第24回JDA ディベートセミナー報告



 2003年4月27日に代々木オリンピックセンターで開催致しました第24回JDA One-dayディベートセミナーの報告をさせていただきます。

 セミナー受講者は30名(うち11名が学生)でした。今回はゼミやクラブでディベートを体験したことのある学生さんやディベートを見たことのある社会人の方など、少しばかりディベートをかじったことのある方が通常より多かったようです。午前中は安井省侍郎氏(JDA理事、厚生労働省勤務)を講師にお招きして、ディベートとは何か、交渉・おしゃべりとは何が違うのか、といったディベート初心者にとって重要な項目を詳しく解説していただきました。午後は「日本はサマータイム制を導入すべきである」という論題の下、8チームに分かれて練習試合。試合準備指導や試合の講評は、安井さんに加え瀬能和彦さん、大野秀樹さん、筧一彦さんにお手伝いいただきました。以下、安井さんの講師報告のあとにアンケートの回答を掲げましたが、講義、練習試合ともに好評でした。
 次回は9月7日に開催致します。皆様のご参加をお待ちしています。
  
JDA理事(セミナー担当)篠 智彰

講師報告


 第24回のセミナーの講師を務めました安井です。私自身としては講師をつとめるのは2回目で、約3年ぶりとなりました。3年前と比べると、やはり、ディベートサークルで活動している人や、大学の授業でディベートの準備のために参加した人など、いろいろな場所でディベートを経験する機会が着実に増えているのを実感しました。

 そんな中でも、JDAディベートセミナーとしては、あまり些事のタクティクスなどには重点を置かず、「ディベートとは何か」、「ディベートを学ぶ意義は」という部分を重点に午前中の講義を行う流れが定着しています。これは、たとえ経験者であっても、意外にディベートという形式をとった議論がいったい何を目的としているのか、おしゃべりや交渉といったい何が違うのか、ということをよくわかっていない人が多いことをいろいろな場面で痛感するからです。

 ディベートには、皆さんが体験するいわゆる教育用の競技ディベートとは異なり、実社会においてディベートにしか実現できない、あるいは最もふさわしい「公的な意志決定」のために用いられる討論形態です。このことを理解せず、単に肯定否定に分かれてジャッジが付く、などの形式的な部分でディベートを理解すると、「いったいどういう状況ではディベート的な討論を行うべきなのか」という判断ができませんし、そもそも、相対するサイドに分かれ、第三者による判断という形をとる必然性が説明できません。

 また、「ディベートを学ぶ意義」を強調するのも、「公的な意志決定」というディベートの目的に照らし、それを学ぶことが、民主主義の保持、健全な批判の可能となる社会、個々の場面における適切な意志決定の実現といった社会的な意義があることを理解してもらうためです。

 私は必ず、セミナーの冒頭で参加者にディベートを学ぶ動機を聞くのですが、とかく、「議論で相手に勝ちたい」とか、「ビジネスで応用したい」、など、ディベートの「技術」を学ぶことによっては応用可能ではあるものの、公的な意志決定のツールとしてのそもそものディベートの目的には直接関係のない動機をお持ちの方が圧倒的です。それはそれで意義のあることと思いますが、せっかくディベートを学ぶのであれば、その本来の目的と、本来の応用されるべき場面を理解していただき、そういった場面で適切にディベートできる人、そしてそれ以外の場ではディベート的な討論手法を「とらない」人になって頂きたいと思っています。

 もう一つの有力なセミナーを受ける動機である、「自分の意見を論理的にしゃべれるようになりたい」といった、ディベートに限らない討論の基本を学ぶ、という目的意識でディベートをはじめられるのも大変良いことだと思いますし、競技ディベートは大変良いトレーニングに成り得ます。ですが、単なるトレーニングで終わるのではなくて、ディベートの持つより深い目的と意義を理解しても頂きたいと思ってもいます。

 そんなわけで、今回は、おそらく他のどの講師よりも長く、講義のほとんどの時間、練習問題を使ったケーススタディメソッドで「ディベートの意義」をじっくり考えてもらいました。アンケートを見ると、多くの方にご満足いただけたようで良かったです。経験者の方で、もっと技術的な講義を期待していた人にはつまらなかったようですが、一度じっくりこれを考えてみることは、今後のディベート活動できっと役に立つと思います。

 アンケートでのご指摘では、経験者用のコースを造ってほしい、という意見が散見されました。私が運営を行っていた第1回からずっと続くご指摘で、今回新たに増員されたセミナー担当の皆様に是非実現していただきたいと希望しています。

 さて、今回で3年の長きにわたってJDAディベートセミナーを運営されてきた篠理事が退任されます。地味な仕事ですが、会場取りから予約の受付、講師の選定と当日の受付業務と練習試合のジャッジなどなかなか大変な仕事です。私が渡米する際にご無理をいって押しつけたその仕事をほとんど一人でこつこつと3年間を全うされた篠理事には、深い尊敬の念を表するとともに、深く感謝を申し上げる次第です。

 篠理事のさらなるご活躍と、一新かつ3人に増員されたセミナー担当の皆様のご活躍をお祈りします。□


参加者アンケート結果

アンケート(「今回のセミナーを受講しての感想」)に対する回答

○非常に内容の濃いセミナーで有益でした。講師の方が十分に準備されていて分かりやすい講義でした。(会社員)

○初めてのディベート体験で大変楽しかった。授業も実習との時間バランスが良かったと思う。(会社員)

○ディベートについて全体的な雰囲気がつかめてよかったと思います。試合でも先生に詳しく指導していただき、とても勉強になりました。午前中の講義も非常にわかりやすくよかったです。ありがとうございました。(公務員)

○初めて参加したが非常にためになった。議論を公平にすすめるプロセスを知ることができたので。自分のスキルの低さを痛感した。(大学勤務)

○大変勉強になりました。実際にディベートの試合を体験してみたことで本を読んだだけではピンとこなかった内容がよりよく理解できたと思います。ありがとうございました。

○本を読んで想像していたディベートを体験し、想像よりも難しく感じました。

○勉強になりました。

○大変楽しく学ぶことができました。ありがとうございました。(自営業)

○ディベートの定義に対してはあいまいな理解をしていたが受講して理解が深まった。自分のチームが有利に展開していると見ていたが結果は負けた。ジャッジの基準を聞いて負けた理由を理解することができた。(会社員)

○このセミナーの目的である、正しい理解、試合の体験については目的を達成できた。実際の試合ではフォーマットの理解がせいいっぱいで、満足のいくスピーチはできなかったが、体験できたのが何よりも良かった。(会社員)

○ディベートのイントロダクションとして受講した自分にとってはよいものでした。今後のディベートへの取り組みのためにいろいろと勉強となりました。(会社員)

○ディベート初体験でしたが勉強になりました。フローのとり方など練習試合で実践的に体験できて良かったです(全く取れないことがわかりました)(学校教員)

○とても勉強になりました。理論としては正しいか、と思って話していましたが、それが相手に理解されないはがゆさを、これから勉強して、場数をふんで、少なくしていこうと思いました。有意義な1日でした。(学生)

○初めて参加したのですが、頭が真っ白になって上手く話せませんでした。相手の立論に自分が持っていかれそうになりました。とても参考になりました。(学生)

○最後にディベートを実践したことが良かった。講義の内容をディベートで確認することができたので。講義で練習問題を取り上げたことが頭を整理することができ良かった。講義中に出た質問に対する答えが曖昧に感じた。(学生)

○ディベートの練習試合はなかなか論旨がまとまらず作成にすごく苦労した。試合中には思いつかない反論も試合が終わればいくつか浮かんできたので試合中は思っている以上に冷静さを欠くことが分かった。やはりまだまだ経験が足りない。(学生)

○普段行なっているディベートが1か月程度のリサーチを経て行なわれる専門的な内容のものなので、ディベートの技法に関することはややおざなりだったので今日の講習会は非常に参考になりました。(学生)

○フローをとることがまだ混乱した。(学生)

○始めて頭がパニック状態になりました。でも楽しさが少しわかりました。反駁のやり方がもう少し勉強したいと思いました。(学生)

○簡単な形でのディベートだったが雰囲気はつかめた。実際にやってみたらおもしろかった。(学生)

○ディベートに対する今までの認識を変えるものがあり、ディベートの楽しさを改めて感じた。セミナーの内容は充実していた。(学生)

○初めての体験をし少し疲れました。ただ今回の体験から得たことを生活に活用していきたいです。やはり実践は大切だと実感しました。(学生)

○1日の中で試合経験もでき良かったと思うが、試合の流れについて説明がほしかったと思う。(会社員)

○午前中の総論も大切ですがある程度皆自主学習してきているので、各論、実践できるようになるために何をどういえばよいのかも詳しく説明して欲しかった。(病院勤務)

○論理的に考えなければならないことを痛感しました。概念図を考えてきたのですがチーム他者との考えのすりあわせに時間が必要でアコモデーションの必要性を認識できた。もう少し他のディベートを反対の立場でやってみたかったです(例えば否定側に立つとか)(病院勤務)

○基礎がわかった(かも)。今後車内での扱い方のヒントが沢山あった。(会社員)

○イントロの部分は自己学習できる部分だと思うので、実際の実践の部分のアドバイスなり講義を十分に行なって欲しかったと思います。

○レクチャで「ディベートとは何か」に関する説明が長くて、他のパート、特にフローのとり方などの実習の時間が少ないのではないかと思う。ディベート試合の準備で、いろいろ論点の議論を参加者となごやかにできたのは楽しかった。(大学教授)

○講義の重点が本来の(競技ではない)ディベートの説明だったので興味深く受講することができました。(会社員)



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