の理論ですから当然地震を含んでいるほうの資料が有利ですから,148年に1回起こるわけです。確実に起こりますね。このように発生過程3で,否定側は多少ながらも,1%ぐらい漏れるということをおっしゃっていました。ちょっとでも漏れればガンの確立は1%上がるんですから…[時間切れ]はい,どうもありがとうございました。[拍手]



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