第7回JDA春期大会
B部門決勝
速記録
 


二〇〇一年三月一〇日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて、第七回JDA春季ディベート大会が開催された。この大会では、参加者はA部門(二〇〇一年前期JDA推薦プロポジション使用)とB部門(二〇〇一年第六回ディベート甲子園高校生の部論題使用)に分かれ、それぞれ三試合の予選を行ったあと、上位二チームによる決勝戦を行った。本トランスクリプトは、このうちB部門の決勝戦の模様を収録したものである。

B部門の論題は「日本は道州制を導入すべきである。是か非か。」、決勝戦に進出したチームは、肯定側がオンディーズ(村瀬公胤、名越幸生)、否定側が専修ファルコンズ(中山和巳、太田昌宏)。

この試合の審査員は、矢野善郎氏(東京大学)、井上奈良彦氏(九州大学)、田村洋一氏(トランスコスモス)、築田周一氏(女子聖学院高校)、別所栄吾氏(社会経済生産性本部)の五名。審査員による投票の結果、オンディーズが優勝した。また、この試合における最優秀ディベーターとして、村瀬公胤氏が選出された。

トランスクリプトは、ビデオテープによる録画・録音をもとに、各ディベーターの喋った内容を、明らかな間違いを除き極力そのまま記載している。なお、使用された証拠資料に関して、検証は一切行っていないので、ここから証拠資料を採取したい方は、ご自分で調査・確認の上、使用していただきたい。

肯定側第一立論
村瀬公胤 オンディーズ

では、これから、肯定側の立論を始めたいと思います。よろしくお願いします。
はじめに定義を述べます。
道州制とは、全国に置かれた7〜11程度の道または州に、外交・防衛・通貨以外の権限の大部分を国から移行する制度とします。ただし、現在の東京都と神奈川・埼玉・千葉県の一部は東京府とします。
プランは4点です。
プラン1。現行の都道府県制度を廃止し、道または州を設置します。その際、国からの権限移行に伴って、必要な行政組織は再編成し、重複する行政機関は統廃合を行います。
プラン2。所得税、法人税、相続税などの所得と資産に関わる税はすべて国税とします。また、現行の消費税を含めて消費に関わる税は全て地方税とします。このとき、消費税の税率は当面5%とします。ただし、東京府のみは特別に国税と共同にして税率を6%とし、うち1%ぶんを国税とします。その他の地方税については、現行維持とします。
プラン3。地方交付税の交付は廃止します。
プラン4。国は外交・防衛・通貨に関する事業以外では、教育に関する事業と通信インフラの整備に関する事業を行うものとします。
メリットは2つあります。
まず、メリット1は、「財政の健全化」です。
メリット1の重要性として、現状の問題点について指摘しておきます。総務省によれば、現在の税制と財政は歪んでいると指摘されています。国税として徴収しながら地方で歳出するというおかしな事態が発生しているのです。総務省のデータによれば、国と地方の比率は、歳入の時には59:41、国の方が多いのですが、歳出の時には37:63と、大幅に地方に移行した上で、歳出しています。このような、ひっくり返った歪みのために、現在次の三つの問題が生じています。
問題1。税の入り口と出口が直結していないために、税とサービスに関する納税者の意識が低く、税の使い道に関してのチェックが厳しくありません。結果、国や自治体の事業が地域のニーズに必ずしも応えていないのにも関わらず、国や地方自治体も赤字が増えていくという問題が生じています。
一応データを補足しておきますと、国の歳出で見てみましても、80兆円あまりの歳出のうち、なんと、借金の返済である国債費が17兆円を占めている、それから、同じく総務省のデータですが、地方財政の借入金に関していえば、昭和50年代には十数兆円であったものが、なんと平成12年度には184兆円と、十何倍にも増えています。このような赤字の危機が言われています。

それから、問題の2。税をいったん集中してそれを再分配するというツリー型のシステムなので、国家行政が肥大しています。その結果、国家財政に無駄を生みやすい構造になっており、赤字国債の発行を余儀なくされています。
問題3。地方交付税の存在は、地方自治体が健全財政に努力しなくても赤字を補填する機能を果たしています。その結果、税の無駄遣いが減りません。
以上、三つの問題に対して、肯定側のプランは解決を与えます。
第一に、自分が住む州に税を納めるので、使い道のチェックがわかりやすくなります。そうすることによって、合理的な財政運用が可能になります。
第二に、国家行政のうち、税の再分配に関する事業が少なくなりますので、小さな政府が実現します。結果、人件費を中心として、国家財政が楽になります。
それから第三、地方自治体においては、税収に努力しないと、国からの交付金がありませんので、健全財政に向かって努力するようになると考えられます。結果、税の無駄遣いが減るので、住民の利益が増大すると思われます。
以上がメリット1番でした。
つぎに、メリット2に移ります。メリット2は「住みやすい地域の実現」です。
まず、このメリットを支える現状認識を2点述べましょう。
第一に、現在の日本でもっとも重要な社会変化は、高齢化です。これに対して、現在のツリー型行政システムは機能していません。弱者は介護保険が救済すればいい、貧乏な自治体には補助金を出せばいい、という考え方では、国も地方も行政が肥大化するばかりです。
第二に、インターネットを中心とした高度の情報化があります。これは、高度成長期にあったような、第二次産業のように人とものを集中して行う産業スタイルから、知恵と工夫による新しい産業スタイルを創出する基盤となりえます。
この二つの現状から、つぎのような発生過程でメリットの2番「住みやすい地域の実現」が生じると推定されます。まず、人々の生活と産業のスタイルは今後急速に変化していきます。この変化を先取りする形で、道州制は住みやすい地域を作ります。なぜならば、たとえばですね、平均寿命が延びているなかで、現在の一般的な定年をすぎても働きたい人は増えると思います。その人たちは、インターネットやコンピュータを利用することによって、経験と知識を生かした仕事をすることができます。この人たちは、必ずしも大都市に住む必要がありません。オンラインで仕事が可能ですから、住む場所は環境の良い地方に置くことが可能なのです。つまり、今後増えていく高齢者の人口は、都市ではなく地方に住むようになると考えられます。この、高齢者人口が増えると、からだやこころのケアのためのニーズが増え、新しい産業が生まれます。新しい産業は、地方の消費税として、地方財政を潤しますから、地方の財政的なサポート、設備やその他の行政サポートが豊かになります。この点から、ますます住み良くなるので、人口はさらに増加すると思います。こういう、良い循環が、各地方で、その地方の特性に合った形で生まれてくるのではないかと思われます。つまり、メリット2を要約しますと、住みやすい地域が、日本の中に多様に生まれる、というメリットが第2のメリットになります。
以上、二つのメリットから私たちは「日本に道州制を導入すべし」と主張します。

質疑応答
太田→村瀬

太田:それでは反対尋問を行います。よろしくお願いします。まず、メリット1のラベルは「財政の健全化」でよろしいでしょうか。
村瀬:はい、けっこうです。
太田:メリット2のラベルは「住みやすさ」に関するもの、ということで…
村瀬:「住みやすい地域の実現」です。
太田:それではいくつか…まず、メリット1の方から、質問したいんですけれども…、すいません、プランで、地方交付税廃止、とありますが、そうすると、地方間の格差がどのくらい進むのか…州の間の格差がどのくらい進むと思いますか。拡大するのではないでしょうか。
村瀬:プラン1、2、3、4により格差が増大する…格差がある、ということは認めます。
太田:あることは認める…
村瀬:はい。
太田:そうすると、行政の質も、州ごとに異なるわけですね。
村瀬:はい。異なるかと思います。
太田:そうすると、豊かな州と貧しい州ができる、ということでよろしいでしょうか。
村瀬:いえ、その点に関しては賛成できません。
太田:どうしてですか。
村瀬:私どもの立論は、豊かさそのものが多様であることを目指しています。
太田:はい、わかりました。それでは、メリット2の方に移りたいんですけれども、発生過程で「自然に人が中央から地方に流れていくのだ」ということでしたけど、なぜそうなるのでしょうか。プランとは別に、中央から地方へ、なんで人が流れるといえるのでしょうか。これからの産業が変化して、プランとは別に中央から地方に人が流れるということですか。
村瀬:プランと別に、ではなく、プランが促進するような形で、あるいは、先取りする形で、人口が移動することになります。
太田:プランからなぜ、人口が中央から地方に移動するといえるのでしょうか。
村瀬:現在は、地方というのが、単に東京よりも貧しい地域、東京より不便な地域としてしか存在していません。ただし、今言ったように、道州制を導入して、地方分権をしますと、各地方自治体の個性が生まれてくると思います。その結果として…
太田:この場合、個性、というのはどういうものでしょう。具体的に、一言でお願いします。
村瀬:はい、例えば、長野県の医療の話をしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
太田:結構です。それから、メリット1の方で、59:41が歳入で、37:63が歳出だ、という話がありましたけれども、これを解消する手段というのは、どういうことだったんでしょうか。
村瀬:59:41の格差、という意味ですか。
太田:はい。それが…歳入と歳出がアンバランスになるのはなぜ…歪みがなくなるのですか。
村瀬:歪みがなくなるというか、税制そのものをまったく変える、という提案をしています。それはプランの2番だったと思います。
太田:所得税は全部国に行くわけですよね。
村瀬:はい、そうです。
太田:地方にはどういうお金がはいるんですか。
村瀬:地方には、消費に関わる税が入ります。
太田:消費税は地方税、ということですか。
村瀬:はい、そうです。あと、他にもまだ、消費税以外にも、消費に関わる税はいくつか行います。
太田:それは間接税…
村瀬:そうです[時間切れ]ね、はい。
否定側立論
否定側立論:中山和巳 専修ファルコンズ


それでは、否定側立論を行います。
否定側は現状を支持する立場をとります。プランは肯定側のプランを認めます。
それでは、肯定側のプランから発生するデメリットを二つ述べます。
デメリットの一つは、「住民の生活が不便になる」です。

発生過程を3点に分けて述べます。
@プランを導入します。すると、国から「道・州」に大幅に政治的な権限が移ります。ところが、地方の公務員は、今までそんなに大きな予算を使ったことがありません。したがって与えられた権限を有効に使うことができず、無駄遣いをします。
証拠資料を引用します。出典は、1996年4月9日付読売新聞です。
引用開始。「バブルのころから『ハコもの』と称される公共施設が全国各地に乱立し始めた。群馬県庁など以外にも、茨城県庁や大阪府庁が高層化を予定している。庁舎だけでなく、コンサートホールや体育施設も目立つが、閑古鳥が鳴いているところも少なくない。地方自治体の税の使い方に対する監視の目はまだまだ甘い。財政が国に劣らぬ危機に見舞われ、歳出削減努力を迫られている事実もあまり知られていない。」引用終了。
もう一つ証拠資料を引用します。出典は、1996年4月9日付読売新聞です。
引用開始。「地方自治体の借金である県債など地方債の発行残高は96年度末で、約100兆円。(中略)それにもかかわらず、地方公務員の数は増え続け、総職員数は89年度から94年度までの6年間で6万7千人余り増加した。」引用終了。
このように地方公務員の意識は、とても低く、ズサンな財政運営しかできません。もし自分たちで巨額の予算を組めるようになれば、無駄遣いはさらに増えることは間違いありません。すると、地方の財政は破綻し、福祉や教育にまわるはずの予算が削られ、住民の生活は実際には不便になります。
発生過程の2つ目。プランを導入します。すると、それぞれの道や州が独自に地方行政をするようになります。すると、人口が少なく、経済規模の面でかなり劣るブロック、例えば北陸や四国・中国地方を含むブロックでは、他の、特に東京を含むブロックに比べて、組める予算が少なくなります。すると、国が地方交付税で地方間格差を是正していたときに比べ、それらのブロックでは行政の質が落ちます。すると、生活の便利さを求めて、地方の過疎地帯などから東京へ人口が流れ、今まで以上に「東京一極集中」になります。この結果、地方と東京の格差はますます広がり、地方の住民の生活は不便になります。
3番。プランを導入します。すると、現在の都道府県が廃止されます。すると、現在でも住民福祉行政が行き届かなくなっている面があるのに、広域化すれば、それだけ目の荒い行政になってしまいます。
例えば、パスポートを取得する場合を考えてみましょう。交通が発達した現在でも、都庁や県庁に出かけるのに一日費やす地域は少なくありません。これが道とか州になれば、かなり遠い場所から道庁や州庁へ足を運ばなくてはならない人がでてきて、とても不便になります。

次にこのデメリットの深刻性を述べます。
現状でも、過疎地域は高齢化と人口減少が進み、悲惨な状態にあります。道州制の導入はこれらの地域を見捨てる政策です。また、東京を含む州以外は、押し並べて生活が不便になります。それと同時に、最終的には東京の住民も、人口が今以上に集中する結果、生活がしにくくなります。こうした事態は大変深刻です。
次にデメリットの二つ目を説明します。
デメリット2は、「税金が増える」です。
発生過程を述べます。プランを導入します。すると、道や州は課税自主権をもちます。すると、デメリット1で指摘したように、地方は現在、借金漬けとなっています。道・州はすぐに税率を上げたり、新しい税金を作って、税収を増やそうとします。これは現在、すでに起こっています。
例えば、自治体独自の目的税が新設できるようになったとたんに、各自治体は、新しい税金をつくる方針を打ち出しました。
証拠資料を引用します。出典は読売新聞2001年2月24日付です。
引用開始。「新たな歳入確保をめざす動きも広がっている。『銀行税』の導入で1416億円の税収を計上した東京は、大型ディーゼル車の高速道路利用税など新税を構想し、埼玉や徳島、熊本なども新税の検討を進めている。」引用終了。
道州制が導入されると、今とは比較にならない、大きな課税権を道や州がもちます。すると、それぞれの道や州が、新しい税金を新設するようになり、企業や住民はその負担を覚悟しなければなりません。

次にこのデメリットの深刻性を述べます。
現在の日本経済は深刻な不況が続いています。この状況で、地方自治体が次々と新税をつくって、企業に負担を求めれば、企業は衰退します。企業はさらなるリストラを進めるようになるでしょう。また、個人の税金が今以上に増えることも予想されます。これは、大変深刻な事態です。
デメリットのラベルを繰り返します。デメリットの1つは、「住民の生活が不便になる」です。かえって、地方の住民、そして東京の住民の人たちの生活は、実際には不便になってしまうのです。
デメリットの2番目は、「税金が増える」ということです。今でさえ、地方は非常に赤字ですね。そうすると、税金をどうしても増やしてしまうでしょう。そうすると、現在の深刻な不況がますますひどくなってしまいます。これで、日本全体が衰退してしまうかもしれません。ですから、この道州制は、しない方がいいんですね[時間切れ]。終わります。
質疑応答
村瀬→中山

村瀬:それでは、始めたいと思います。肯定側から否定側に反対尋問いたします。否定側は、デメリットの方で、一極集中を言ってたと思いますが、例えばですね、否定側によると、企業はどういった州に集中するとお考えでしょうか。
中山:東京、とか…。
村瀬:なぜ、東京がいいんでしょうね。
中山:それは、現在は、情報とかが得られるんですね。その…田舎から来た…
村瀬:はい、分かりました。それから、きめが荒い、きめが細かい行政、とおっしゃっていたと思うんですが、きめが細かい行政とは、どんな政策でしょうか。
中山:それは…きめの細かい、というのはですね、やっぱり県で、知事が…自分達の県の知事が…これはまあ、知事って感じで、言ってみれば、自分達の関係の知事に合わせたものが…県の風土に合わせたものが得られる、ということだと思いますけど…。
村瀬:「おらが土地」の政策ならきめが細かい、と思ってよろしいのでしょうか。
中山:…
村瀬:それから、次の質問に移ります。年齢は別におっしゃらなくていいのですが、今までに何回くらい引越したことがありますか。
中山:…5、6回ですかね…。
村瀬:5、6回…。今までパスポートを取ったのは何回でしょう。
中山:3回くらい…
村瀬:はい、ありがとうございます。それから、次なんですが、地方自治体の財政が困難な状況になっている、ということは認識しているんですけれども、そのときに、そういう困難は、例えば地方債とか、そういう形でしか解消できないんでしょうか。あるいは、税金を増やす、ということをおっしゃってたんですけど、それ以外の方法はない、という風に主張されますか。
中山:いや、あるんですよ。でも、税金を増やしてしまいますよね。
村瀬:増やしてしまいます、か。
中山:実際そうですからね、いままで。
村瀬:それから、そのときに[不明]と、銀行税の話をされたと思うんですが、外形課税が一番しやすいと思うんでしょうか。外形課税が、一番、そういうときにはよく使われる手段だと…
中山:ええ、そうですね。
村瀬:やりやすいからですね、銀行税は。そうやって、いろいろ税金は好きなように課税して、で、もっともっと大きな額をもらって、で、もともと運営能力のない、地方の役人は、それを無駄遣いしてしまう、という主張だった、と…。
中山:そうじゃなくてですね、増やさざるを得ないですよね。今、赤字で苦しんでいる場面で、仕方がなく、そうやってやってしまうんですよ。仕方なく。
村瀬:わかりました。どうもありがとうございます。

否定側第一反駁
否定側第一反駁:太田昌宏 専修ファルコンズ

それでは、否定側第一反駁を行います。
まず、肯定側のメリットに対して、6点反駁します。
まず、一点目なんですが、国と地方が徴収…国と地方の比率が、例えば、歳入で59:41、それから歳出で37:51で、これは歪んでいる、ということでしたけれども、これはですね、歪みがなぜ解消するのかがまだ明らかになっていませんし、否定側の立論でも述べましたように、税金を無駄遣いしてしまう、というようなこと、あるいは、地方公務員の能力にちょっと疑問がある、ということですね。その結果、これに関しては…この歪みはなくならない、ということです。
それから、二点目に関してですが、今は、住民のニーズと直結していないけども…行政が…、しかし、州みたいな、道州になれば、直結して、意識が高まってニーズに合う、ということなんですが、これは現在も、都道府県はそれをやろうとしているのではないでしょうか。しかし、一向にそれに応えられない、ということが問題だと思います。従って、これが州になったからといって、応えられる、という風にはいえない、と考えます。
それから、三点目。現状分析の三点目ですけれども、地方交付税をなくすという風にいっていて、不公平は減らない、といっているのですが、これは、不公平は、やっぱり増えます。これは、東京一極集中が加速化する、ということで、さらに不公平は増えますし、州の間で、収入の間に大変な格差が広がりますから…例えば東京を含む州と、四国とか、あるいは北陸とかいった州の間で、大変な格差が広がりますから、これは不公平になります。
それから四点目なんですが、発生過程の一点目で、「使いみちがわかりにくい」といっていましたけど、これはですね、現在情報公開というのが、都道府県レベルでも進んでおりまして、分かりやすくなっているはずなんです。分かりやすくなっているんだけれども、うまく行かない、ということです。
それから、五点目なんですが、発生過程の二点目に関して反駁します。
再分配に関してなんですけど、人件費が減る、ということなんですが、これは、なんで人件費が減るのか、ということがですね、その…行政をスリム化するのが、なぜスリム化するのか、というのが分からない。州と州の政府ができるわけですから、新たに、人が増えるはずなんですよね。そこのところが証明されていません。
それから、六点目ですけれども、これは、発生過程の三点目で、努力しないといけない…住民は、利益があがるように努力するだろう、と…道州制になれば…。しかし、これは、都道府県の方が努力するんです。州になると、州は都道府県よりも大きいですから、逆に監視の目が行き届かなくなって、住民は努力しなくなる、という風に考えられます。
それから、今度、メリットの二点目…メリットの2、「住みやすさの増大」ということでしたけれども、これに関してなんですが、これからの未来のプランを示してですね、何か理想的なインターネット化が進んで、結局、プランとあまり関係なしに、人が地方に移行するような話で、それに乗っかって上手くいくような話がありましたけれども、そんなことは起きません。否定側の立論で考えたことによりますと、東京一極集中が進みます。過疎・過密もさらに進みます。道州制を導入すると、州間の格差も広がる、そして、東京一極集中の加速化が起きる、ということで、これは、つまり、今インターネットが流行って、じゃあ東京に人が集まるということがなくなったんでしょうか。逆に情報を求めて東京に集まって来るというのが現状ではないでしょうか。
それから、メリットの2に関してですが、都市ではなく地方に集まるということですが、地方は、より、そのことによって、不便になるんです。立論で申した通りです。[時間切れ]
肯定側第一反駁
肯定側第一反駁:名越幸生 オンディーズ

これから肯定側第一反駁を始めます。始めに、否定側の第一反駁で、私たちの立論に対して反駁があったところに再反駁いたします。
まず一点目。歳出・歳入の歪みが解消することの説明がないといっていましたが、私たちの立論のなかでまず、今は国が税金を全部集めて、それを再分配して使っている、ということを言いました。それが、今回は、国がいったん集めるということは、なくなるわけです。ですから、歪みそのものがなくなるわけですね。最初から地方に入っていって、使われるわけですから、歪みそのものが生じない、道州制というのはそういうシステムである、ということです。
それから、再分配というのは、非常に無駄を生みやすい。つまり、東海の方から税金を集めて諫早湾の橋に使ったり、とかですね、まあ…競馬の馬を買ったりとかですね、そのように、無駄を生みやすい。ということで、そのようなことがなくなる、というプランであることを説明しておきたいと思います。
それでは、否定側の立論に対して反駁します。これは、議論に大きく関係すると思いますので、よろしくお願いします。
まず最初に、一極集中が起きる、ということを言って、根拠にしていたことが多かったと思いますが…発生過程の2、もしくは反駁でもそうだと思いますが、一極集中は起きません。3点で述べます。
一点目。東京は物価が高く、私たちのプランでは、消費税も高いです。さらに、現在は人件費が高いです。アルバイト料等を比較してください。一極集中が進むと、土地の価格も値上がりし、税金も高くなります。このような、経済的に不利な州に、わざわざ企業等が進出してくるのでしょうか。つまり、集中が進むと、その反動で分散が、そして平均化が起きるのです。
二点目。国民の多くが必要としているのは、外交、防衛、通貨以外の諸手続であり、各州の州都が受け付けて参ります。つまり、国の権限が縮小されるということは、首都の需要が下がるということです。よって、東京への一極集中を理由としたデメリットは起こりません。
三点目。否定側第一反駁もいってくださったように、情報化がすすんでおります。それにより、私たちは、メリット2で、地方に住んでいても情報が得られる、ということを言っておりましたので、確認をしてください。
次に、デメリットの1の発生過程3、「きめの荒い行政」についてなんですけれども、「きめの荒い」とは、具体的にどういう行政でしょうか。少数派を無視して強引に推し進められるような政策は、主として開発を伴うものであると考えられます。ところが、肯定側のプランでは、必要な事業が、合理的に行われるのです。つまり、州民全体が、「これは必要だろう」という政策が選ばれ実践されるのです。「きめの荒い行政」とは、実は、「無駄のない行政」または「節約型の行政」とも言え、それはまたメリットであります。
続いて、デメリットの2、「税金が増える」ということを言っておりますが、それは起こりません。
証拠資料を引用します。河北新報、2001年1月19日、宮城大学教授、天明茂氏の投稿より、引用開始。「[宮城]県の地方税収入は92年から94年度までは減少したが、(中略)2000年度は過去最高になると予想されている。加えて国からの地方交付税は95年度から一貫して増加している。にもかかわらず地方債が増加しつづけているのは、経常的経費と公共投資の増加のためで、思い切った歳出削減、とりわけ公共事業の見直しが急がれている。」引用終了。
つまり、地方の赤字は認めます。しかしながら、それを解決するプランは、地方税の増加ではなく、公共事業の見直しなのです。そういうものが大きいのです。
なお、宮城大学教授、天明茂氏は、宮城県の収入と支出のパワーバランスを計算する人のチーフでありますので、信用がおけると思います。
他にも書いてありましたが、公共事業のほかに、経常的経費の削減が大事だといいました。行政のステップが少なくなる、合理化される、ということは、それによって、いろいろな[時間切れ]諸経費が削減されると思います。以上で反駁を終わります。
否定側第二反駁
否定側第二反駁:中山和巳 専修ファルコンズ

否定側の第二反駁を行います。
デメリットの「税金が増える」に対して、反駁なさいましたけども、反駁の1で、「きめの荒い行政」とは何か、ということはですね、例えばですね、私、岩手県の盛岡に住んでるんですけれども、盛岡のあと、青森まで新幹線が通らないんですよね。で、あるいは花巻駅…新花巻駅というのは、結局、国鉄が作ってくれなくて、結局花巻市の市民が作ったんですけども、そういう風に、市民が頑張る、ということなんですね。で、そういうことはですね、道州制になって全体が大きくなってしまいますとですね、絶対忘れ去られてしまいます、という風にいえるんですね。
で、現在…現在の都道府県制度でだめなのか、といいますと、そうじゃないわけで、長野県の田中知事が実際にやっていることとか、石原都知事が、次から次へと改革している、というのは、今の都道府県制度の枠組みがあったから、彼らが選ばれて…個性的な知事が選ばれて、で、こまやかなことが出来ているのではないでしょうか。今のこの制度がいいんです。で、道州制はあまりにも危険を伴います。それはやっちゃいけないことなんですね。
で、メリットの2番ですね、住みやすい地域になるかと言うことなんですけれども、そして、インターネットとか、地方に…人口を持ってくるんじゃないか、といってますけれども、情報こそですね、中央のものが魅力的に見えるんですよ。で、IT革命とかいいながらですね、それは何か、東京に行かないと分からないんじゃないか、という不安がつのるんですよね、地方にいると。で、このディベート大会も実際は東京で行われていまして、やっぱり本場東京に行かないとだめなんじゃないかって…もちろんインターネットで調べることは出来るんですけど、やっぱり人対人の…この…ぶつかり合いというかですね、そういうのは、東京、ということですね。で、企業研修などもですね、結局東京に集中してるんですね。実際ね、IT革命とかの中ででもですね。
ですから、これは、道州制にしてもですね、むしろ一極集中してしまいますですね。ええ。
このようにですね、メリット2の「住みやすい地域ができる」というのはですね、豊かさの質とか、多様化とかというのがですね、メリット1にもありましたけれども…多様化すればいいんじゃないかといっていましたけれども、それがどうも曖昧でですね、実際は地方切捨てになるんではないかと、非常に、そう思います。で、しかも、地方交付税を完全になくす、ということはですね、非常に…結局、新幹線は青森まで行かないでしまうんじゃないかな、という、非常に不安があるわけなんですよ。今のままで、頑張っていけるんじゃないか、と…今、長野県知事とか見ててもですね…どっちかというと、今のままの方が地方…実際に今地方は、豊かになりつつあるんだと思います。そう思いますと、そういう…道州制のような危険なことをするよりは、実際…今のままの都道府県制度の方を維持した方がいいんじゃないかと思います。
再分配…財政の歪みはですね…財政の歪みについておっしゃっていましたけれども、これは、絶対に歪みは増大します。道州制にしますとですね、州間格差…州と州との間の格差がですね、圧倒的にあるんですね。実際に東京だけの経済規模というのが、沖縄とか…九州四国とかに比べてあまりにも大きいんですね。で、これが道州制によってですね、そのままになってしまう、と。そうしますとですね、結局[時間切れ]地方の若者は東京に来てしまいます。
肯定側第二反駁
肯定側第二反駁:村瀬公胤 オンディーズ

では、肯定側の最終反駁をしたいと思います。
最初にちょっと指摘しておきたいんですが、否定側の方から、道州制ではなくて、今の時点で出来るのではないか、と指摘されて、その主張は主張として受け止めますが、それが、道州制では「危険だ」「危険だ」「危険だ」と何回も繰り返されていたのですが、何がどう危険なのか、具体性が欠けていたことは、ここではっきり指摘しておきたいと思います。
では、概括と反駁に入りましょう。否定側の方としては、いろいろ聞きたいことがあったと思いますので、それに全て答えていきたいと思います。
まず、「結局東京ではないのか」ということに関してはですね、そんなことはありません。例えば、いい例を出してくれました。この会議が…このディベートが、この東京で行われている。これは、まさに今まで国がインフラ整備をしてこなかったということなんですね。もし、光ファイバーがきちんと各県に通っていれば、こんなところに集まらなくて、皆さん地元にいて、ディベートができたはずなんです。そういうために、私たちの立論では、既に、情報インフラは国の仕事だと、はっきり言っています。このプランの先見性が示されました。
それから、「多様性が曖昧」。確かにいい指摘だと思いました。具体例をあげて反論したいと思います。
まず第一にですね、長野県の医療制度があります。これはどういうことかといいますと、長野県の医療費というのはですね、実は全国で最低なんですね。ところが、全国一寿命が長いんです。で、しかもですね、さらにもっと大事なことは、全国一、寝たきりの時間が短いということなんですね。つまり、長野県の人たちは確かにお金と経済的資本でいえば貧しいかも知れませんが、ただし、非常に幸せな生活を送っている、と。つまり、長く働いて、元気なうちにぽっくり死ねる、そういう死に方が、長野県では選択できるわけですね。で、東京のように、確かに高いお金を出して、大学病院や高級な医療を選択することも可能でしょう。そういう地方が、この日本にいくつも、いろいろできることが、この日本をよくすることじゃないか、と。だから道州制が大事なんだ、といっています。
それから、県でも頑張れば、地方分権は可能じゃないか、というのですが、大きな間違いです。なぜならば、今の地方交付税をやっているままだったらば、再分配というのが必ず残るんですね。このことを残したままで、道州制じゃなくてもいい、というのは、成り立たないと思っています。
それからですね、税金のことについて、もう一回ちゃんと確認しましょう。実はですね、私たちが所得税に限ったのは訳があるんです。これはですね、関西大学の橋本教授が調べたデータなんですけれども、税源別の一人当たりの税収額、というデータがあります。どういうことかといいますと、所得の税、消費の税、資産の税、と分けたとき、一人当たりどれくらいになるか、という、税額のデータなんですね。これを見ますと、東京は確かに所得の税は栃木県の二倍以上なんですね。ところが、消費の税は実は、栃木の方が多いんです。一人あたりでは、栃木県民のほうが消費税がたくさんかかっているんですね。だから、その地方でやらなければいけない事業が、その地方の消費税でまかなえる、ということを私たちは主張できるんです。それに関して、所得は、東京で確かにいろんなメリットがあります。多分、道州制を求めても、まだ東京に住みたいという人はいると思います。そういう、東京に住む人、というのは、なんていうんですか…燃費の悪い車で生活するようなもので、その分だけのコストを払っているわけですね。つまり、たくさん楽しいことを受け取るし、たくさんお金も使っちゃう、と。で、そのお金の一部は国がちゃんと受け取って、それを例えば情報インフラとか、そういう方向に振り向けよう、と。そういう主張だったんです。よって、ですから、財政的には、私たちの道州制は、きちんと支持されていると思ってください。
さあ、以上ありましたように、私たちの道州制というのは、単に財政がどうとか、行政をスリム化しようという主張ではなくて、そうではなくて、この日本で、どんな風にあなたは住みたいですか、と、もっと生き生きと住めるために、どんなパターンがあるのか、と、考えた結果の帰結なんですね。そういう意味で、多様で、楽しい日本をつくるために、この道州制は、必ず必要だという風に、私たちは主張いたします。以上で終わります。


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