3.3 フォーマットって何? |
太郎君と次郎君が「日本政府は地方分権を進めるべきである」という論題についてディベートの練習試合をしています。平等のため、同じ時間ずつ順番にしゃべり、最終的に先生に判断してもらうというかたちで議論を進めました。 しかし、最後の順番で太郎君は突然今までとは違う議論を主張し、先生を説得してしまいました。次郎君が「いままでそんな議論はなかった」と反論しようとすると、太郎君は「僕が最後だからもう議論は終わり」と議論を打ち切ってしまいました… |
(1) フォーマット(format)
ディベートは具体的にはどのように行われるのでしょうか。それを決めているのがフォーマット(format)というものです。フォーマットは、肯定側と否定側が平等になるように規定されたディベートのルールであり、具体的には @スピーチ時間、 Aスピーチの順序と回数、B準備時間を規定しています。 (2) 立論(constructive speech)と反駁(rebuttal)、新出議論(new argument)の禁止
さらに、教育ディベートでは、主要な論点を提出する(立論する)ことができるのは試合の前半だけとし、後半は提出された議論をお互いに分析、評価、比較等を行う、という形をとっています。これは、全部のスピーチで好きなことをいってよければ、スピーチするごとに新しい議論が出てくることが可能になり、議論が煮詰まらず、分析や評価も充分にできず、議論の練習というディベートの教育効果が低下する事を防ぐためです。さらに、ある程度議論が煮詰まってきて、勝敗がはっきりしてきたとき全く別の議論を出す、という上の例のような不公平なことをゲームルールによって防ぐためでもあります。 前半のスピーチは立論スピーチ(constructive speech ) と呼ばれ、立論(新たに論点となる議論を提出すること)はここしかできないことになっています。後半のスピーチは反駁スピーチ( rebuttal speech )と呼ばれ、ここでは、あらたな主要な論点を提出する(立論する)ことはできません。このルールによって、反駁スピーチで立論がなされた場合は新出議論( new argument )と呼ばれ、原則として、ジャッジはこれをうけいれないことになっています。 フォーマットには様々な形式がありますが、以下に、大学でのディベート活動やJDA主催のディベート大会などで使用されている2人制の質疑応答形式(cross-examination format)と、中学・高校のディベート大会で多く使われている1人制の質疑応答形式の具体的な進め方を例としてあげます。 ア 2人制質疑応答形式 (cross-examination format)
第一肯定側立論 1st Affirmative Constructive Speech(1AC)
質疑応答 Cross Examination 第一否定側立論 1st Negative Constructive Speech(1NC) 質疑応答 Cross Examination 第二肯定側立論 2nd Affirmative Constructive Speech(2AC)
質疑応答 Cross Examination 第二否定側立論 2nd Negative Constructive Speech(2NC) 質疑応答 Cross Examination 第一否定側反駁 1st Negative Rebuttal Speech(1NR) 第一肯定側反駁 1st Affirmative Rebuttal Speech(1AR) 第二否定側反駁 2nd Negative Rebuttal Speech(2NR) 第二肯定側反駁 2nd Affirmative Rebuttal Speech(2AR) このほか、スピーチ時間とは別に、自分のチームのスピーチや質疑の前に自由に使える準備時間(preparation time)が両サイドに与えられています。 イ 人制質疑応答形式
肯定側立論 準備時間 否定側質疑 準備時間 否定側立論 準備時間 肯定側質疑 準備時間 第一否定側反駁 準備時間 第一肯定側反駁 準備時間 第二否定側反駁 準備時間 第二肯定側反駁 (各スピーチの時間は各大会で異なる) |
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