日本ディベート協会通信 第十三巻第1号
JDA Newsletter Vol.XIII No.1, 1998
1998.4.25


巻頭言

会長 井上奈良彦

 ディベート活動の成功のためには良い指導者が必要である。

 大学のESSにおけるディベート活動(ディベート以外の活動もしかり)がそこに費やされる時間と労力に比べて成果が十分でないことがあるのはやはり指導者の問題であろう。日本の多くの大学では上級生が下級生を指導する体制が多く、中には2年生になると自分が試合に出場するのではなく指導者の立場になることさえあると聞く。ESSはこのやり方で何十年とディベート活動を続けてきたわけであり、長い間日本における本格的なディベートの訓練をする唯一ともいえる機会を提供してきた功績は認めなければならない。しかし、近年、ディベート参加者の減少や大会の中止など活動が停滞していることも事実であろう。

 こういった問題の一つに大学教員などの指導者(監督・コーチ)がいるディベートチームがほとんどないことが考えられる。これは、ディベート関連の専攻の教員と大学院生の助手が指導するアメリカの大学のディベートチームや、日本の大学でも体育会系の競技チームの指導体制と比較するとどうだろうか。また、ESSでも、スピーチ大会で、高校生の大会のスピーチのほうが大学生の大会のスピーチより質が高いなどということも聞く。高校生の場合は英語教員の指導を受けている場合が多い。大会の運営などにおいても、ディベート甲子園が短期間であれだけの規模の全国大会を企画・運営できたのも指導的立場の人材の功績であろう。

 企業などの研修でも、役員が「ディベートなるものがあって役に立つらしいぞ」ということでディベートらしきものを誰も良く分からないままに導入し、結果は惨澹たるものに終わるということもあるらしい。まだまだ、日本語の「討論」から連想されるパネルディスカッションのようなものや、「朝まで生テレビ」式のルールなく延々と続く泥仕合を連想する向きも多いらしい。

 指導者の養成はどうすればいいのか。私個人の意見としては、やはり数多くの大学にコミュニケーション関連の学部や学科ができそこでディベートについても研究・教育が行われ、大学院において専門家を養成するという体制が必要であると思う。手前味噌になるが、九州大学では大学院比較社会文化研究科において私が「言語コミュニケーション論」を担当し、ディベート関連の研究をしようという大学院生が増えつつある。ただし、開講科目など現在の指導体制はまったく不十分なものと言わざるを得ない。今後どう発展させていけるかが課題である。皆さんの周りの状況はいかがでしょうか?

(いのうえ ならひこ 九州大学助教授)

 

 目次

 

1997年度第3回理事会報告抜粋

1998年度の人事案、活動方針等が決定されました。

第一回「一日 日本語ディべートセミナー」を終えて

1998年の3月に開催されたディベートセミナーの結果報告です。

第4回 JDA日本語ディベート大会の結果

1998年の3月に開催された大会の結果と、その際に配布されたアンケートの集計結果です。

US EXCHANGE DEBATEに参加して

1998年の3月から4月にかけて、米国に派遣された日米交歓ディベートの参加者の報告書です。

ディべートと政治コミュニケーション関連ホームページ

ディベートと政治コミュニケーション関係のホームページ一覧です。

「ディベ−トの授業」紹介(2)

1998年度フェリス女学院大学でのディベート抗議の内容の紹介です。

ディベート新刊書(3)

近藤 聡著『反駁ゲームが楽しいディベート授業』の書評です。

The 4th Daily Yomiuri Debate Tournament 開催のお知らせ

大会の案内です。

第四回JDA日本語ディベート大会A部門決勝戦速記録

決勝戦の速記録です。

JDA事務局移転のお知らせ

 

編集後記

 

 

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