Japan Debate Association

第16回JDA秋季ディ ベー ト大会決勝戦

2013年11月16日

論題:日本は企業の正社員の解雇に関する規制を大幅に緩和すべきである。

肯定側: エビデンスコレクション~エビこれ~(竹久真也・岩永哲享)
否定側: FA(玉置繁之・中島有希大・松田拓)

編集:安藤温敏

はじめに

2013年11月16日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて、第16回JDA秋季ディベート大会が開催された。三試合の予選の結果、決勝戦に進出したのは「エビデンスコレクション~エビこれ~」チームと「FA」チームの二チームであった。

決勝戦のジャッジは、酒井崇匡氏、稲田誠氏、兼子歩氏、後藤久里子氏、鈴木恵利香氏、田中時光氏、山田哲也氏の七名。七名中六名が肯定側に投票し、「エビデンスコレクション~エビこれ~」チームが優勝した。また、本大会のベストディベーター賞は、岩永哲享氏が受賞した。

本トランスクリプトは、決勝戦の模様を収録したものである。
本トランスクリプトに掲載されている証拠資料の出典情報は不十分であり、原典の確認は行っていないので、使用を検討する際は、必ず原典にあたってから利用していただきたい。

肯定側第一立論

肯定側第一立論:竹久真也 エビデンスコレクション~エビこれ~

はじめに観察。

現代経済の変化は早く、そして激しくなっています。

京都大学特任准教授、瀧本哲史、2013年。
「一方で、世界市場を見てみると、あらゆる業界が激化し、産業の浮き沈みのサイクル、ビジネスモデルの耐用年数が、どんどん短くなっている。かつて『日経ビジネス』が「企業の寿命30年」という特集を組み話題になったが、今では一世を風靡したビジネスモデルが3年、いや1年と持たないことも珍しくない。この企業の栄枯盛衰のサイクルが極端に短期化したことによって、ひとりの人間が生きるために働く40年ほどの現役生活において、ずっと同じ会社で同じ職種を続けることはほとんど不可能になってしまっている。商品だけでなく、「人間のコモディティ化」がはじまっているのだ。」終わり。

だからこそ企業も、変化する市場に応じて人材を柔軟に調整する必要があります。しかし、解雇規制によってそれが妨げられているということを、内因性で示します。

内因性。

1:日本では解雇は、解雇規制によって制限されています。この解雇の要件は厳しい上に不透明であり、企業にとっては自社の整理解雇が有効なのか無効なのか判断できません。

労働法学者、大内、2013年。
「日本の解雇ルールには、不明確で、厳格で、単線的という問題がある。不明確だから、当事者は合理的な行動をとれない。不明確なルールが企業に厳しく解釈、適用され、企業を縛っている面もある。しかもルール違反への制裁手段は、解雇無効という雇用継続をもたらすものしかない。[中略]しかし、現実の裁判における解雇の有効性判断の予測可能性は大きくない。解雇ルールは最終的には権利濫用論に依拠しており、裁判官の総合的な判断に任されているからだ。」終わり。

2:このため企業は雇用調整が柔軟に行えません。それを雇用の入口と出口、つまり必要な人を雇う時と、そして必要なくなった人を解雇する時の二つの側面から分析します。

A:雇う時。

解雇規制が強く、また解雇が認められるかどうか予測できないため、必要な人材であっても、将来解雇できないリスクを恐れ、企業は採用を増やせません。

大阪大学教授、大竹他、2006年。
「しかし、解雇規制強化の影響はそれだけに止まらない。景気が回復しても解雇規制が強化されているので、企業は正社員の雇用を増やすことができない。なぜなら、次に景気が悪くなった際に、強化された解雇規制のもとで雇用調整が困難になって企業収益の悪化要因になるからだ。」終わり。

事実、多くの企業で正社員が不足しています。

厚生労働省、2013年。
「平成25年8月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.をみると、調査産業計で15ポイントと9期連続して不足となった。」終わり。

観察の通り、経済の変化が早くなっているため、今必要な社員が将来において必要かは予測できません。このため、こうした採用控えは、今後どんどん増えていくであろうと予測できます。

B:解雇するとき。

内因性1の通り、企業には整理解雇が認められるかどうかわかりません。このため必要ない人材を解雇し、不採算事業から撤退することができません。

NEWSポストセブン、2013年。
「収益率を上げるもっとも確実な方法は、不採算部門から撤退し、収益性の高い部門にすべての資本(リソース)を投入することだ。ところが日本では正社員の解雇が事実上不可能なため、不採算部門を閉じると従業員の行き場がなくなってしまう。その結果、市場が縮小しているのに撤退できず、各社がひしめきあって価格の叩き合いをすることになる。」終わり。

重要性。

1:雇い控えや不採算部門の維持によって、本来生みだされていたはずの雇用が損なわれています。

2:整理解雇が行えなければ、最悪倒産に至ります。

株式会社人事サポートセンター。
「先日、民間の調査会社が発表したデータによると、2004年度の全国企業倒産件数は1万3000件強となっています。その大多数は経営環境の変化に適切かつ迅速に対応できなかったための倒産、とりわけ、余剰人員の削減、つまり「整理解雇」に躊躇したために人件費の負担に耐えられなくなったための倒産であろうと推察されます。」終わり。

整理解雇ができず倒産に至った場合、より多くの失業が発生します。

ジーワンシステム、生島、2009年。
「実際、整理解雇するところまで行うと、かなりの確率で倒産は免れません。[中略]そんな風に会社が潰れたら全員の雇用が守れないばかりか、不払いなどが起きるため、仕入先(下請け企業)が連鎖的に倒産することもあり、もっと多くの不幸を生みます。」終わり。

そこで、以下3点のプラン。

1:2017年に労働契約法を改正し、解雇の時期や人数は企業が自由に決められるものとします。

2:労働基準法、労働組合法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反する解雇は、現状と同じく無効とします。つまり、労災の療養、産休の取得、労働基準監督署への申告、労働組合への所属、性別などを理由とする解雇は現状でもプラン後でも違法です。

3:その他必要な措置をとります。

解決性。

1:プランによって、企業は必要に応じて雇用を調整できるようになります。

経営共創基盤(IGPI)代表取締役、冨山、2012年。
「正当な事由がある場合、もっと自由に解雇できるなら、企業にとってはそもそも定年制は必要ないし、人を雇うときも躊躇しないだろう。正規雇用と非正規雇用の間にある、絶対的とも言える壁も相対化する。必要な時に必要な人材を必要な分だけ雇い入れる。[中略]要は老若男女に関係なく、また雇用契約上の身分に関係なく、能力、生産性こそが、労働市場における圧倒的な評価基準になるのだ。」終わり。

この結果、企業業績も向上します。実際日本の実証研究でも、人員削減が円滑に行われる場合、業績が改善することが分かっています。

高松大学経営学部、清水他、2007年。
「この結果の解釈としては、人員削減の1年目は退職金の支払いなどで利益にマイナスの影響があるが、2年目には人件費の削減効果が生じ、利益が生じやすいため、市場から評価されるためと考えられる。これは、Kang/shivdasan(1997)による日本企業のリストラ研究において、人員削減を行った企業の営業利益率が、業績の悪化した年から1年後まではマイナスであるが、3年後までを見ると10%水準で有意にプラスになっていることと整合的である。」終わり。

2:企業の採用活動が活発になります。中途採用にせよ新卒採用にせよ、現在では、一度正社員として雇用すれば定年まで数十年近く雇い続けなくてはなりませんが、プラン後は必要に応じて解雇ができますから、その分だけ気軽に雇えます。

これにより社会全体での雇用が増えます。アメリカの例を引用します。

大阪大学大学院、奥平、2008年。
「Autor(2003)は、アメリカの解雇自由原則に対する随意雇用契約の例外規定が州によって異なる時期に認められたことを利用し、裁判所によって課せられる解雇規制が労働市場に与える影響を分析している。その結果、例外を認める判決が出ると、雇用率が一時的に減少したり、例外規定の対象とならない派遣労働者が増加することが示された。国際比較分析の結論が不透明だったのに対し、国内のデータを用いた分析の大半は解雇規制の強化が雇用率を低下させ、勤続年数や雇用からの流出入数を増加させるという推定結果を示している。」終わり。

3:整理解雇がすすみ円滑に企業が不採算事業から撤退することで、経済が成長します。

NEWSポストセブン、2013年。
「労働基準法を改正し、アメリカのように金銭支給を対価とした整理解雇ができるようにすれば、日本企業は余剰人員を一斉に吐き出し、不採算部門から撤退するだろう。その結果、過剰供給もなくなり、採算を度外視した価格戦略も不要になる。そうなれば消費者物価は自然と上昇し、給与も上がって消費が拡大し、売上と純利益が増えて株価も上昇するだろう。」終わり。

実際、解雇規制が緩やかなアメリカでは、企業が柔軟に雇用調整を行うことでいち早く事業不振から脱出しています。

日本総合研究所調査部、マクロ経済研究センター、2007年。
「つまり、不況期に米国企業はレイオフ・解雇を実施することで人件費の削減をスピーディーに行い、企業業績の早期の立ち直りを可能にすることで経済の長期低迷局面を回避してきた。」終わり。

ということです。

すいません。解決性の2を見て下さい。解決性2のところで、インドの実証分析を追加したいと思います。

同じく大阪大学大学院、奥平、2008年。
「以上のような国際比較分析の問題点を踏まえて、最近では規制の国内変動を利用した研究が増えている。Besley and Burgess(2004)は、インドの各州における労使関係紛争法の改正が州ごとに異なる規制の強さを与えている事実を利用し、労働規制の強化により生産の減退や貧困層の拡大が生じることを示した。」終わり。

ということで、アメリカでもインドでも雇用が増えるから、日本でも雇用が増えるだろうと予測できます。

以上で立論を終わります。ありがとうございました。

否定側質疑

肯定側質疑 中島→竹久

中島: はい、始めたいと思います。お願いします。
竹久: よろしくお願いします。
中島: ではまず、現状の観察から聞いていきたいと思うんですけど、企業の年数が短くなっているっていう話で、でも例えばトヨタとか、いろんな会社って、長い間続いているじゃないですか。どれだけの企業が、今40年存続できないような…割合であるんですかね。
竹久: これは、企業の寿命だけではなくて、例えば企業の主力部門というものの寿命が短くなるとか、必要な人材が変わる、ということも述べています。ですから寿命の話だけではありません。
中島: そしたら、その人が40年同じ会社で勤めきれないの、どれぐらいあるんですかね。
竹久: 量はちょっとわからないですね。
中島: わからない。わかりました。じゃ、次…
竹久: ただ、今後どんどんサイクルが短期化していくわけですから、そういう人は増えていくだろう、という風に肯定側は予測しています。
中島: わかりました。なるほど。じゃあその次、内因性のAの2枚目の資料、D.I.とかって…15ポイントマイナスとかって話があったと思うんですけど、これって、企業ごとに聞いた話ですよね…事業所ごと…
竹久: そうですね。事業所の雇用不足かどうか…
中島: 例えば、大企業で100人人が余っているけど、中小企業で2人…二つの中小企業で1人ずつ人が足りない、ってなったら、マイナスになりますよね、これって。
竹久: はい、事業所が多ければ数字がマイナスになる数字ですね。
中島: なるほどわかりました。次行きます。じゃあ重要性の方に聞いていきたいと思うんですけど、まず解雇の…倒産の話があったと思います。これって、余剰…解雇することを躊躇したから、ってありますよね。
竹久: はい。
中島: これって、例えば、温情的に、その人に対して…その…人を切るのが嫌で、切れなかった、とか、そういうことも含まれて…躊躇って、含まれていますよね。
竹久: そういう要因もあるかもしれませんが、内因性で述べているとおり、いざやろうと思っても、それが認められるかどうかわからない、そして失敗した場合には雇用を継続しなければならない、これが企業にとって重石であるということを、内因性1で述べています。
中島: なるほど。じゃあ、解決性の1の2枚目の資料がありますよね。これって、現状で人員削減できた場合にプラスになった、って話ですよね。現状でできているんですよね。
竹久: 現状で幸運にも認められた企業においては、そういう傾向が推測される、ということです。実際にはやりたくてできなかった企業が多くあるだろうというのが、肯定側の推測です。
中島: じゃあ、あなた方が言っているように、倒産ギリギリでも…ギリギリじゃないと認められないんですよね。生島さんの資料とかで言っているように…重要性の2枚目の資料で…
竹久: 認められないことが多い、と言っていますね。
中島: はい。で、じゃあギリギリまで認められなくて、そこで認められても、その時に…一時的にはマイナスでも、プラスになっているんですよね、この資料。ギリギリで解雇が有効になっても。
竹久: まずそもそもこれは、多様な人員削減をすべて論じているので、別に整理解雇だけではないっていうのが1つ目。
中島: ああ、なるほどなるほど。はい。
竹久: で、2つ目としては、そういう企業はあった、ということですね。
中島: なるほど、わかりました。じゃあ、解決性の2点目の方に聞いていきたいなという風に思うんですけど、インドとか、アメリカとかの話がありましたよね。
竹久: はい。
中島: これって…インドとかアメリカとかの話って、なんでこれだと日本に当てはまるようになるんですかね。
竹久: 要するに、同じような経済環境で、同じ国の中で、解雇規制が強い地域と弱い地域があれば…
中島: ちなみにこれって、解雇規制を、緩和したとかじゃなくて、緩和規制の強さ…解雇規制が強いところと弱いところで比較しているっていう話ですよね。
竹久: 労使関係紛争法の慣習が州ごとに異なる、と言っているので、州の時系列も追っていると思います。
中島: 時系列も追っているんですか。なるほど、わかりました。じゃあ残り時間無いので終わりたいと思います。
竹久: ありがとうございました。

否定側第一立論

否定側第一立論:玉置繁之 FA

弊害:不安定雇用。

A:固有性。

1:日本は解雇規制が厳しく解雇が難しいです。肯定側の分析を認めます。

2:そのため、海外でも珍しい、不況期でも失業を出さない仕組みができています。

一橋大学教授、依光他、99。
「日本については、景気の落ち込みがあっても、失業率の変動は極めて小さく、我が国の雇用慣行が失業を抑制するという観点からみた場合、極めて有効に機能してきたことが分かる。[中略]国際的にみて低い水準にある我が国の失業率は、それを生み出す日本的雇用慣行とともに、羨望の的であったといえる。」終わり。

B:発生過程。解雇規制が緩和されると不況期に失業が急増し、経済も鈍化します。これは諸外国で経験的に証明されています。

経済学者、森永、2013。
「リーマン・ショック後、何が起きたのか。昨年の失業率は、デンマーク7.7%に対し、オランダは5.3%にとどまっている。オランダと同様に解雇規制の厳しい日本は4.4%だ。景気のよいときには、解雇が自由でも失業率は上がらない。しかし、景気が悪くなると、規制がなければ失業率が急増する。では、経済成長の面ではどうだったのか。[中略]リーマン・ショック後4年間の累積でも、デンマークはマイナス2.7%だが、オランダはマイナス1.9%にとどまる。失業者は仕事をしないから経済がさらに縮小する。その損失は、そう簡単には取り戻せない。それが、リーマンショック後の経験だ。解雇規制の緩和は、経済全体の観点から、相当慎重に考えるべきなのだ。」終わり。

C:深刻性。

1:日本では労働者の生活は雇用に依存しており、さらに、ローンなども賃金をあてにしたものであるため、解雇されると全てを失います。

朝日新聞論説委員、竹信、09。
「日本の安全ネットは、解雇されたらすべてを失うといっていいほど会社依存だ。[中略]失業保険の期間も、長くて1年弱。「持ち家」とは名ばかりで、会社が将来支払うはずの賃金をあてにしたローン依存なので、会社を追い出されれば「中流」といわれる人さえ路頭に迷いかねない。」終わり。

2:解雇は単なる労働者の生活だけでなく、人格的利益にも及ぶものであるため、規制されるべきです。

獨協大学教授、土田。
「解雇規制の規範的正当化根拠として、雇用保障の人格的価値を強調する見解もある。[中略]解雇に拠る雇用喪失の不利益は、労働者という生身の人間に付着する不利益であり、単なる経済的不利益にとどまらず、人格的利益の喪失(仕事への愛着・生きがいの喪失、キャリア形成上の不利益)にも及ぶ。[中略]この点からも、解雇規制は、市場の環境変化によって直ちに緩和されるべきものではない。」終わり。

じゃあケース。観察行きましょう。

観察のところなんですけど、「短くなっている」って言っていたんですけど、ここは全く数が不明です。どれぐらいの企業が生き残れないのか、全く不明です。

で、その次、メリットの2枚目の資料で、調整ができないんだ、っていう話がありました。しかし…調整ができないから雇用ができないっていう話がありました。しかし、例えば今の若年失業率でも8%。逆に言うと、92%雇用されているわけで、全部が全部雇用できないって言っているような彼らはオーバークレームです。

その次の、企業は予測…不足しているっていう話があったんですけど、これはミスマッチのせいですから、関係ありません。

日本総合研究所、山田、2012。
「しかし、大手企業では就職希望数が求人数を大きく上回る一方、中小企業では逆に求人数が希望数を上回っています。こうしたミスマッチにより、厳しい就職状況が生まれているわけです。」終わり。

2点目として、こういうふうに、ミスマッチとか…つまり、自分が働きたくないから働いていないだけで、別に、そんな人たちをなんで国が守らなければいけないのか、全く不明です。

その次に、不採算部門から撤退できない、というのがありました。
まず1点目として、これは解雇ができないっていう話であることを確認してください。

2点目として解雇以外でも、いくらでも不採算部門を切り離す方法はあります。

弁護士、阪野、2010。
「会社が不採算部門を抱えた場合などに、不採算部門だけを切り離すといった組織再編を行うことがあります。不採算部門を抱えたA社が、B社に不採算部門の切り離しをするという例をもとに考えてみます。(1) 会社分割:不採算部門の切り離しのために、A社が不採算部門を分割して、新たにB社を設立する、という方法をとる場合があります。(2) 事業譲渡:また、A社が不採算部門をB社に対して事業譲渡する、という方法もあります。」終わり。

なぜクビを切る方法じゃないといけないのか、ここは彼らがちゃんと証明すべきです。

で、その次。インパクトの1点目で、雇用の話がありましたが、ここでは数が不明です。

で、2番めの倒産の話がありましたが、まず1点目として、こういったものというのは…彼らが言っているのは09年、04年の話です。2点目として、これは…倒産ギリギリまで解雇できなかったのは古い話で、最近の判例では修正されています。

早稲田大教授、島田、2012。
「しかし、倒産必至説は、早い段階からそこに至るまで人員整理が行えないとすれば、企業の存続をかえって危うくし、結果的に労働者側にとってより厳しい状況を招くという学説からの批判が強く、「人員整理が企業の合理的運営上やむをえない必要に基づく場合であるかどうかという観点から判断」するように修正された。」終わり。

2点目。また、解雇できないのが解雇規制のせいなのか、という証明がありません。経営者にとって、解雇規制によって躊躇して倒産するよりも、整理解雇を行ってそれが成功する確率に賭けた方が、企業存続確率は高まります。そんな中でですね、単純に事業…やらないってことは、単純に事業の危険性の認識が甘くて、整理解雇の必要性を誤解したか、労働者のことを考えて、人情的に切れなかったか、だと思いますし、そういった場合、緩和しようが解決しません。

で、3点目として、彼らは1万3000件、というのを伸ばしてくると思うんですけど、この1万3000件、筆者が推測する、って言っているだけで、何の根拠も無いんですよ。この1万3000件が潰れている、だから、これが1万3000件を救う、ってこと、これは全くないことを確認してください。数が不明です。

じゃあ、解決性行きましょう。
解決性の1点目と3点目のところで、不要な人は切る、という話がありました。不要な人は切る。そうなんです。だからこそ、不況期に失業率が増えるんです。私たちのデメリットの話を見て下さい。

3枚目と、1番最後に読まれた、アメリカの話に行きましょう。
まず1点目として、こういった、アメリカやインドというのは、彼らも言っているようにですね、州ごとに法律すら異なるもので、例えば教育レベルだって、そこにいる企業のさまざまな点が違うはずなんですよ。だから、そういったものが本当に当てはまるのか不明です。

2点目として、地域差を考慮しない比較に意味はありません。

北海学園大学教授、小宮、07。
「解雇訴訟の勝敗は、どのような解雇が争われているかによって異なることは明らかである。そうすると、当事者企業規模の大小はかなり決定的となる。すなわち、多くの場合、大企業はしっかりした労務管理を行っているが、中小零細ではそうとはいえない。したがって、小規模企業の多い地域では、整理解雇で企業が敗訴するケースが多くなるのは当然である。その他、企業の業種、企業運営の文化の違いなども考慮して、地域間比較をしなければならないと思われる。」終わり。

というように、地域間比較というのは意味がありません。

3点目として、これらは相関関係であって、因果関係ではありません。ちょっと考えて欲しいんですけど、例えば、インドだったら、失業率が高いところだから解雇規制を厳しくした可能性もありますし、例えばアメリカでも、失業率が高くなる、つまりですね、企業にとって人を雇えないくらい苦しくなるときだったら、企業は多少無理矢理にでもクビにしようとして、その結果、解雇無効の判決が出た可能性だってあるわけなんですよ。そういったことを考えると、この、彼らの相関関係というのは、必ずしも因果関係を意味しないことを確認して下さい。

その次に、2枚目の…最後から2番めの資料で、マクロセンターの話で、労働分配率の話があったんですけど、これは…労働分配率というのは、人件費÷付加価値で求めるものであって、これがだから何か、という話であって、不況から脱却しやすい指標でもなんでもないわけなんです。なんでこれが不況から脱却しやすいのか、彼らが証明すべきです。

で、解決性、上から3枚目に戻って下さい。「成長するんだ」という話があったんですけど、じゃあ、成長する、っていうのはですね、これは、ただ単に企業にとって営業利益が増えたってだけなんですよ。この結果、誰が得したのか、ってことなんですよ。これが労働者に分配されたか、あるいは雇用に回したのか、そこの説明が全くない以上ですね、これをもってですね、肯定側の解決性を取ることはできないと思います。

以上で終了します。

否定側質疑

肯定側質疑:竹久→玉置

竹久: はい、よろしくお願いします。
玉置: お願いします。
竹久: まずデメリットについてお伺いしましょう。デメリットのリンクで使っている資料というのは、これは要するに、リーマンショックのときに、オランダとデンマークでは失業率が高かった、そして同時に、GDPも低かった…
玉置: 低くなった、ですね、はい。
竹久: 低くなった、ですね。わかりました。ということは、例えば、あなた方もおっしゃったように、GDPが低いんだから、それは経済成長が鈍化して、失業者が増えた、っていうリンクも当然あり得ますよね。
玉置: もちろんあると思います。
竹久: ありますよね。そうするとあなた方は、なぜこれが解雇規制によるものだ、というふうに言い切れるんですか。
玉置: 解雇規制の緩和というのが何か、というと、まず解雇規制がきつい日本だったら、Aの2点目で言っているように、失業を抑制できている、と。じゃ、他の事例で見るとどうかな、というと…
竹久: ここまでなんですけど、これって、オランダとデンマークで、同じような経済ショックがあったという前提を置いていますよね。
玉置: そうですね。
竹久: リーマンショックって、でも、例えば金融に依存しているかとか、あるいは福祉がどうなっているかとかで、容易に失業率とか変動し得ますよね。
玉置: もちろんいろんな要素はあると思います。
竹久: じゃあ、オランダとデンマークは、そのような条件が同じなんですか。森永はどのような理由付けで、この2つを比較していますか。
玉置: 特に同じとは言っていないんですが、ただし傾向値として、解雇規制のきつさと関係があるのではないか、という話です。
竹久: わかりました。じゃあいいです。次いきましょう。アタックについて読んだエビデンスについて伺って行きましょう。ミスマッチの話がありました。このミスマッチの話というのは、要するに、労働者から見た時、労働条件が合わない、というものと、企業から見た時、労働者の能力というか、希望が合わないというようなこと、この2つがどちらもあり得ますよね。
玉置: まあ、あり得ると思います。
竹久: あり得ますよね。例えば、解雇するのが難しかったら、なるべく優秀な人を雇いたいですよね。
玉置: 別に解雇するのが難しくなくても、優秀な人を雇いたいと思いますけど。
竹久: ああ、まあそうですね。じゃあいいです。で、次行きましょう。事業分割ができるんだ、という話がありました。これ、実際にどれぐらいの企業がやっているんですか。
玉置: いや、どれぐらいの企業がやっているか、という問題じゃなくて、解雇っていう手段をとらなくても、分割だったり売却だったり、手段があるのに…
竹久: はい、わかりました。じゃあもう一つ聞くんですけど、そうすると、今の企業っていうのは、調子が悪くなったら、すぐに赤字の会社っていうのを作って、それによって倒産させているんですか。
玉置: いや、だから、そういう…ここで2つ場合分けしたくて、今やっているような会社だったら、あなた達も言うように、アフタープランも切るでしょう。逆に、今やっていないような会社が、なんでそういうふうにやるのか、っていうことなんですよ。
竹久: わかりました。次行きましょう。島田のエビデンスなんですけど、これは、最近の判例で、こういう判例がでてきて、そういう傾向だよね、って言っていることですよね。
玉置: そうですそうです。
竹久: はい、わかりました。じゃあいいです。解決性に行きましょう。解決性のところで言っていたのは…色々アタックがありました。エビデンスを使っていたのが、アメリカの事例ですね。
玉置: そうですね、はい。
竹久;そうですよね。ここに関しては、地域差があるかもしれないから、気をつけなきゃいけない、って話ですよね。
玉置: まあそうですね、はい。
竹久: はい、わかりました。それから、この、地域差というのは、どういうものかというと、企業がどれぐらいあるか、とか、そういうことを前提にしている…
玉置: まあ、文化もですし、それこそあなた達の言うアメリカやインドなんて、まさに州内法とかが全然違うようなところであって、そんなものは全然違うだろう、あなた達がデンマークやオランダ、って言ったのと全く同じ理屈で、あなた達のアメリカやインドも否定できるだろう、ということです。
竹久: ああ、なるほど、わかりました。以上です。

肯定側第二立論

肯定側第二立論:岩永哲享 エビデンスコレクション~エビこれ~

はじめます。デメリットから行きます。

デメリットの内因性のところで、まず、不況期でも失業させていないんだ、という話がありました。

まず1点目として、不況期に失業率が上がらないのではなくて、不況期に必要なくなる人を、好況期にさえ雇っていないからだ、という、内因性2のAの話が残っています。で、その上で、プラン後は、不況期の失業率は現状と変わらず、好況期の失業率が下がるので、プラン後の方が望ましいです。

で、2点目として、景気が悪いのに、無理に雇用を抱え込ませると、企業は倒産します。特に近年はそういう状況になってきているんだ、という、観察の話を確認してください。ですので、対応する必要があります。

で、3点目として、プラン後というのは…いいです、飛ばします。
3点目として、プラン後には、不況の期間自体を短くすることができます。これは、解決性の最後の資料で言っています。

4点目として、プラン後には、失業したとしても、再就職が容易になります。実際、解雇規制が厳しいほど、失業期間が短いことが実証されています。

日銀金融研究所、黒田、2004年。
「こうした先行研究の多くは、解雇法制が厳格な国では失業確率が有意に低い傾向にあるとの結果を得ている一方、失業離脱確率については有意に低い(失業期間が有意に長くなる)傾向にあるとの結果を示している。」終わり。

次、発生過程について。

発生過程のところで言われていた、デンマークとオランダの比較の話なんですけど、この実例のどこまでが解雇規制の影響なのかは分析されていません。不況期、特にリーマンショックのような大きな金融ショックの後に、失業率が上がったり、景気が悪化するのは当然ですから、そのうちどれだけが解雇規制緩和によるものなのかは証明されていないと思います。で、またこれが日本の解雇規制緩和にどれくらい当てはまるのかもわかりません。

次、深刻性のところで言われている話、2つに分けられていますけど、結局これって、失業した人にとって、その失業という状況は深刻だって言っているだけなので、じゃあ失業者をできるだけ減らす方向を採用すべきです。

メリットの方へ行って下さい。

まず、内因性の2のAのところに関して。結局…2のAの2枚目のところに関してかな…ミスマッチなんだっていう話がありました。ここに関してなんですけど、能力不足の時に人を切れない場合って、企業は、相当高い能力を証明しないと雇用しないので、その分だけ要求する能力水準に達していない、つまり、ミスマッチ、という状況が増えると思います。ですので、ミスマッチ失業というのを、プランによってある程度改善できると思います。
次、不採算部門から撤退できないんだ、っていう話に関して、いや、他の方法があるじゃないか、って言っていました。まず1点目として、現状で実際できていないじゃないか、っていう私たちの分析が残っていると思います。2点目として、こうやって切り離した企業…子会社とかを作って対応するということは、現実的には難しいです。なぜかというと、グループの中で…グループで決算するようになっているからです。

資料、リクルートワークス研究所所長、大久保、2009年。
「出向などの再配置も、効果が薄くなりました。連結会計となって、子会社に隠すようなことができなくなったこと。そしてカンパニー制などを採用して組織間の垣根が深くなったこと、プロフェッショナル化が進んで職種変更をしにくくなったことなどが背景にあります。」終わり。

ということなので、今後はできません。

で、3点目として、じゃあ、分割して売ればいいじゃないか、って言ってくるかもしれませんが、自分たちの会社で不採算だから使えないっていう部門なのに、買う会社がある、というのはレアケースだと思います。

次、じゃあインパクトの所へ行って下さい。

インパクトのところに対するアタックとして、島田さんの資料を用いて、今はそんなに潰れる、というところまで行かなくても解雇できるんだよ、という話を言っていました。まず1点目として、結局、解雇規制が厳しいということ自体は認められています。で、解雇できていない企業がある、ということも否定されていません。
で、2点目として、そうやって、法律は変わっていないのに、裁判官の判断によってどんどん変わっていくんだ、と。その結果不明確だから、怖くて切れない、っていう状況になってしまっているんだ、っていう、私たちの分析は否定されていません。

次、連鎖倒産とかの…倒産する、というところに関して、そういうのは、危機認識が甘い人たちだから、解決できないんじゃないか、っていう話がありましたけれども、違うんです。実際に、人員整理っていうのが実現できた企業では、業績が改善しているんだ、っていう、解決性1の2点目の資料が残っています。ですので、こういうことが…ちゃんと、人員整理ができれば、改善していくにもかかわらず、人員整理ができていない、っていう問題点は、否定されていません。

次、その後、解決性のところに関して、アメリカの事例とかって、地域比較とかをちゃんと考慮しなきゃいけなくて、本当に日本に当てはまるのか、っていう話がありました。まず1点目として、日本でも実際に解雇規制が弱い方が、雇用される人の数が増えることが明らかになっています。

1980年から2000年までの整理解雇の認められやすさと、雇用される人の数との関係を分析した実証研究を引用します。

大阪大学大学院、奥平、2008年。
「本稿では整理解雇判例に関する裁判所の判断を都道府県ごとに数値化し、その変動を利用することで整理解雇判決が労働市場に及ぼす影響についてパネル分析を行った。その結果、都道府県の政策方針や労働市場の需給属性を一定とした場合、整理解雇無効判決が有効判決を上回っている年には就業率が有意に約0.2%ポイント減少することがわかった。」終わり。

ということで、実際日本でも同じようなデータは出ています。で、この研究というのは、肯定側が問題にしているような、地域の偏りとか、そういうものも考慮しています。実際最も解雇の件数が多い、東京都や大阪府を除いても、同じような傾向が出ることが分かっています。

同じく大阪大学、奥平、2008年。
「東京都や大阪府を外した場合は推定値の優位性が弱まるが、符号に大きな変化はない。また、都道府県トレンドを加えた場合でも優位性がやや弱くなるが、推定値の大きさや符号は変わらない。」終わり。

ということで、結局、解雇規制が雇用を減らしているから、解雇規制をなくす方が雇用が増えるんだ、という傾向自体はどちらにしても認められている、ということです。

すいません、デメリットに戻って下さい。

デメリットの発生過程の資料で、デンマークとオランダを比較して、実際、解雇規制のあるオランダの方がましなんだ、という話をしていましたけれども、じゃ、この資料中で言われているデータのうちで、経済成長の話がありました。しかしながら、この経済成長の部分に関しては、先ほどと同じなんですけど、解雇規制がどの程度影響したのか、わかりません。むしろ逆に、経済が成長しなかった国だからこそ、失業率が高い、という方が、よっぽど説得力があると思います。

じゃ、そういう状況の下で、解雇規制を緩和した方が、企業にとっては望ましいし、また、国全体の景気も良くなるんだ、っていう解決性の議論の方が上回っていると思います。

以上で終わります。

否定側質疑

否定側質疑:松田→岩永

松田: 始めます。
岩永: はい、お願いします。
松田: お願いします。では、DAサイドのところについて打たれていた反駁から聞いていきたいんですけれども、まず2点目の話…固有性の2点目のところで、最後で、再就職が、プラン後はしやすくなるんだ、という話がありましたよね。
岩永: はい、そうですね。
松田: これ、なぜなんですか。
岩永: 雇用されやすくなる、という、肯定側のケースの分析で言っていることから来るものだと思われます。
松田: それって、ケースのどこで言ってましたっけ。
岩永: ケースの、ソルベンシーの1点目もしくは2点目のあたりで言っている話で、要は、必要な人を、プラン導入後には雇用しやすくなるんだから、じゃあ、だったら、雇用する、っていうアクション自体が、日本全体で増えるわけですね。
松田: はい。
岩永: そうすると…
松田: ああ、だから中途も雇われるんじゃないかな、ということなんですかね。
岩永: で、実際にそういうデータが、出ているんだ、というのが、この分析です。
松田: えっと、データが出ているんだ、っていうのは…
岩永: 2ACの反駁のところで読んだ資料です。
松田: 最後の、奥平さんの資料か何か、ということですか。
岩永: いや、そうじゃなくて、2ACで、デメリットに対するアタックとして読んだ、資料の中の、一番最後の所…日銀の黒田さんの資料で…
松田: ああ、そこですね。はい、わかりました。ありがとうございます。じゃ、ケースサイドに戻って聞きたいんですけれども、ミスマッチのところに関して、こういうものは解消していくんだ、という話がありましたよね。
岩永: はい。
松田: それ、なぜなんですか。
岩永: なぜかというと…だから…今後、もし、この人実は能力低かったらやばい、と思っている現状においては、よっぽど能力が高い人って確信が持てないと雇用できないわけですよ。
松田: はい。
岩永: それに対して、プラン導入後っていうのは、そんなに能力高いかどうか分かんなくても、雇ってみて、あ、これダメだった、と思ったら解雇できる…
松田: それ、ケースのどこで言っていましたっけ。
岩永: それは…えーと、例えば、今そういうふうに…能力が分からないと雇えない、というのは…例えば…
松田: どこで証明してますか。
岩永: …内因性の1点目もしくは2のAから言えると思います。
松田: 2のA。2のA、ですか。
岩永: えーと、つまり…すいません…要は、現状で規制が厳しいから、将来解雇できない、という状況については認められていると思います。
松田: そこから、まあ、能力も推察されるだろう、ということですか。
岩永: だとしたら、私が今申しましたように、能力の高い人じゃないと雇用できない、っていう企業判断は、十分合理性があると思います。
松田: ああ、なるほどなるほど。
岩永: で、その判断、っていうのが、プラン導入後には、そこまで厳格にやる必要がなくなる。なぜかというと、間違っていたら解雇できる、っていう状況が生じるからです。
松田: ま、後から切れるから、っていうことですね。
岩永: はい。
松田: はい、わかりました。じゃあ、その…最後のところ…すいません…内因性のBのところに打たれていた反駁のところで…躊躇のところですね。これ、最後で、何か、人員整理が、その…できない…いいです、ここ飛ばします、すいません。じゃあ、DAサイドで…すいません、もう一回戻るんですけれども…再就職が難しい、の話の前に、不況期の方が、アフタープランの方が、失業期間が短くなる、っていう話がありましたよね。
岩永: ああ、はい…ま、基本的に同じ話だと思いますけど…
松田: これも同じ理屈、ってことですか。
岩永: そうですね。だから、雇用されやすくなるんだから、その分…
松田: なるほど、雇用が増えやすくなる…
岩永: あ、いや…[時間切れ]

否定側第二立論

否定側第二立論:中島有希大 FA

はい、じゃあ固有性から。

まず、彼らは、好況期にさえ採っていないから、失業率が低いんだ、っていう話があったんですけど、私たちが言っているのは、失業率の増加分が多いんじゃなくて、失業率そのものが少ないんですから、まず、この時点で、日本は解雇規制が厳しいことによって、失業率をそもそも抑えられているんだ、この部分を伸ばして下さい。

で、今後っていうのも不況であることを、まず証明していきたいと思います。

まず、現在不況です。実際に最新の調査でも、景況感は後退しています。

時事通信、2013年10月18日。
「時事通信の10月の世論調査で、安倍内閣が発足した昨年末以降、景気の回復を実感するかどうかを尋ねたところ、「実感する」と答えた人は18.5%にとどまり、「実感しない」が76.4%に達した。」終わり。

で、今後も長期的に、少子高齢化で、不況が常態化する可能性が高いです。

東奥日報、2012。
「景気の悪い要因に「個人消費の低迷」を挙げた企業が多かった。ただ個人消費は不況だけでなく、少子高齢化の進展により今後も減少傾向は避けられない。」終わり。

で、実際に、この不況期に吐き出されることは、彼らのメリットでも述べられています。で、この不況期に吐き出される人…不況期に、現在吐き出されていない人たちっていうのが、465万人います。

Web R25、2012。
「内閣府の調査によると、今年9月時点で全雇用者の8.5%にあたる最大465万人が「雇用保蔵」状態。[中略]「雇用保蔵」とは、実際の常用雇用者数と最適な雇用者数の差のこと。要は、必要以上の人員を企業が抱えている状態ということだ。[中略]雇用保蔵は、リーマンショックによる景気の低迷で急増した。企業の生産活動が縮小して仕事が減ったためだ。[中略]日本では整理解雇の条件が厳しく規定されているため、企業が過剰人員を抱え込まざるをえないというわけだ。」終わり。

こうした過剰雇用は、ここでも述べているように、景気低迷による生産活動縮小の結果なので、労働者に責任はありません。
そして、実際に解雇規制を緩和することによって、失業率が増加します。実際に諸外国で見ても、不況期にはほぼ確実に切られています。

朝日新聞、2013年10月19日。
「ILOの調査で、ユーロ圏17ヵ国のうち、13ヵ国が08~12年に解雇規制の緩和を実施。[中略]だが、トレス氏は「緩和が間違っていたとまでは言い切れないが、緩和のタイミングは正しくなかった」と指摘。景気の停滞で企業が新規雇用する余力が生まれず、解雇だけが進んだ。スペインでは25%を超える失業率を記録。」終わり。

実際に、他にもドイツとかでも、解雇という慣行が無かった国でも、失業が増加しています。

ジャーナリスト、磯山、2012。
「ドイツは一度採用したら解雇はほとんど無理と言われるほど厳しかったが、法律を改め、解雇をしやすくしたのだ。[中略]失業者が急増したのは、改革によって余剰人員の大幅な削減が容易になった企業が、相次いでリストラを実施したからだ。結果、05年には失業者数が500万人を突破。失業率は12.7%にまで高まった。」終わり。

彼らは、国際比較とかはダメなんだ、とか言ってくるかも知れませんけど、実際、同一国内で解雇規制を緩和したっていう、この、プランに当てはまっているものを、実際に見たときには、失業率が増加する。この部分が残っている以上、私たちの方に優位性があると思います。

それから、こうやって切られる人は、ほぼ…出る確率はほぼ100%なんですから、肯定側は、この100%をカバーして上回る数の雇用が増えることを証明しなければなりません。

で、また、仮に、雇用がトータルで増えるとしても、少なくとも、クビを切られる人も出ます。また、それに加えて、解雇規制の緩和自体が、自由に解雇できるという風潮も作り、労働環境が悪化します。

ジャーナリスト、溝上、2013。
「いちばん怖いのは世の中の風潮。経営者の多くは法律に詳しいわけではない。結果的に経営者が今まで正社員を解雇できなかったが、金を払えば切れるんだ、労働者も金を払って切られるかもしれないという風潮が蔓延し、圧倒的に労働者が不利になるのは間違いありません。」終わり。

深刻性の2点目のところを伸ばして下さい。解雇は、労働者の人格権を侵害するから規制緩和は許されない、という話を伸ばして下さい。ここで解雇されやすいのは、過剰雇用に加えて、生産性が賃金より低い人です。

筑波大学大学院、江口、2007。
「労働者が解雇されるのは、その生産性が賃金を下回るからである。」終わり。

そして、クビになるのは本人の責任ではありません。二つの場合にわけます。

1:中高年。解雇規制を緩和すると中高年がターゲットにされます。

東京大学教授、内田、2002。
「経済の低成長時代に入り、衰退産業の部門を持つ企業がその部門を縮小、ないし廃止したいと考えたとき、内部市場を活用するだけの余裕がない場合が増加している。とりわけ、年功賃金制度によって生産性以上の収入を得ている中高年労働者を削減することへの需要は大きいと思われる。」終わり。

しかし、それは若いときに生産性より低い賃金で働いていたため、生産性を下回るのは当然です。

大和総研、渡辺、2003。
「年功序列の賃金体系は若年期に支払われる賃金が労働生産性を下回る一方で、壮年期にはそれを上回る賃金が支払われるといういわば賃金後払い的な性格を持ち、終身雇用または長期雇用によって担保される制度である。」終わり。

そして、こういう人から雇用維持の権利を剥奪するのは許されません。なぜならば、彼らは「雇用を維持される」という契約で入っているからです。

労働政策研究・研修機構客員研究員、濱口、2013。
「現在の大企業「正社員」の大部分は、ジョブ型の欠員補充で「就職」したのではなく、メンバーシップ型の新卒一括採用で「就社」した人々であり、「何でもやらされる」代わりに「雇用が維持される」という約束を信じて働いてきた人々です。そういう権利と義務のバランスのうえにいる彼らを「非常に恵まれた」と決めつけて、どんな命令にも従わなければならないという義務をそのままに、雇用維持という権利だけ剥奪することが許されるはずがありません。」終わり。

2:若年者。意欲が高くても、育成余力がないため、仕事を与えられないだけで、本人の責任ではありません。

Web R25、2012。
「特に懸念されているのは20代若手社員の社内ニート化だ。「以前のように職場で育成する余力がなくなり、意欲の高い若手社員でも放置されるケースが目立ちます。仕事に必要な能力が身につかないためいつまで経っても仕事を任せられず、結果として社内ニートになってしまうんです。」終わり。

はい、で、ちょっと戻りたいと思うんですけど、発生過程の方にですね、労働者の立場が悪くなるんだ、といったところに追加していきたいと思います。

そうなってしまう…労働者の立場が悪くなってしまうと、クビにならないためにサビ残をしたり、ハラスメントされてもものを申せなくなるようになります。

弁護士、佐々木、2013。
「職を失えば生活に困る労働者がほとんどです。そうすると、解雇自由な社会で労働者は何とか解雇されないために、会社のためにサービス残業をしたり、ハラスメントをされても我慢するという状況になることが予想できます。」終わり。

実際に解雇規制は労働者の権利保護の要であり、それがなくなると権利が行使できなくなります。それは非正規の現状を見ればわかり、プラン後は、日本の労働者全部がそうなってしまいます。

弁護士、鴨田、2007。
「解雇規制は労働者の権利に実効性を付与する要である。どんなに立派な基準法や契約法が制定されても、そこで定められた権利行使に対して、解雇権が自由に行使されるのでは、権利が画餅であることは、今日の非正規・有期雇用労働者の実情を引き合いに出すまでもなく、明らかである。解雇が自由化されれば、正規と非正規の「カベ」は低くなるであろうが、その状況の下では全ての労働者が事実上、日々雇用労働者に化してしまう。」終わり。

じゃあ、メリットの重要性に、アタックを追加します。

彼らは、企業が生産性を高めて、得するのがいいんだ、という話があったんですけど、それっていうのは、労働者に返って来ません。

日本弁護士連合会、2013。
「現に、1997年と比べて企業収益は1.63倍に増えているにもかかわらず、労働者の賃金は12%も低下している。国際競争に勝つことを目標として各国が減税や労働基準・環境基準の緩和などを競うことは、「底辺への競争」でしかない。[中略]経済成長は、全ての国民の暮らしを豊かにするための手段に過ぎないのであり、国民を犠牲にする経済成長など本末転倒である。雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない。」終わり。

終わります。

肯定側質疑

肯定側質疑:岩永→中島

岩永: はい、よろしくお願いします。
中島: お願いします。
岩永: デメリットに追加した議論を見ていきます。まずはじめに、一番最初に読まれた資料で、今不況なんだ、という話がありましたけど、これは、誰に聞いたアンケート調査ですか。
中島: 一応、世論調査なので、国民に聞いた話ですね。
岩永: で、それが、ここで言っている雇用の状況とどう関係するんですか。
中島: 雇用の状況と…だって、実際に、そういうふうに雇用されているとか、そういうふうなことを感じる国民自体が、景気が悪い、っていう風に感じているわけなんですから、これに当てはまると思いますし、次の東奥日報の資料でも、やっぱりこれからも、個人消費の低迷とかが、少子高齢化によって起こるんだから、景気が悪くなってるよ、っていう話です。
岩永: なるほど、わかりました。その消費の低迷の話なんですけれども、それっていうのは、どれくらい起こるんですか、今後。
中島: どれぐらい起こる…ま、少子高齢化によって起こるっていうので、これから起こる話ですね。
岩永: で、これによって、今後不況から絶対に脱却できないんだ、って言ってますか。この資料。
中島: 絶対では無いですけど、不況になる可能性が高いんですから、その不況…
岩永: 可能性が高い…すいません、不況になる可能性が高い、って言ってましたっけ。
中島: 不況になる…だから、不況になるって…減少…
岩永: いいです。次行きます。で、その後、何点目だ…5枚目の資料かな…ドイツの話がありましたよね。この、ドイツの話なんですけど、2005年にいっぱい失業者が出た、っていうのは分かったんですけど、じゃあ、その他の時期はどうだったんですか。
中島: そのほかの時期…だから、解雇規制を緩和した時に、失業数が増加しているっていうことは…
岩永: その時に、一時的に増加したのは分かったんですけど、その後どうなったかを聞きたいんです。
中島: その後は述べてないですけど…
岩永: わからないんですね。あ、いいです。
中島: 解雇は一時的でも深刻だ、という話をしています。
岩永: えっと、で、じゃあその前の…どこだっけ…スペインの事例でしたっけ。
中島: スペイン…えっと…
岩永: ユーロ圏の話がありましたよね。
中島: ああ、はいはい。
岩永: ここで、じゃあ、解雇規制を緩和した時に、じゃあ…これって…すごく不況な時に緩和したら、まずかったよ、って話ですね。
中島: えっと…そうですね。まあ、景気が悪い時に解雇規制を緩和すると…
岩永: で、あの…聞きたいんですけど、これって、リーマンショック後の話ですよね。リーマンショック直後ですよね。
中島: ま、2008年から2012年ですから、そうですね。
岩永: で、この資料の中で何言われていたかって、解雇規制が間違っていたとは言わないが、タイミングは間違っていた、って言っているんですよね。
中島: 不況になったら切られる可能性は一時的にも出る、という話ですね。
岩永: はい、わかりました。次行きます。えーと、で…そうですね…その後に言われている話で、サービス残業が増えるよ、とかいう話を、デメリットの追加の一番最後で言われていたと思うんですけど…すいません、ここにつながっている、その前の溝上さんの話ですね。経営者は法律に詳しくないって、言っていましたけど、どれくらい知らないんですか。
中島: どれぐらい…どれぐらいかは…
岩永: 今の解雇規制については知っているんですよね。だって、この分析の前提として。
中島: ん~…
岩永: じゃないと、お互いの議論、全部成り立たないですよね。
中島: ん、まあまあまあ…
岩永: なのに、どうして、この…なんでしょう…
中島: 例えば、経営者だけでなくても、労働者が知らないっていうのは十分におこりうる話で、労働者が、いつ解雇されるか分からない、だからこそ、サービス残業…いつ解雇されるか分からないという不安から、サービス残業とかハラスメントに耐えるとかあると思います。
岩永: わかりました。それって、現状とどう変わるんですか。
中島: 現状とどう変わる…だって、現状って解雇規制厳しいじゃないですか。
岩永: だって、現状労働者は知らないっていう前提で、今話しましたよね。
中島: 現状は、解雇が厳しいっていうのは、ある程度常識なんじゃないかな、って思います。

否定側第一反駁

否定側第一反駁:松田拓 FA

はい、始めます。じゃ、まずDAサイドから行きましょう。

まず、彼らは、いろいろ反駁があったんですけど、まず1点目で、倒産は防げるんだ、って話がありました。固有性のところですね。ここに関して、まずこれは、メリットが前提である、というところを確認して下さい。

2点目として…3点目の話として、彼らは、不況期の方が…失業期間が短くなるんだ、という話がありました。まず1点目として、こうした比較分析…国際比較分析の結論は、総合的に見て結論が出ておらず、また、国ごとにもさまざまな制度が異なることから、信憑性も低いです。

大阪大学大学院、奥平、2008。
「同様に、失業率・長期失業率に対する解雇規制の影響についても一定の結論を得ることはできない。Heckman and Pages・Serra(2004)は、こうした国際比較分析の結果の不安定性は、解雇規制変数の定義や国内の規制変動の少なさから生じるものだと指摘する。」終わり。

2点目として、短くなるといっても、どれだけ短くなるかというのは不明です。なので、この差というのがわかりません。

彼らは、インパクトのところについて、結局、失業するのが問題なんだ、っていう話をしていたんですけど、そうじゃないんですよ。解雇が悪い、っていう話をしているんですよ。じゃ、それはどこかっていうと、肯定側っていうのは、結局、今どういう人が失業している…どういう人が救われるか、っていうのを述べていないんですね。で、我々のところ、インパクトの1点目を伸ばして欲しいんですけど、今、まじめに働いている人たちっていうのが、ローンを当てにしていたのに、プラン後にいきなり失業してしまうというところが、深刻だ、という話をしているんです。なので、質的にも差異がある、ということが言えるんじゃないかな、というふうに思います。

じゃ、メリットのサイドに行きましょう。解決性のところを見て下さい。

彼らは…まず…統計のところを見ていきます。彼らは、日本の判例を見ると大丈夫なんだ、という話がありましたが、ここに反駁していきます。まず1点目として、日本の場合っていうのは、判例に地域差があるから…地域差があると考える方が不自然です。

北海学園大学教授、小宮、2007。
「はたして地域差があると明確にいえるのか。アメリカと比較しているが、アメリカの場合は、解雇規制は州法なので規制の地域差はある程度明確であるが、わが国の場合は県単位の判例法があるわけでなく、裁判官は全国を移動するのであって、条件が全く違うという初歩的な認識が欠けているのではないか、と思われる。」終わり。

2点目として、さらに、日本の判例の分析については、サンプル数も少なすぎて、専門家の目から見ても非現実的なものです。

弁護士鴨田が責任者の、労働弁護団、2007。
「そもそも51年間でわずか174件という少なさは、分析の非科学性を示すものではないだろうか。しかも、この少なさの中で、「例として」挙げた79年東京では労側の1勝2敗として「判決ショックとして『-1』とカウントするのである。労働法に係わる研究者・実務家で、このような粗雑、無謀、安易な分析手法を発想する者は一人もいないであろう。」終わり。

このように信頼できません。だからこそ、私たちの言うように、同一国の解雇規制を緩めたらどうなるか、というところを見た資料を信用して下さい。

3点目として、この前提というのは、経営者が自分の地域の判例や他の地域の判例を地域別にいろいろチェックしているという非現実的な前提に基づきます。なので、ロジックとしても非常に怪しいです。

4点目として、彼らは因果関係ではなく相関関係に過ぎません。なので、先程から言っているように、相関関係と因果関係が逆、という可能性もあるので、そこも確認して下さい。

では次。彼らは、2点目の、東京と大坂を抜いたから大丈夫だよ、と言ってくるかも知れませんですけど、まず1点目として、我々が言ったように、地域ごとに違うわけですから、東京とか大坂とか抜いても関係ないと思いますし、因果関係が逆、という部分も残るんじゃないかな、というふうに思います。

で、解決性の1点目の、不要な人は切る、だから過剰雇用の人が切られてしまうんだ、という話も伸ばしておいてください。
では次、内因性のところを見て行きましょう。

まず、観察のところ、数が不明、という部分が残っています。ここも伸ばして下さい。

で、ミスマッチの話に関してなんですけれども、まず1点目として、企業側がどうか、というのを見たいんですけど、企業側っていうのは…企業側が、能力が不足していたら、どれくらい雇用をためらっているのか、という論証は、彼らはしていません。

2点目として、労働者側はどうか、っていったら、ミスマッチが起こっている、つまり、労働者が行きたくない、っていうふうに思っている可能性もあるわけですよ。だから、そういうことを考えると、このミスマッチっていうのは解消していかないんじゃないかな、って思いますし、じゃ、3点目として、これは重要性にも当てて欲しいんですけど、こういう人の…要するに、選り好みをかなえるために、なんで国がわざわざ動かなきゃいけないのか、っていうところに関しての証明も、不足していると思います。

で、重要性のところに関して、彼らは、倒産の話があったんですけれども、人員整理が、本当にプラン後にできるのか、っていう話なんですよ。イチかバチか本当にやばいんだったら、今でも、こういう人って、クビを切れるわけですから、じゃあなんで今できないか、っていうと、それは、判断ミスだったりとか、そういうところがあるんじゃないかというふうに思います。

肯定側第一反駁

肯定側第一反駁:竹久真也 エビデンスコレクション~エビこれ~

始めます。

内因性。内因性のところのAの部分で、ミスマッチの話がありました。これに関しては、結局のところ、企業が、解雇は難しいから、より絶対大丈夫だ、という人しか雇いたくなくて、そういう意味でミスマッチが拡大する傾向があって、プラン後緩和される。この部分がドロップされています。取って下さい。

で、次、重要性に対して、利益を還元しない、というアタックがありましたが、これ、結局私たちが内因性で述べたように、不採算事業があったりとか、それから労働者が将来解雇できないから、保険のために利益を貯めているとも考えられるわけで、プラン後改善すると思います。

では、ソルベンシー。

ソルベンシー、奥平のエビデンスに対してアタックがあったところに反駁していきます。まず1点目。地域差があることを考慮していない、って言っていました。しかしながら、奥平の研究で、実際に、数字的に、地域差が確認されていますから、この、地域差なんてあるわけない、という彼らの推測は当たっていないと思います。

2点目のエビデンス。サンプルが少ないんだ、という話でした。サンプルが少ないっていうのは、これ、どういう意味で不十分と言えるのか、っていうのは、このエビデンスから示されていませんから、この統計の信頼性を何ら阻害するものではないと思います。

最後に、アメリカのエビデンスを伸ばしたいと思います。結局、アメリカとかインドっていうのは、要するに、財政状況とか財政政策とか政治政策が似たような地域なのに、それなのに、比べてみたら、結局解雇規制が強くなると失業率が下がるって、因果関係が認められているわけですから、彼らの逆相関やなにか、という反駁はそもそもあたっていませんし、このエビデンスも残っています。伸ばして下さい。以上です。

で、次。否定側のフローへ行って下さい。

否定側のフロー。まず、1NRで追加していた…否定側のフロー、1NRで、国際比較があてにならない、っていうエビデンスを読んでいました。しかしながら、これはディストーションです。この後で、国内比較なら信用できるというふうに、奥平が言っています。

奥平のエビデンスを引用します。
「彼らは自身の研究では、Heckman and Pages-Serra(2000)で得られた結果が分析対象国を増やすことや規制変数の分解等に対して脆弱であることを示し、国内データや企業レベルのマイクロデータを用いた分析を行う必要性を強調した。」終わり。

ということです。ですから、国内データを強調すべきと、奥平も言っています。そして奥平が支持している研究は何か、というと、アメリカとか、インドとか、日本の実証研究であって、ここでは実際に雇用率が上がったりとか、雇用の流出入率が改善するって言っているわけですから、彼らは、奥平の…オーソリティーに乗るのであれば、我々の議論にボートできると思います。

じゃ、次行って下さい。2NCでアタックされた議論に追加していきましょう。

まずですね、不況なんだ、っていう話が、2枚ぐらいのエビデンスであったんですけれども、これ、結局現状の不況がもし続くんだったら、それこそ、彼らが言っているような、雇いつづけるなんてことは不可能な話で、潰れてしまいますよね。そうすると、結局固有性がなくなっちゃうと思います。

2点目として、アメリカの…私たちがソルベンシーでも言っているように、不採算事業から撤退できることによって、不況期が短くなるわけですから、この部分によって、我々の方が、メリットが上回ると思います。

では次、465万人の過剰雇用がいるんだ、っていう話がありました。しかしながら1点目として、これ、過剰雇用として推計される人の全員が解雇される、というのは間違いです。

財務省大臣官房、森田、2010年。
「企業における雇用保蔵は需要が回復したときの労働力を確保しておくためなどの目的があるとも考えられる。また特に製造業においては、高度な技術を要する作業に従事する雇用者は多数存在すると考えられる。」終わり。

よって、プラン後解雇される社員というのは、好況期にすら活用することができない社員であって、このような社員を無理に雇用するよりも、より能力のある人が雇われたりとか、そういうムダな人っていうのが別の場所に行けるっていう方がメリットだと思います。

3点目として、このような過剰雇用の解雇っていうのは、プラン導入で一度起こるだけでして、プランを導入しなければ、このような過剰雇用を維持するために、企業の効率が下がり、潜在的な失業が発生しています。中長期的にもメリットが生まれます。

次、ILOのところに行って下さい。この、ILOの事例っていうのはですね、結局、リーマンショックっていう、非常に、歴史的に大きな経済ショックのときに、失業率が上がった、っていう話は、これ、本当に解雇規制の影響かどうかわからないと思います。

で、次。ドイツの実例を彼らは伸ばすかもしれません。しかしながら、ドイツっていうのは、実際この後経済が成長しています。

経済ジャーナリスト、磯山、2011年。
「ドイツでは「解雇」をしやすくした結果、短期的には失業者が500万人を超えた。ところが長期的には、雇用の流動性が高まり、逆に労働市場が拡大して失業者は減った。[中略]硬直化した日本の労働市場にとって、ドイツの事例は何よりの教訓になる。」終わり。

というわけで、これ、全く同じエビデンスで…著者の意図を曲げているわけですから、むしろディストーションじゃないかな、と思います。

じゃ次。議論を追加された、何か…クビになることを恐れる、っていう話がありました。ここに関して、1点目として、法律上、経営者が気に入らないから、というだけで解雇できないということは、プラン前もプラン後も変わりません。ルールを守る、つまり、いうことを聞かないと解雇する、という脅しをしない企業は、プラン後も解雇する、とは言わないと思います。

2点目として、プラン後というのは、今まで論じてきたように、中途採用というのが盛んになるわけですから、あまりにひどい環境だったら逃げることができると思います。ここを伸ばしてください。

最後。何か、年功賃金で長く雇われている人とかいるんだ、っていう話なんですけれども、実際に企業の寿命っていうのは短くなっています。

内閣府、2013年から。
「2012年の一年間に10,633社の倒産が観測されたが、平均的な業歴は25年程度であった。なお、同年の法人企業数は110万社程度、会社都合の失業者数は102万人であった。倒産せずに廃業する企業もあることから、廃業率によって企業が40年間生き残る平均的な残存確率を機械的に求めると、2000年代平均で24%である。したがって、40年以上の長期に渡って働き続けるということは、一度や二度の転職は当然発生し得ることであり、そうしたことを前提に社会の仕組みを作り上げていくことが、雇用安定化の鍵となるだろう。」終わり。

で、瀧本の分析と合わせて言うとですね、要するに、今後経済サイクルというのは短くなっていって、どんどんこういう…途中解雇とか、それから、育ててもらえない、という事例はたくさん発生するわけですから、現状のシステムの維持可能性がないのであれば、むしろ新しくできるようなシステムにすべきです。

以上です。

否定側第二反駁

否定側第二反駁:玉置繁之 FA

はい。まずですね、吐き出される人がいるということ、これは肯定、否定ともに合意していることなんです。じゃあ、肯定側が勝つためには何かっていうとですね、この、吐き出される人以上の雇用が生まれる、ここまでメリットが大きいんだ、そこまでの十分な論証がなければ、否定側にボートしてください。

では、デメリットに行きましょう。

デメリットのところ…ま、いろんな複雑な議論があったんですけど、とにかく465万人過剰雇用がいる、ここはファクトとして認められました。じゃあそれを本当に吐き出すのか、というとこについて。で、ここについて合意しているのはですね、肯定側の解決性の1点目の冨山ではですね、ま、こういうふうに、切りたくなったら切る、って言っていて、ポストセブンでも、過剰雇用を一気に吐き出す、こんなことを言っているわけなんですよ。さらにですね、不況期だったら切りたくなるのは、ま、当然だと思います。こういったことから考えてですね、切られる数というのは相当数あるだろうと思います。で、まあ、仮にですよ、仮に4分の1だったとしてもですね、465万人だから、100万超なんですよ。果たしてそれ以上のものをですね、肯定側が言えているのかということ、それは言えていないと思うんですね。

じゃ、個別に見て行きたいと思いますけど、まずですね、デメリットのフローのところに対して、ディストーションじゃないか、ってあったんですけど、これはディストーションじゃないです。何かっていうと、奥平は、別に長期失業は国際比較でみつかるとは思っていない、ということ、これは奥平自身の分析なんですよ。で、その後の、彼らの奥平の分析に対する反論は、それはまた別の主張に対する反論なんですから、これはディストーションではありません。で、ですね、こういった国際比較では全然わからないということ、これは認められていますし、少なくとも就職しやすい、どれぐらい短いのか、ということもわかりませんから、ここは肯定側のボーターにはなりません。

じゃあ、その次に対して。中長期的な面では、という話があったんですけど、それは私たちもそうなんですよ。なんでかって言ったら、不況になるたびに、吐き出されるわけで、それって確かに今は465万、でも、また好況になってちょっと戻るかもしれないけど、また不況になったら戻る、そしてですね、今後は不況になりやすいんだ、少子高齢化でどんどん消費が減っていくからだ、っていう2NCの話、ここを伸ばして下さい。ですから、今後は不況の方が多いわけですから、切られる方、こういった方がむしろ多いと思います。

で、じゃあ、ドイツの話なんですけど、ここに関してはですね、いろんな統計をまとめて話したいんですけど、結局、この試合で信頼できる統計は何一つないんですよ。なんでかっていうと、彼らも言っているように、この、ドイツっていうのも、好況になったから、だから雇用を増やしただけであって、解雇規制のおかげかどうか、というのは、ま、彼らがリーマンのところに打っていた反論のように、分からないわけなんですよ。確かに、私たちも、EUの話とかも、本当にこのせいかはわからないんです。でも、ロジックで考えて下さい。ロジックで考えると、465万過剰雇用がいる、そしてそれを切りたいインセンティブがある、そしてそれがほんのちょっとであったとしても非常に大きな数である。ここのロジックは、完全に我々が残っているんですよ。ですから、我々の方が大きく取れると思います。

じゃあ、そこがわからなかったとしてどうなのか。長期的には、中長期、っていうことは一緒なんですが、だったら私たちの方を重視すべきです。数がわからないとしても我々です。なんでかっていうと、Cの1点目を伸ばしてください。つまり、彼ら、っていっているのは、誰を救うのか、全く言っていないんですね。それに対して、私たちっていうのは、ずっと、長期雇用っていうのを約束を信じて、まじめに働いてきた、若い頃は低い賃金でそれでも文句を言わず働いてきた、そういった人たちで、賃金を前提に生活を立てている人がいるんです。そういったものがなくなったら、一気に生活が壊れてしまう、ここなんですね。ここに対して、これ以降反論があったとしても、当然遅いわけですから、ここの比較というのは、当然残ったと思います。

じゃあ、メリット、それ以上に残っているのかということ、ケースに行きましょう。

ケースでですね、雇用が増えるロジックって、大きく二つだったと思います。まず一つっていうのが、倒産の話で、ここに関しては1NC、1NRで言っているようにですね、結局、本当に倒産しそうな企業であったらですね、曖昧だろうがやっていたはずですし、そうじゃなかった、っていうのであれば、それは別の要因があったんだろう、例えば、人情だったりとか、判断ミスとかだろう、っていう話ですね。

で、そこで、すいません…ちょっとデメリットの方のフローなんですけど、ここに対して、今後倒産してしまうんだ、っていう話がありましたが、まず1点目として、25%は確実に残っているわけですし、2点目として言うならば、逆に言うならば、ここで465万人のうちどれ位が切られるのか、例えば、この会社倒産の中にはですね、一人でやっているような、そんなちっちゃい法人成りした企業とかもあるわけですから、そこは不明です。

ケースに戻って下さい。ごめんなさい。

ケースのところで、能力不足でためらっているところがある、ということ、これは確かにゼロではないでしょう。しかしそれが100万超えるんですか。そこの数を全く肯定側は証明してませんよね。それに対して私たちは、いろいろなミスマッチがあるとかですね、そういったことを証明しています。

で、さらに今でいうと、少なくとも短期的に見るとですね、過剰雇用なわけですから、切る方が大きくなるでしょう。そういったものを補って余りあるほど中長期的にメリットなのか、そこは証明できていないと思います。それもわからないのであればですね、2NCで言ったように、サビ残とかさせられてしまうかもしれない。クビを恐れちゃうんですよ、労働者側が。クビになるかもしれないと恐れるわけですから、ここもやはり否定だと思います。

肯定側第二反駁

肯定側第二反駁:岩永哲享 エビデンスコレクション~エビこれ~

始めていきます。

まず、この試合の中で、とりあえずお互いに合意している価値観は、失業は辛い、ということです。これはまずいんだ、ということ。それは特にデメリットの深刻性の2点目のところで言われているように、労働を喪失している状態というのは、人格に関わるような深刻な問題なんだ。だとしたらどうすべきかっていったら、日本と…国としては、そういう状況にある人間を、なるべく日本国内に生みださないようにする政策を取るべきだ、というのは、お互いに、ほぼ合意しているところじゃないかな、と思います。
じゃあ、そういう状況になる人が、現状とプラン後、どちらが多いのか、というので、考えていく必要があります。

じゃ、まず…そこで否定側が何を言っていたかっていうと、プランを導入すると失業する人が増える、なぜかというと、クビを切られるからだ。一見単純なストーリーなんですけれども、ここのストーリーの中で、否定側さんは重要な部分をちゃんと論じていません。それは何かっていうと、例えば、否定側さんが、クビを切られると言っている、過剰雇用の465万人ですとか、あるいは、現状で失業がうまく抑制されてきた、っていう分析の中で、雇用されてきた人たち、こういう人たちっていうのが、今後現状を維持すれば、雇用され続けるんだ、ということを、否定側は証明できていません。じゃあ、この人たちが、今後どうなっていくのか。私たちが、1ACの観察の段階で、あるいは1ARの最後に、言ってきたように、結局、現状のシステムっていうのは、つまり、今のような、同じ職場、同じ環境で、40年間働き続けることは不可能になってきている、なぜかというと、会社が潰れてしまう、あるいは、そうでなくても転職前提の社会になっていくからなんだ、この部分は完全に残っていると思います。

で、それに対する否定側からのアタックって、結局、数量がわからないとか言っているだけで、一般的な社会の傾向として、こうなっていくんだ、っていうことは否定されていませんし、実際に40年間生き残れる会社が24%しかない、っていうことも残っています。

そうすると、結局400万人のうちほとんどは、現状を維持したとしても結局失業してしまいます。なので、この部分を大きなデメリットだと取ることはできないと思います。

他方で、じゃ、こういう人たちの雇用を維持しようとし続けていくとどうなるか、というと、メリットのところで言ってきたように、じゃ、この人たちの雇用を維持しようとし続けてきた結果、企業の業績というのが、極めて深刻な圧迫を受けている、と。それは、不採算部門から撤退できない、であったり、代わりに正社員を新たに雇うことができない、であったり、といった面です。なので、この部分がなくなることによって業績が改善するんだ、という、解決性の1点目の2枚目の資料…つまり、実際に人員削減をしたところで業績が改善しているんだ、って議論はそのまま残っています。ですので、少なくともプランを導入することによって、まず企業業績が改善する、これは言えていると思います。

じゃ、その上で、じゃ、業績が改善した企業が…企業業績が改善するとどうなるかというと、それ自体がまずメリットだと言うこともできますし、加えて、業績が改善するわけですから、その分倒産を回避できる確率というのは高くなっていくと思います。少なくとも、現状を維持した場合よりも倒産はしづらくなる。

さらに、そう考えていくと、現状を維持する場合に比べて、プラン導入後の方が、企業が倒産して一斉に失業してしまう、という事態は避けられると思います。それは、企業の一部分を切った場合に比べても、失業者を吐き出す数が少ないっていうのは一般に言えると思います。

で、その上で、じゃあ、それで言えないんだったら、統計データないしは否定側から挙げられてきた実例の話を見て行きたいと思います。この部分で、否定側さんが何を言ったかというと、結局全部信用できないじゃないか、って言ってるんですけど、そうじゃないです。何かっていうと、否定側さんが言っているのって、この時点でこうなりました、っていう、一時点の話をした資料をいくつも並べてきただけで、結局じゃあ、ドイツの事例はその後改善しているし、ユーロ圏の話だって、リーマンのときの話でしかない、と。じゃ、その後どうなったか、というと、確かに改善しているんだ、って話は残っていますし、実際、奥平さんの分析でも言ってきたように、国内の分析については、やっていく必要がある、つまり、研究者自身がそれに意義があるんだ、っていうことを認めているわけです。

じゃあ、そういう分析をしていったらどうなるか。メリットの解決性の2点目のところで言っているように、アメリカ、あるいはインド、どちらの国でもやっぱり、こうやって雇用状況は改善してきたんだ。じゃあ、同じことを日本で分析したら、日本でもやっぱり改善してきたんだ、という分析がなされている以上は、このデータから、日本でも改善すると思われます。

終わります。


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