議論の構成における、パラレリズム、ナンバリングについて


Date: Fri, 11 Oct 96 11:09:20 JST
Subject: [JDA :1772] Debate and rhetoric
 
http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/debate/para.html に「ディベートにおけ
るパラレリズム」と題する無署名の記事があり、JDA 日本語ディベート大会決勝
の肯定側立論が批判されています(私見では的外れな批判)。読んだ人います?
 
Y.T

Date: Fri, 11 Oct 96 12:13:40 JST
Subject: [JDA :1773] Re: Debate and rhetoric
 
はじめまして。Y.K@NECと申します。
 
下記の記事は私が書きました。
 
>http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/debate/para.html に「ディベートにおけ
>るパラレリズム」と題する無署名の記事があり、JDA 日本語ディベート大会決勝
>の肯定側立論が批判されています(私見では的外れな批判)。読んだ人います?
 
本記事の目的は、パラレリズムを守ると、言ったことが100のうち70しか
伝わらなかったのが、75ぐらいにはなるよということです。 もちろん、例に
挙げた立論がディベートの理論上まずいとか、まして特定の個人/団体に
対する非難/中傷ではありません。
 
ぜひいろんな方からいろんな意見が聞きたいです。この記事が議論を生み、
本MLの参加者に何らかのメリットがあれば、とってもうれしいことです。
 
尚、無記名なのはwebのページを立ち上げたばかりで、そこまで気が
回らなかったためで、他意はありません。記名するよう改めます。
 
 
私は、NECに勤めるかたわら、テクニカル・ライティングのインストラクター
もやっており、このパラレリズムの考え方は、テクニカル・ライティング
から持ち出してきたものです。テクニカル・ライティングの世界では、
広く浸透しているパラレリズムという考え方が、ディベートの世界では
あまり知られていない(例に挙げた立論に限りません)ので、記事にして
みたのです。
 
尚、テクニカル・ライティングにご興味のある人は、
http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/writing.html
までどうぞ。
 
 
NEC Corporation    Y.K
 

Date: Fri, 11 Oct 96 12:50:04 JST
Subject: [JDA :1774] Re: Debate and rhetoric
 
I.K@阪大です.
 
>http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/debate/para.html に「ディベートにおけ
>るパラレリズム」と題する無署名の記事があり、JDA 日本語ディベート大会決勝
>の肯定側立論が批判されています(私見では的外れな批判)。読んだ人います?
 
以下にその記事を紹介します.
parallerismとはorganizeという採点項目のなかの一要素であると思うのですが,
なかなかおもしろいと思います.現役の人たちは特に読んでみるといいのではないで
しょうか.
 
organizeというもの全体を考えると,system comparison(inherencyと
solvencyの対応)とか,subpointのクレームがない個所があったりとか,
批判できる点はあると思いますが,parallerism自体の考えはおもしろいと
思います.
---------------------------------------------------------
『ディベートにおけるパラレリズムの重要性』 
 
パラレリズムとは「物事を並列するときには、同じ種類のものを同じ形で
並べる」という修辞上の規則です。たとえば、牛丼の吉野屋のキャッチフ
レーズである「早い。安い。うまい。」が好例です。このパラレリズムを
守ると、ディベーターの考えを効果的に伝達することができます。逆に守
らなければ、ジャッジがディベーターの考えを理解しきれず、勝てる試合
を落とすことになりかねません。 
 
パラレリズムを守らなければならない理由は主に2つあります。1つ目の理
由は記憶のためです。吉野屋の例に見るように、印象が強く頭に残りやす
いのです。このため広告のコピーなどではパラレリズムが重要となりま
す。2つ目の理由は理解のためです。話が聞き手の予想通りに進行し、理
解しやすいのです。このため、相手に自分の考えを理解してもらうディベ
ートなどではパラレリズムが重要となります。ここでは理解のためのパラ
レリズムについて説明します。 
 
人は並列されているものを見ると、無意識のうちにパラレリズムを意識し
て、共通項を探して次に来るものを予測します。その予測と話の展開が一
致すると、つまり話の先が読めると、理解しやすいと感じるわけです。し
かし、パラレリズムが守られないと、聞き手は予想を裏切られ、一瞬戸惑
い、パラレリズムが守られていないことに気づき、自分なりに話を組み立
てなければなりません。この一連の思考が、話の流れを阻害し、聴き手の
理解を邪魔することになります。 
 
このパラレリズムの効果を、ディベートの立論を例に見てみましょう。日
本ディベート評議会(JDA)が主催した1995年第1回JDA日本語ディベート大
会決勝戦(論題は「日本の司法制度に陪審制度を導入すべし」)の肯定側
第1立論を題材とします。ここで肯定側第1立論を採用したのは、肯定側第
1立論はアドリブの部分がほとんどなく、前もって構成を練ってきている
はずだからです。つまり、パラレリズムは守られていなければならないか
らです。 
 
肯定側第1立論をまとめると、以下のようになります。 
 
論点1(現状分析) 
 
       A 検察官が自白を強要する 
 
       B 裁判官が有罪へ動く 
 
       C 多くの免罪がある 
 
       D 裁判所の人権保護機能が動作していない 
 
論点2(深刻性) 
 
       1 犯罪を守るより冤罪を守るほうが重要である 
 
       2 警察が自白を迫ることが問題である 
 
計画 
 
       1 日本は刑事裁判に陪審性を導入する 
 
       2 陪審員は隔離し、名前を公表しない 
 
       3 評決は陪審員12人全員の合意とする 
 
論点3(解決性) 
 
       A.1 でっちあげの自白は通用しない 
 
       A.2 ミスがあっても裁判官よりましである 
 
       A.3 検察官が自白強要をやめる 
 
       B 裁判官の考えが変わる 
 
       C マスコミの態度が変わる 
 
       D すべてを比較して免罪は減る 
 
JDAのディベートでは、フローチャートが取りやすいようにディベータが
話の要所ごとに番号を付けるのが習慣のようです。しかし、この番号がパ
ラレリズムを考慮せずに付けられているため、聞いてるほうは混乱してし
まいます。 
 
まず論点1ですが、Aの「検察官が自白を強要している」と、Bの「裁判官
が有罪へ動く」は並列しますが、この2つと残りの2つ、つまりCの「免罪
が多発している」と、Dの「人権が保護されていない」は並列しません。
なぜなら、AとBは原因であり、Cは過程であり、Dは結果だからです。聞
き手は、最初に原因が2つ来ると、残りも原因だろうと予測するため、3つ
め(つまりC)が原因でないことに気づくのが遅れ、Cが何について述べ
ているか一瞬わからなくなります。 
 
論点1では、原因,過程,結果をそれぞれA, B, Cとし、原因をA.1とA.2に
分けるのがよいでしょう。つまり下記のような構成になります。 
 
論点1(現状分析) 
 
       A.1 検察官が自白を強要する 
 
       A.2 裁判官が有罪へ動く 
 
       B 多くの免罪がある 
 
       C 裁判所の人権保護機能が動作していない 
 
あるいは、「多くの免罪がある」を結果とし、「裁判所の人権保護機能が
動作していない」をその言い換えと取って、以下のような構成にすること
も可能でしょう。 
 
論点1(現状分析) 
 
       A.1 検察官が自白を強要する 
 
       A.2 裁判官が有罪へ動く 
 
       B 多くの免罪がある:裁判所の人権保護機能が動作していない 
 
次に論点2ですが、1の「犯罪を守るより冤罪を守るほうが重要である」は
引用例から何となく深刻性について述べていますが、2の「警察が自白を
迫ることが問題である」は深刻性とは無関係で、1と並列することは出来
ません。 
 
ここでは「多くの免罪がある:裁判所の人権保護機能が動作していない」
ということがいかに深刻であるかを述べなくてはなりません。しかし、オ
リジナルではこの点について明確に述べていないため、オリジナルをベー
スにした修正ができません。そこで、仮に以下のように再構成してみまし
た。 
 
論点2(深刻性) 
 
       A 犯罪に対する恐怖より冤罪に対する恐怖のほうが大きい 
 
       B 冤罪は数多く発生している 
 
次に計画ですが、これは論点1(現状分析),2(深刻性),3(解決性)と並
列するものですから、論点3とすべきでしょう。(したがって、解決性が
論点4になります。)また、計画の1「日本は刑事裁判に陪審性を導入す
る」は計画の総論であり、2「陪審員は隔離し、名前を公表しない」と3
「評決は陪審員12人全員の合意とする」は各論なので並列できません。つ
まり2と3はどういう陪審性かを述べているのであり、概要を述べている1
とは一緒には述べられないのです。もし、2と3が「大統領性を導入しま
す」というような内容であれば、1と並列できます。以上を考慮すると、
以下のように再構成するのがよいでしょう。 
 
論点3(計画) 
 
日本は刑事裁判に陪審性を導入する 
 
       A 陪審員は隔離し、名前を公表しない 
 
       B 評決は陪審員12人全員の合意とする 
 
つぎにオリジナルで言う論点3(上述のように計画を論点3としたので、以
後、オリジナルの論点3は論点4と呼びます)ですが、A.1の「でっちあげ
の自白は通用しない」とA.2「ミスがあっても裁判官よりまし」とA.3の
「検察官が自白強要をやめる」は並列しません。なぜなら、A.2とA.3は陪
審性により免罪が減少する根拠ですが、A.1はA.3の理由であり、A.1とA.2
は無関係だからです。聞き手はA.1とA.2を聞いた段階で、両者の関連性が
見いだせず、Aという分類でディベーターが何を言おうとしているのか分
からなくなります。 
 
一方、Bの「裁判官の考えが変わる」とCの「マスコミの態度が変わる」
は、免罪が減少する根拠であり、A.2やA.3と並列するものです。しかし、
Dの「すべてを比較して免罪は減る」は論点4の総論ですから他のものとは
並列しません。 
 
以上、論点4をまとめると、並列するのはA.2,A.3,B,Cですから、以下
のように改良するとよいでしょう。 
 
論点4(解決性) 
 
陪審性を導入すれば、以下の4つの理由から免罪は減る 
 
       A ミスがあっても裁判官よりましである 
 
       B (でっちあげの自白は通用しないので)検察官が自白強要をやめ
       る 
 
       C 裁判官の考えが変わる 
 
       D マスコミの態度が変わる 
 
最後に細かい話ですが、ナンバリングも混乱を防ぐため「論点(数字) 
(アルファベット).(数字)」の形で統一しました。 
 
以上のように、パラレリズムを守ると立論が整然と整理でき、理解しやす
くなります。特に気をつけなければならないのは、最初の複数は同種類な
のにそれ以降が異なる場合です。なぜなら、上述の例でも説明したよう
に、聞き手は最初の部分を聞いて、その後に何が来るか予想してしまい、
その予想が外れると自分の頭の中を修正するのに時間と労力がかかり、こ
れが理解を妨げるからです。 
 
皆さんもパラレリズムを守った立論を心掛けるようにしましょう。 
 

Date: Sat, 12 Oct 96 01:19:44 JST
Subject: [JDA :1776] 返信:[JDA :1772] Debate and rhetoric
 
N.M@元大阪外大です。
ざっと読みました。パラレリズムの考え方自体はおもしろいものの、これってだれもが
「これはパラレリズムだ!!」と意識しなくてもorganizeを考える時に気にしている事
柄だと思いますが!?。ただ今回の場合、例としてあげられた立論なのですが、フローシ
ートレベルでの話なのでいささか材料不足に感じられました。どういうことかと言いますと、
並列と同様に順列(つまり、接続詞である「だから」「従って」[therefore]でつながれ
る部分ですね)という考え方もあると思うからです。この筆者の方が並列として解釈され
ている部分も論理的関係からみて順列なのではないのかと思える個所があります。たとえ
ば、論点1のAで検察が自白を強要する。A.裁判官も有罪に動く、の部分もこれだけで
はもちろん情報不足ですが、「だから」などの順接の接続詞で繋がれるのではないか、又
はこの立論を提出したディベーターは順列のつもりで提出したのではないかと思いました
(この立論の詳細はど忘れしていますが。)
 個人的にはorganizeを考える際には接続詞で繋がれる論理的関係を明確に把握しそれ
を「だから」thereforeなどの接続詞で表現することを心がければジャッジもディベータ
ーのいってることも理解しやすいと思います。
 
以上

Date: Mon, 14 Oct 96 02:49:41 JST
Subject: [JDA :1783] About parallelism and numbering.
 
 N.M@元大阪外大です。
 本日4連盟のジャッジに行き、ラウンド中に考えていたことですが、前回と違いパラレリズムを意識することの有効性、必要性について論じてみます。1ACでの不必要なナンバリングがディベーターの提出したアーギュメントに対するジャッジの理解の妨げになることとパラレリズムは重要な関係にあります。以下に例をあげましょう。
〜〜〜
A) U.S. army commit crime.
 
1.Many crimes are committed by U.S army.
[ card]
2.Because they think Japan is a colony.
[card]
 通常(日常会話も含む)私たちは並列して物事を述べる場合にナンバリングを行います。例えば「私は3つ意見があります。1.〜、2.〜、3.〜」という言い方になります。一方論理的に順接している物事や因果関係を持つ事柄を述べる場合、ナンバリングをすることは少ないでしょう。例えば「私は〜と主張します。その理由は〜」といいますが、「1.私は〜と主張します。2.その理由は〜」とはあまり言わないでしょうし、またしっくりとしません。しかしながら、多くのディベーターはどのような場合にナンバリングが必要で、どのような場合不要かの区別を明確にしていないのでこのようなことが良くあります。そうすると聞き手がナンバリングを聞いた時点でこれは並列だと感じたことが実は順接であった場合、頭の中での理解の過程で軌道修正を行います。そうすると、その間にディベーターは次のスピーチに移ってしまいジャッジはスピーチを完全には理解できなくなくなります。
 そこで、ナンバリングの必要な場合、不必要な場合について紹介しておきます。
 
必要な場合: multiple linkやmultiple meansの場合。並列している事柄をならべる。
 
例: B) APP will explode.
 
     1st reason is human error.
     [ card ]
     2nd reason is earthquake.
     [ card ]
             
不要な場合:接続詞 therefore, becauseなどでlogicの流れを表現する場合。
 
   例:B) Japan will be involved in conflict.
 
       Due to JUST, Japan has to share the same responsibility in case of        military action.
       [card]
       
       Therefore Japan will be involved in conflict when confllict occurs        in Asia.
       [card]
 
 みなさん初めの頃にディベートを教わった時、ナンバリングをしましょうと教わったことはあると思いますが、どのような時にナンバリングをすれば良いかはあまり教わったことがないと思います。そういう人たちの参考になれば良いなあと思います。また、不必要なナンバリングを減らすことはジャッジの理解への助けになると同時に「speech」らしいspeechをつくることができます。やはり、constructive  speechでありconstructive arguments presentationではないのですから、「speech」らしいspeechというものも一考の価値があると思います。
 
 以上
N.M

Date: Tue, 15 Oct 96 05:51:13 JST
Subject: [JDA :1795] Numbering
 
>N.M@元大阪外大です。
> 本日4連盟のジャッジに行き、ラウンド中に考えていたことですが、前回と違いパラ
レ>リズムを意識することの有効性、必要性について論じてみます。
 
R.Y@元田無市立いずみ幼稚園です。ディベート界同期のN.Mが鋭い問題提起を連発す
るのに関心してしまう今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 
微妙にN.Mと異なる角度から、細かすぎるナンバリングの弊害を論じたいと思います。
 
次のようなスピーチについて、ジャッジの皆さんはどう感じるでしょうか。
 
1)Their evidence just indicates that, "  (A) ."
 However 2)It does never say that, "  (B)  "  It's overclaimed.
Therefore 3)This advantage has no solvency.
 
私は2年のときまで、この類のナンバリングを連発していました。しかし3年の春KUEL
の
前の練習試合で、小西さん(WESA)に「R.Yはナンバリングが細かすぎる」と明確に指
摘されて以来、自分のスピーチのスタイルに疑問を持つようになりました。そしてジャ
ッジをするようになって、自分のPresentationが誤っていたことを実感しました。
 
上の1,2,3の3つのアーギュメントは、3つあわさって初めて一つのアーギュメントと
し
て成立しうる類のものです。これをミジン切りにして提示することは、ジャッジの理解
を妨げ、フローを取りにくくします。1つの独立したアーギュメントに、1つの番号を
ふることが望ましいと思うのです。
 
最近の関西地区、名古屋地区のディベーターは、細かくナンバリングをしすぎる傾向が
あります。細かいナンバリングをすると、ジャッジは全ての「ナンバー」に付随するア
ーギュメントを、フローシートに書き残そうとします。この無駄な努力の結果、多くの
「ナンバー」をジャッジが書き落とします。その結果最悪の場合には、最も重要な「ナ
ンバー」の部分がジャッジのフローに残らないこともありえるのです。
 
1994年、日本の英語ディベート界は空前の戦国時代を迎えました。KUELからNAFAまで全
てのメジャートーナメントで異なるサークルが優勝し、しかもどのFinalistも、素晴し
いPresentationと卓越したスピーチ力の持ち主でした。あのWESAの中山さえ、上智のお
のけんさえ、そしてWRESSの入江でさえ、1994年には1回しか優勝できなかったのです
。
 
その1994年において、TIDLとNAFATでBest Debaterを取ったのが独協のMです。(現
在
留学中)Mのアーギュメントはとにかくフローに取りやすいものでした。全ての「ナ
ンバー」の中に、明確な結論とわかりやすいReasoningが入っている、そんなタイプの
ナンバリングでした。「みじんぎりナンバリング病」が蔓延する前のディベート界の方
にとっては当然のことかもしれませんが、私にとっては衝撃的なほどの「わかりやすさ
」だったのです。
 
一つ一つのアーギュメントに十分なReasoningを。一つのアーギュメントに一つのナン
バ
リングを。ディベーターが皆、Mみたいなディベーターだったら、ジャッジングがど
んなにか楽しいことだろうと、そんなふうに思う今日この頃です。
 
R.Y

Date: Tue, 15 Oct 96 09:46:17 JST
Subject: [JDA :1796] Re: Numbering 
 
T.Oです。
ナンバリングの仕方についての議論ですが、
 
>> Regarding [JDA :1795] Numbering; R.Y
や> 次のようなスピーチについて、ジャッジの皆さんはどう感じるでしょうか。
 
や> 1)Their evidence just indicates that, "  (A) ."
や>  However 2)It does never say that, "  (B)  "  It's overclaimed.
や> Therefore 3)This advantage has no solvency.
 
や> 私は2年のときまで、この類のナンバリングを連発していました。しかし3年の春
や> KUELの前の練習試合で、小西さん(WESA)に「R.Yはナンバリングが細かすぎる」
や> と明確に指摘されて以来、自分のスピーチのスタイルに疑問を持つようになりまし
や> た。そしてジャッジをするようになって、自分のPresentationが誤っていたことを
や> 実感しました。
 
私が考えている大まかな基準(というか、 heuristics)は、
 
        相手がまとめて返すものは 同じ番号にいれろ
        相手が別にして返すものは 別の番号にいれろ
 
です。
 
議論を番号でわけるということは、それぞれ別の取り扱いをして欲しいという
宣言のようなものだと考えています。
ここで「別の取り扱い」といっているのは、例えば、肯定側が 1, 2, 3 と区切っ
た議論に対して、否定側が「1の議論はグラント、2の議論はカウンターアナリ
シスを持ってきてアタック、3の議論はC/A して他のイッシューでターンに使う」
などというように、それぞれ違うレスポンスを返すような状況のことを指しま
す。
 
否定側がこのようなスピーチをしてくることもありうるな、と予想できるとき
には、迷うことなくナンバリングで分割するべきです。同じ番号の下に複数の
議論をまとめていれてしまうと、後々混乱の元です。
 
逆にいえば、相手側がわけて返さないだろう、というような議論を、わざとナ
ンバリングによって細分しても意味がないわけです。そのような時には、同じ
番号の下にいれてしまうほうが適切です。
 
------------------------
 
上記のR.Y君の例でいえば、やっていることはカードアタックですし、相手が
これ以上に細かく分けて議論することも考えられませんから、タイトルに
 1) Overclaim. the card does not support the claim.
とでもつけて、同じ番号の中で処理するのが適切でしょう。
 
しかし、3)This advantage has no solvency という「クレーム」には議論の余
地がある=否定側が独立して反論してくる可能性がある、という状況も考えら
れます。
(例えば、solvency となるカードはこれ一つなのか他にもあるのか、という議
 論が未解決で残っている場合など)
 
その時には細かく切って
 1) Overclaim. Card says "a," not "b."
 2) Hence AD gone. All of the solvency depends on this card.
などとした方が適切でしょう。
 
このように区切る理由は、否定側が二つの議論に別のレスポンスを与える可能
性があるからです( 1 はしかたなく認めたとしても 2 に関しては別のエヴィを
引っ張って solvency を残そうとする、など)
 
-------------------
 
ナンバリングの区切りを考えるときには、まず相手の立場に立って、別の議論
として返すかまとめてしまうか、という問いを立てれば、大部見通しがよくな
ると思います。
 
T.O

Date: Fri, 18 Oct 96 15:59:51 JST
Subject: [JDA :1835] Re: Debate and rhetoric
 
Y.Tです。しばらく前の話題ですけれど。。。
 
>下記の記事は私が書きました。
>
>>http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/debate/para.html に「ディベートにおけ
>>るパラレリズム」と題する無署名の記事があり、JDA 日本語ディベート大会決勝
(snip)
>ぜひいろんな方からいろんな意見が聞きたいです。この記事が議論を生み、
>本MLの参加者に何らかのメリットがあれば、とってもうれしいことです。
 
書いた人がいらっしゃって良かったと思います。
# 「冤罪」が「免罪」になってますよ.
 
私がまずおかしいと思ったのは、「パラレリズム」で「改良」した後のものがわかり
やすいとは思えなかったことです。オリジナルの構成が悪かったとしても、論点1、
Aの1、Aの2などとするのはかえってわかりにくいように思いました。
 
また、「計画」を「論点」にしてしまうのには問題があります。計画は論点ではない
からです。メタレベルの異なるものを並列するのは並列主義の原則にも反します。
 
「早い、安い、うまい」のように並列に記述する作法は、parallel construction と
呼ばれているものですね。昔、William Strunk の The elements of style で学びま
した。http://www.columbia.edu/acis/bartleby/strunk/strunk.html#15 にあります。
Strunk の言葉では Express co-ordinate ideas in similar form となっています。
 
何が "co-ordinate ideas" であるかを整理するのは analysis、整理したものを作法
に則って表現するのは organization の領域に属すると言っていいでしょうか。両者
を厳密に区別はできませんが、analysisがなければ organize もできない、という点
で、前者が先決です。例を挙げると、「計画」は「論点」ではないということを理解
して初めて、正しい表現に至ることができる、といったことです。
 
表現の作法や修辞法は大切で、テクニカル・ライティングのインストラクターの方が
表現の巧拙を指摘してくださるのは貴重なことだと思います。そして表現を向上する
ためには概念理解が先立つということを強調しておきたいと思います。
 
Y.T

Date: Fri, 18 Oct 96 18:12:47 JST
Subject: [JDA :1837] Re: Debate and rhetoric
 
Y.K@NECです。
 
># 「冤罪」が「免罪」になってますよ.
 
こりゃ失礼。
 
>私がまずおかしいと思ったのは、「パラレリズム」で「改良」した後のものがわかり
>やすいとは思えなかったことです。オリジナルの構成が悪かったとしても、論点1、
>Aの1、Aの2などとするのはかえってわかりにくいように思いました。
 
これは階層が深すぎるということでしょうか?
たしかに、書いたものならともかく、口頭での伝達において3階層は深いですね。
2階層までにとどめた方がよいと思います。しかし、この場合でも、パラレリズム
が狂うことから生じる誤解がないよう、注意して話す必要があるでしょう。
「Aです。Bです。Cです。Dです。」ではなくて、「AとBが原因となってCが生じ、
その結果、Dにおちいる」という具合です。
 
>また、「計画」を「論点」にしてしまうのには問題があります。計画は論点ではない
>からです。メタレベルの異なるものを並列するのは並列主義の原則にも反します。
 
私は、計画を論点と判断して並列しました。計画は「実現性」という点で
論点になりうると思うからです。しかし、「実現性」が問題となるような
計画が提唱されることはまれで、議論とならないのが普通ですね。
 
もちろん、計画を論点としないなら、並列することはできません。
おっしゃるとおりだと思います。
 
>「早い、安い、うまい」のように並列に記述する作法は、parallel construction と
>呼ばれているものですね。昔、William Strunk の The elements of style で学びま
>した。http://www.columbia.edu/acis/bartleby/strunk/strunk.html#15 にあります。
>Strunk の言葉では Express co-ordinate ideas in similar form となっています。
 
この本をご存知とは。
 
>何が "co-ordinate ideas" であるかを整理するのは analysis、整理したものを作法
>に則って表現するのは organization の領域に属すると言っていいでしょうか。両者
>を厳密に区別はできませんが、analysisがなければ organize もできない、という点
>で、前者が先決です。例を挙げると、「計画」は「論点」ではないということを理解
>して初めて、正しい表現に至ることができる、といったことです。
 
ごもっとも。
 
>表現の作法や修辞法は大切で、テクニカル・ライティングのインストラクターの方が
>表現の巧拙を指摘してくださるのは貴重なことだと思います。そして表現を向上する
>ためには概念理解が先立つということを強調しておきたいと思います。
 
ライティングと口頭のプレゼンでは共通項も多いですが、
異なる部分もあり、(先ほどの階層が深すぎるという点など)
ディベートは難しいです。
 
http://www2f.meshnet.or.jp/~kurapy/writing.html
に私のライティングのホームページがあります。
まだ作成中ですが、ご興味があればどうぞ
 
 
Y.K
==============================
 
 
 

Date: Tue, 22 Oct 96 18:30:46 JST
Subject: [JDA :1857] Re: Debate and rhetoric
 
>私は、計画を論点と判断して並列しました。計画は「実現性」という点で
>論点になりうると思うからです。しかし、「実現性」が問題となるような
>計画が提唱されることはまれで、議論とならないのが普通ですね。
 
ちょっと違います。計画の実現性は立派な論点です。「計画」自体は、かくかくしか
じかの内容について議論しましょう、という宣言であり、論点ではないのです。メタ
レベルが異なるというのはそういうことです。
 
Y.T
 

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