社会人ディベート講座の講師を務めて 瀬能和彦 今年の5月20日から6月24日にかけて、毎週水曜日、計6回に渡り、社会人のためのディベート講座の講師を務めました。目黒区にある緑が丘文化会館(自由が丘駅から徒歩、7,8分)の開講する、春の社会人講座「自己表現−ディベートに挑戦しよう」という講座でした。
講座の定員は20名だったのですが、最近のディベートブーム?を反映してか、最終的には、30名を越える受講希望者が集まりました。受講者の年齢構成は、10代から60代までと非常に幅広かったのですが、人数的には20代、30代、40代という、文化会館の担当者曰く、「社会人講座としては比較的”若い”世代」がそのほとんどを占めていました。
一般社会人のためのディベート入門講座ということでしたので、受講者は、「ディベートという言葉を聞いたことはあるが、実際に見たことはない」という方がほとんどで、「ディベートを見たことがある」という方でも、実際に自分でやったことのある方はほんの数名でした。
講座の時間が、午後6時30分から8時30分までと、会社勤めの方や主婦の方にはなかなか厳しい時間帯でしたが、みなさん毎週、何とか都合をつけて講座に駆けつけられ、常に30名弱の参加がありました。打ち合わせの際に、文化会館の方に、「区民講座は、受講料無料という事もあり、最後の方には参加者が極端に少なくなってしまうものが多い」と伺っておりましたので、これは講師としては嬉しい驚きでした。第一回目の講座では、軽く自己紹介をしてもらいながら、各々の受講の理由を述べてもらいました。「自己啓発をしたい。」という管理職の方や、「上司に不合理なことを言われるので反論するため。」というOLの方、さらには、「教員に対抗してきちんと意見を言うため。」(!)という高校生のお子さんを持つ主婦の方まで、いろいろな動機でこの受講されている方がいらっしゃいました。
第三回目の講座からは、毎回、前半を講義、後半をディベートの練習試合という二部構成に致しました。この回から、平田祥人さんに練習試合の指導、及びコメンテーターとしてお手伝い頂きました。練習ディベートは、エビデンスを使用しないで行えるインプロンプトゥ・ディベート(即興ディベート)を行うことにしました。こちらがランダムに組んだ3人1組のチームに分かれて、当日発表されるトピックを用いてディベートを行っていただきました。トピックの発表の後、20分間は肯定、否定それぞれのサイドに分かれて、議論の準備をして頂きました。時間の関係から、フォーマットは、各スピーチの時間数を短くして、ミニディベートのような感じに致しました。最初のうちは、それでも自分のスピーチ時間を持て余している方もいらっしゃいましたが、講座が終わりに近づく頃には、「スピーチ時間が足りずに、言いたいことが言えなかった!」と悔しがっている方も見うけられました。
みなさん大変楽しそうに、またなかなかに白熱したディベートをされていて、毎回、非常に盛り上がりました。試合の後には、私と平田さんが簡単にコメントを述べ、それから質問の時間を設けました。毎回、みなさんに積極的に質問をして頂き、講座の予定終了時刻をオーバーしてしまうこともありました。
以上のように、6回の講座の講師を務めた訳ですが、その中で少々気が付いたことを以下に述べさせていただきます。この講座を引き受ける前から、ディベートが社会にだんだんと浸透してきているという印象はあったのですが、実際に講座を行ってみると、こちらが考えている以上にディベートに対する関心、及び期待が高いのに改めて驚かされました。今後、ますます、このような講座に対する需要が大きくなって行くと確信いたしました。また同時に、初心者のための講座の後に、それをフォーロー、アフターケアするような講座を開講する必要性も強く感じました。実際、7月に行ったJDAのOne-DayDebateSeminarでも、受講者の方から、「一応ディベートを体験したことのある人を対象にした、中級くらいの講座ありませんか?」という声も聞かれました。残念ながら、ディベート初級を卒業した社会人向けの次のステップになるような講座というのはほとんどないのが現状です。
さて、緑が丘の後日談ですが、講座終了後、受講者の有志10数名により、自主サークルとしてディベートクラブが発足し、現在も月に2回、緑が丘文化会館で活発に活動を続けています。最近では、会員も20名を数えるほどになっています。まったく講師冥利に尽きると同時に、みなさんの熱心さには頭の下がる思いです。
最後になりますが、緑が丘の講座のためにいろいろと御指導、御助言を頂いた松本茂先生と矢野善郎さん、また講座をお手伝い頂いた上、毎回遅くまで講師の「反省会」にもお付き合い頂いた平田祥人さんに、心より感謝致します。
(せのう かずひこ, JDA理事, 都立八潮高等学校教諭)
jda@kt.rim.or.jp
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