日本ディベート協会通信 第十四巻第3号
JDA Newsletter Vol.XIV, No.3, 1999
特集「日米交歓ディベート'99日本ツアー」

1999.8.10


巻頭言

会長 井上奈良彦

日本ディベート協会の最重要行事と言っても過言ではない隔年開催の日米交歓ディベートが6月に開催された。今年は厳しい予算状況のために日程を大幅に縮少せざるを得なかったものの、担当の臼井理事をはじめとする関係者の努力のおかげで多彩な交流行事を各地で行うことができた。日本のディベート界に良い刺激を与え、貴重な国際交流の機会を提供できたと自負している。今回のツアーの報告は他の記事に譲って、以下は関連する雑文とさせていただく。

今回コーチとして来日したパルチェウスキー博士は、学生時代にディベーターとして1987年に日本を訪問している。その時バベルから出版された模範試合のテープ教材を私を含め何人かから見せられたようで苦笑していた。また、彼女の大学院時代の指導教官グッドナイト博士もコーチとして1982年に来日している。当時、私は大阪でKansai Debating Societyという社会人のディベートを練習するグループにいてツアーのホストをした。手元にグッドナイト博士の講演のトランスクリプトがあるが残念ながらテープは見つからなかった。

今回のツアー終了後、パルチェウスキー博士には九州大学で「現代アメリカにおけるコミュニケーションの諸問題」という集中講義を行ってもらった。レトリカル批評の概論と政治・性・インターネットに関連するケース分析、と盛りだくさんの内容を10数名の修士課程の学生が受講し、大変好評であった。さらに、英語科でアメリカにおけるディベート教育について話をしてもらい英語教員と意見交換をした。その中で、2回の来日での日本の英語ディベートの比較にも話が及び、前回は原稿(ブリーフ)を読むのが中心だったが、今回は原稿に頼らない議論が増えたという指摘があった。いろいろな要素が絡んでいて確かなことは言えないが、日本のディベーターの一般の聴衆を前にしたディベート能力が向上しているとすれば歓迎すべきことである。余談としては、日本人学生からアメリカのスラングなどについての質問が今回は目立ったとのことである(前回はディベーターは女性2人で質問しにくかったから?)。

集中講義では、インターネットを通した人格ということが一つ話題となった。パルチェウスキー博士と私は今まで面識がなく、今回、集中講義の交渉などはすべて電子メールを使って行っていた。博士は私が日本の有名(?)国立大学の教員でJDA会長ということから、文面に気を使っていたとのこと(JDAの別の理事とはくだけた調子のメールをやり取りしていたらしい)。私は、博士がフェミニズム研究の学者であることや先述の学生時代のディベートのテープの声の調子等から、「戦闘的?」な恐い先生かもしれないと、やはりメールの文面に注意し、いつからファーストネームで呼びかけるべきかなどと頭を悩ませていた。実際に会ってみると、気さくに話ができ、役所(国立大学の事務)の膨大な書類にせっせと「めくら判」ならぬ「めくら署名」をしてくれた。

集中講義中の6月29日は福岡は大雨で博士の滞在するホテル前も冠水し、朝迎えに行く予定の私は通勤に5時間かかって間に合わず、タクシーに乗ってもらった。講義の最後の方は疲れのせいか風邪で声を枯らしながらも精力的に話を続けていただいた。7月2日に福岡空港から成田行きの飛行機に乗ってもらって、博士は帰国の途に就いた。日本ツアーが終わって今度はアメリカに今秋来るイギリスのディベートチームの日程調整などの仕事が待っているとのことであった。       

 (いのうえ ならひこ 九州大学助教授)

 

 目次

 

○特集

 日米交歓ディベート'99 日本ツアー

以下の方に寄稿をいただきました。

 臼井 直人(愛国学園大学講師)、C. Palczewsky (Associate Prof. ,Univ. of Northern Iowa), Eric Minkove (James Madison Univ.), Maxwell Schnurer, (Univ. of Pittsburgh), 松本茂(JDA専務理事、東海大学教授)、山村丈史(三菱マテリアル勤務)、Deborah Foreman-Takano(JDA理事、同志社大学助教授)、林田章吾(関西大学)、青沼 智(JDA理事、神田外語大学講師)、是澤 克哉(獨協大学)

○1999年度前期ディベート大会結果

1999年度に開催された各種ディベート大会結果の一覧です。

○JDA活動報告

 第5回 One-Dayディべート・セミナー結果

7月に行われたディベートセミナーの講師である青沼智氏(神田外語大学講師)が所感を掲載しています。

○JDAからのお知らせ

 第2回JDA秋期ディベート大会

1999年9月5日に開催されるディベート大会の実施要綱と申し込み用紙です。

 第6回One-Dayディべート・セミナー

10月24日に開催される、標記セミナーの案内です。

 第1回議論学国際学術会議開催

2000年8月に行われる国際学会の紹介と、論文の募集です。

○「ディベ−トの授業」紹介(6)

ディベート講義の紹介です。

 

 

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